ゴーストに恋して

田丸哲二

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第六章・ミレフレ vs. 禁断の書

エディバーの混乱

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 渋谷の高層ビルと街並みが望める会議ルームに野上亮太(編集部長)、松田町子(クリエーター担当)、深野恵里(編集部新人)、石塚朝子(デザイナー)の四名が連たちと対面して席に着き、景子が渡した乃南百恵の資料に目を通している。

「五条大学病院の難病センターに入院していた乃南百恵は小説を書き終えて亡くなり、アイデアを提供した東野連にエディバーへの投稿を依頼した。つまりミレフレは乃南百恵の遺作であり、作者がLen & Momoeになった理由です」

 景子は百恵に身寄りがない事を大学病院から聞き、院長の許可を得て百恵のプロフィールを作成した。三つ編みをした百恵の初々しい写真を連が見て微笑み、隣の文子に足を踏まれて顔を顰める。

「以前、幻の小説の噂がサイトにあったので、ミレフレの作者が病気で亡くなっていると松田から聞いて、一瞬、幽霊が書いたのかと驚きましたよ」

 編集部長の野上がそう言って、連が頷いて「ゴースト……」と本当の事を言いそうになり、文子と久美子と順也が口や鼻や耳を押さえて阻止した。

「えー、東野連はアイデアを提供しただけなので、最優秀賞の賞金は全額大学病院に寄付したいと希望しています」

「レン、そうよね」

 文子が耳元で連に念を押し、久美子と順也も押さえていた手を離すと、連は「世界平和と病気の子供たちへ」と言って微笑んだ。

 景子は予め連と相談して、『ミレフレ』が受賞して出版化されたとしても、賞金及び印税は大学病院に寄付しようと提案し、文子たちも賛成したので連も渋々了承した。

 しかしその時、フクロウのペンがディバックの中の暗黒の手引書が暴れていると連に教え、テーブルの上に出すとクリップとゴムと紐で厳重に閉じられた手引書がブルブルと震え、ピタッと止まったが、内線の電話と編集者のスマホが一斉に鳴り響いて緊急事態の連絡がある。

『レン、禁断の書のモノクローム化がスタートした。司祭は綿密に計画を進めてたんだ』

【暗黒の書物『禁断の書』】

 黒い表紙に上記のタイトルが日本語で書かれているが、それ以外は古代ヘブライ語が作品ページに並び、ページメニューは文字化けして判別不能になり、カラーは黒白に変化してサイトに異常な不具合が発生している。

「すいませんが失礼します」

 野上がスマホの画面を見て青褪めた表情になり、クリエイター担当の松田町子だけを残して、深野と石塚を連れて会議ルームを退出した。

 久美子と順也もスマホを手にし『エディバー』のサイトが大変な事態に陥っている事を知る。

「見て……他の投稿小説まで、黒い表紙になってる」

「禁断の書に侵食されているのか?」

「すぐに野上が対処しますのでご心配なく。後は私が進めますので、落ち着いて話を続けましょう」

 松田がそう言って席に座らせようとしたが、教師と三人の生徒は東野連に注目し、テーブルの上に置いた黒い表紙の小冊子を取り囲んでいる。しかもそれは厳重にクリップとゴムと紐で閉じられ、サイトに出現した黒い本と関連しているのかと思わせた。

「あのー、それは?」

 しかし松田の質問は無視され、意味深なセリフが会議ルームに飛び交う。

「連くん。どうにかならないの?」

「フクロウのペンは?」

「MOMOEを呼べないなのか?」

「ちょっと待って、初心者なんだからさ」

 連はフクロウのペンをヘッドセットにして装着し、テーブルの上に置いた手引書に両手を翳して暗黒のエネルギーの流れを感知した。既にこの事態にMOMOEからフクロウのペンに指示があり、工房のゴースト職人も動き出している。
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