ゴーストに恋して

田丸哲二

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第六章・ミレフレ vs. 禁断の書

暗黒の書物の出現

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「バグですかね?固まりました」

 新人の深田恵里がデスクでノートパソコンのキーボードを指で連打し、隣の石塚朝子も今日投稿された怪しげなタイトル『禁断の書』を眺めて松田町子に訴えた。

「こっちもです。この登録者が原因じゃないですか?」

【プロフィール・ミナトカナエ】

・投稿作品 暗黒の書物『禁断の書』
(他の情報は何も書き込まれていないが、湊香奈江のスマホのアドレスと電話番号が記載されている。)

「まさか、ウイルスデータ?まだ公開はされてないけど、こっちで見れないなんてあり得ないわね」

「高木に連絡しろ」

 エディバーの編集部長・野上亮太も原因不明の不具合にWebエンジニアの高木博之に連絡するよう松田町子に指示し、数十分後にサイトがフリーズする不具合は改善されたが『禁断の書』を開く事も消去する事もできなかった。


 その頃、湊香奈江になりすました江国則子は高級車を運転して高級住宅地にある豪邸に帰り着いたが、慣れない運転で車体を擦り、ガレージの開け閉めに戸惑いながら豪華な部屋を順繰りに眺めて、学園長の暮らしぶりを垣間見てから二階の自室に入り、スーツを脱いでスマホを手にして寝室のベッドに寝転がった。

「疲れたー。金持ちって大変」

 深呼吸をして気を取り直し、サイトにログインして真っ黒な表紙に変貌した『禁断の書』の画面を見て笑顔を浮かべ、「公開したら、きっと大騒ぎになるわね」と呟く。

 暗黒のエネルギーを秘めた本はネットサイトにバグを発生させ、デジタル解析した文字が影響力を発揮し始めている。司祭に密かに進めろと指示されたが、江国は早く世間に公表して、自分を馬鹿にした者たちを驚かせてやりたかった。

「貴方の学園は魔王の拠点になり、私が世界一注目されるスクールにしてみせるわ」

 サイドテールの上にはバッグから出した緑色の表紙の童話が二冊置いてある。一冊は学園長室で藤枝景子に渡し、まだ複整数は少ないが文字は生きているので、暗黒のエネルギーが増大すればもっと増刷は可能だ。

「もっとパワーが必要だわね。司祭さま、早く戻って来てくれないかしら。素敵な家だけど、やっぱり自分の家の方が落ち着くから早く帰りたい」

 江国はウォークインクローゼットからルームウェアを出して着替え、一階のリビングに行ってそれとなく家族の様子を伺う。

 暗黒のマスクはターゲットの情報をコピーし、容姿だけでなく生活習慣まで教える事が可能であった。江国は頭に浮かぶ取説を見て家族と接し、何が何処に置いてあるか知る事ができたが、演技は疲れるので早めに学園長の立場を利用して計画を進め、居心地良い自分自身に戻りたかった。

 窓側の机に向かって連と佳子が並んで座っている。妹にフクロウのペンと会話している所を見られた連は霊界とコンタクトできる事を打ち明け、騒ぎ立てないように説得したが、兄妹とはいえ簡単に信じてはもらえなかった。

「絶対に秘密だぞ。文子たちは知ってるけど、色々と大変な状況なんでカコにも協力して欲しいんだよ」

「じゃー、後で文子さんに確認してみる」

「兄よりも、アイツを信じているのか?」

「当然でしょ。それに霊界のアイテムがあるって言われてもねー」

 佳子は机の上にフクロウのペンが在ると言われ、さっきから見つめているが影も形も見当たらない。

 しかし文子に電話して夕食の時には笑顔になり、両親には告げ口しないで静観すると連に囁く。文子は連を中心にして不思議な現象が起こっていると佳子に説明し、連がアイデアを出した小説が賞の候補になったと教えた。

「お兄ちゃん。凄いじゃない。小説の事で土曜日に渋谷に行くんだって?」

「連。まさか、受賞したの?」

 母道子が食卓にビールとコップを出して「確か賞金五百万……」と呟き、ビールを持った父宏太は手を止めて唖然としたが、連は曖昧な返答をして食事を終えて二階へ駆け上がって行く。

「才能ある少女が書いた小説に助言しただけなんだ。彼女と世界を守る約束なんで、お先に失礼します」

 そして部屋に入ると椅子に座り、机の上でスタンバイしているフクロウのペンのまんまるの目を覗き込み、ゴースト職人と再度対面した。佳子に邪魔された時は、クルミしかいなかったが、今回は七人のゴーストとMOMOEも集まって連を待っていてくれた。

「レン。元気だった?」

 フクロウのペンはゴースト職人の工房と繋がり、ペン先のレンズから映し出されて会話する事もできた。

「MOMOEこそ、やっと目覚めたのか?」

「まーね。まだ、眠いんだけどね」

「ということで、レンくんの課題です。MOMOEがそっちへ戻るまでにフクロウのペンを使えるように修行しなさい。暗黒のエネルギーと戦うには貴方はまだ力不足。MOMOEを守る為にも頑張って」

 クルミがゴースト職人を代表してそう告げると、他の者もガッツポーズをしてエールを送り、MOMOEは少し申し訳なさそうに手を振って連に微笑みかけた。
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