ゴーストに恋して

田丸哲二

文字の大きさ
47 / 84
第七章・洗脳された信者

伝道者の功績

しおりを挟む
 江国則子はパスワードで暗黒の世界にコンタクトし、『禁断の書』を読んで第一の信者になった事を誇りに感じていた。しかもダーク司祭から信頼され、手引書を複製して伝道者の重責を担っている。

「誠心誠意、魔王と司祭の為に頑張ります」

 江国は学園長の名を借りてネットサイトに『禁断の書』を投稿したが、それは暗黒の世界へ誘う序章でしかなく、手引書と同じく人間の欲望を掻き立て、霊界へコンタクトさせ暗黒の虜にする事が第一の目的であった。

「ネットから消えたけど、大した問題じゃないわ。心のチャンネルを合わせる入り口に過ぎないからね。しかもミレフレも消えた」

 江国は湊香奈江の部屋でテーブルの上に置いたパソコンでエディバーのサイトを開き、『禁断の書』が『ミレフレ』との対決で消えた事を知っていたが、特に慌てずに対応して作業を進めた。

 息苦しさで鼻の上まで学園長のマスクを外し、複製した手引書が童話に変貌するのを笑顔で眺めたが、スマホに何度もエディバーから警告メールと電話の問い合わせがあり電源を切った。

「まったく、うざいわね」

 ムカついてスマホを壁に投げ捨て、液晶画面が割れてフローリングの床に転がる。

「ぜーんぶ、学園長の湊香奈江がやったことです。サイバーテロって訴えてもいいのよ。その時は入れ替わっているからね」

 江国は仁王立ちになって悪態を吐き、玄関で配送業者が呼び鈴を鳴らすと、マスクを直して嬉しそうに出迎え、配送業者に13個のレターボックスを渡した。

 宛名は近隣の図書館で、江国が徹夜して複製した手引書であり、童話の本にカモフラージュされているが手に取って読み始めれは暗黒の書物『禁断の書』に誘われて信者になってしまう筈だ。

 手引書が発する電波を追って渋谷から五条市に戻ったMOMOEとフクロウのペンは、配送車が高台に建つ湊香奈江の家の前から走り出すのを上空で発見し、住宅街へ降下して大通りへ出るのを追いかけ、荷台の上に飛び降りて中へ侵入した。

「コレだ」

 フクロウのペンがレターボックスを積んだ上に舞い降り、手引書が放つ電波を嗅ぎ取ってMOMOEに教えたが、MOMOEには宛名を確認する事しかできなかった。

「図書館へ送るつもりだ。やはり学園長も洗脳されたのか?」

「触れられない。ミレフレがネットから消えた損傷はデカいよ」

『ミレフレ』は『禁断の書』とは真逆の役割をし、読者が感じたエネルギーを増幅し、ゴースト職人が工房で受信して異次元プリンターで活用する。

「どうする?」

「連が言ってた魔王のイメージが気になるわね。もし洗脳された者が魔王に憑依されたなら、全力で戦うしかない」

 罠だと気付かずに、MOMOEはフクロウのペンと一緒にトラックの荷台から空を飛び上がると、最初に洗脳された江国の家へ向かった。


 それを二階の窓からダーク司祭が湊香奈江のマスクをした江国を従えて見送り、「計画通りだ」とほくそ笑む。

 司祭の狙いは湊香奈江に魔王の意思を蘇らせる事であったが、暗黒のエネルギーでこの世界を満たさなければ魔王の復活はあり得ない。

「MOMOEが勘違いして、湊香奈江を殺せば罪悪感から光を失って闇に堕ちるだろう」

 死者の魂を補充した司祭は『禁断の書』がサイトを占領した時に得たエネルギーで更に力を増し、肉付きも良く健康的な顔色になっている。

 黒い表紙をタップした者が祭服の下の『禁断の書』に惹き寄せれ、暗黒に彷徨い込めば信者が増えるのは間違いない。

「ご苦労だったな。お前にもゴーストが見えるか?」

「はい。司祭さま。私にも力が湧いています。霊力を授かっているのですね」

 今まで江国はMOMOEとフクロウのペンは見えてなかったが、ゴーストが霊視可能になっている。しかも司祭に労いの言葉をいただき、伝道者として幸せを感じた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...