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第二章・亡霊サミット
霊界史上最大の作戦
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「ウクライナの戦地で養われた血霊を宿す銃砲が我が国に贈られ、世界唯一の被爆国である日本でアマテラスガンは完成される。霊界史上最大のミッションが我々に託された事は光栄ですが、科学チームから説明があったように、生者界への関与は不可能であり、アマテラスガンが未完成である事も当然といえるでしょう」
阿武源治のいかつい顔がメインモニターに映し出せれ、アマテラスガンがウクライナの地を経由して日本へ贈られた理由と、現状で使えない事が捕捉されたが、不可能を可能にする方法の一端も述べられた。
「しかしながら霊界ゾーンと生者界を結ぶ連結ゾーン、我々は結界と呼んでいますが、此処には稀に霊媒者と通じ合える多重ゴーストが存在すると聞いた事がありませんか?」
このタイミングでカメラの中に潜んでいたヒミコが目を見開き、レンズを壁側の席に座る大和拓郎に向けて、足を組んで片肘をつく姿がメインモニターに映り、隣りの福子が驚いて「う、映ってるよ」と教え、拓郎はリラックスした表情から顔を顰めて阿武とキーボードを叩く和也を睨む。
[大和拓郎・多重ゴースト](字幕)
「彼がこの作戦のリーダーとなり、生者界の霊媒者にコンタクトして、足りないパーツをアマテラスガンに組み込んで完成させ、核兵器を無効化するミッションを果たすでしょう」
スピーチを終えた阿武源治は席に着いてコップの水で喉を潤したが、エリザベス女王が溜息混じりに質問した。
「しかし貴方の部下が優秀だとしても、霊媒者は見つかっているのですか?この時代にそんな能力者が生者界に存在するとは思えませんが?」
「確かにプーチンと戦うのだ。霊能力者であり、勇者でなければならない。運良くアマテラスガンが完成しても、優秀な戦士でなければ宝の持ち腐れになる」
百年戦争の末期、イングランド軍と戦ってフランスを救ったジャンヌダルクがそう指摘すると、ガリレオはメモに書いた図式を画面に向けて「確率は低い」と話す。
「生者界の霊媒者は、異界から転送されたアマテラスガンを操作しなければならない」
(図式・円形の中心部に暗黒の霊界ゾーン、中層に透明な連結ゾーン、外層に太陽の輝く生者ゾーンを分割し、アマテラスガンを点線で描いて矢印の上に【transfer】と記し、転送とコントロールが必要な事を表す。)
それを聴いて、メヌードも「ムリだ。あり得ない」と首を横に振り、科学チームのアインシュタインとエジソンはジェスチャー混じりで論議し、マイクには入っていないが難解な事は一目瞭然である。
しかし修道女で中世ヨーロッパ最大の賢女と言われたヒルデガルトがタロットカードの魔術師を引き当て、「ジパングに光り輝く能力者がいる」と予言して悲観的な雰囲気を覆し、アンネフランクが「アブさん、いるんでしょ?」と質問すると、阿武源治は席に着いたまま答えた。
「もちろんです。名前は言えませんが、アマテラスガンを使える能力者が我が国に存在します。未知数ではありますが、今は信じてくださいとしか言えません」
「私は日本の勇者を信じます」
「フン、日本の魔女が火炙りにならなければ良いが」
アンネフランクとジャンヌダルクが右手の指先を伸ばして振り上げる『賛成』の手話をすると、他の代表者も同じように笑顔で賛成の意思表示をし、阿武源治が席を立って深々と一礼すると会場にスタンディングオベーションが沸き起こった。
ドーム鉄骨上部の監視カメラに移動したヒミコは熱気に包まれた会場を見下ろし、福子に肘で小突かれて複雑な表情で拍手をする拓郎を見て微笑んだが、機材の陰にいる通信技術者を見付けて不審に思い、レンズをズームアップして小型マイクに囁く口の動きを読み取る。
『Name unknown……』(名前は不明)
福子は「この作戦の命運は拓郎が握っているみたいだな」と軽口を叩き、拓郎は「いや、生者界の勇者だ」と背を向けたが、監視カメラから抜け出したヒミコが「スパイだ」と叫び、福子と一緒に出席者を掻き分けて真っ先に機材の裏側へ向かう。
四階の大久保剛も警備員を引き連れて階段を駆け上がり、ヒミコの足元に横たわるスパイを取り囲んだが、既に口に含んだ黒色のビーンズを噛み砕いて口から泡を吹き出し、霊体がひび割れて灰色の塵が空中に浮遊して消滅する。
ヒミコはパラボナアンテナから星空へ流れ飛ぶ電波を見上げ、「ロシアへ情報が漏れたわね……」と嘆き、歩み寄る阿武源治に頭を下げて出迎えた。
ヒミコが同時通訳を放棄したのは福子の発言に気分を害した事より、監視の役割を依頼されたからであり、阿武は広島空港でKGBに襲撃された事で、組織内にロシアの諜報員が潜んでいると疑念を持った。
「霊能者の名前を伏して正解だった。坂本、電源を落として強制終了してくれ」
阿武の指示で和也が通信機器とモニターの電源を切り、スパイ騒ぎで混乱した会場に静寂が訪れ、非常灯の薄明かりの中で霊界史上最大の作戦が成功する事を願い、霊界サミットの幕は降りた。
阿武源治のいかつい顔がメインモニターに映し出せれ、アマテラスガンがウクライナの地を経由して日本へ贈られた理由と、現状で使えない事が捕捉されたが、不可能を可能にする方法の一端も述べられた。
「しかしながら霊界ゾーンと生者界を結ぶ連結ゾーン、我々は結界と呼んでいますが、此処には稀に霊媒者と通じ合える多重ゴーストが存在すると聞いた事がありませんか?」
このタイミングでカメラの中に潜んでいたヒミコが目を見開き、レンズを壁側の席に座る大和拓郎に向けて、足を組んで片肘をつく姿がメインモニターに映り、隣りの福子が驚いて「う、映ってるよ」と教え、拓郎はリラックスした表情から顔を顰めて阿武とキーボードを叩く和也を睨む。
[大和拓郎・多重ゴースト](字幕)
「彼がこの作戦のリーダーとなり、生者界の霊媒者にコンタクトして、足りないパーツをアマテラスガンに組み込んで完成させ、核兵器を無効化するミッションを果たすでしょう」
スピーチを終えた阿武源治は席に着いてコップの水で喉を潤したが、エリザベス女王が溜息混じりに質問した。
「しかし貴方の部下が優秀だとしても、霊媒者は見つかっているのですか?この時代にそんな能力者が生者界に存在するとは思えませんが?」
「確かにプーチンと戦うのだ。霊能力者であり、勇者でなければならない。運良くアマテラスガンが完成しても、優秀な戦士でなければ宝の持ち腐れになる」
百年戦争の末期、イングランド軍と戦ってフランスを救ったジャンヌダルクがそう指摘すると、ガリレオはメモに書いた図式を画面に向けて「確率は低い」と話す。
「生者界の霊媒者は、異界から転送されたアマテラスガンを操作しなければならない」
(図式・円形の中心部に暗黒の霊界ゾーン、中層に透明な連結ゾーン、外層に太陽の輝く生者ゾーンを分割し、アマテラスガンを点線で描いて矢印の上に【transfer】と記し、転送とコントロールが必要な事を表す。)
それを聴いて、メヌードも「ムリだ。あり得ない」と首を横に振り、科学チームのアインシュタインとエジソンはジェスチャー混じりで論議し、マイクには入っていないが難解な事は一目瞭然である。
しかし修道女で中世ヨーロッパ最大の賢女と言われたヒルデガルトがタロットカードの魔術師を引き当て、「ジパングに光り輝く能力者がいる」と予言して悲観的な雰囲気を覆し、アンネフランクが「アブさん、いるんでしょ?」と質問すると、阿武源治は席に着いたまま答えた。
「もちろんです。名前は言えませんが、アマテラスガンを使える能力者が我が国に存在します。未知数ではありますが、今は信じてくださいとしか言えません」
「私は日本の勇者を信じます」
「フン、日本の魔女が火炙りにならなければ良いが」
アンネフランクとジャンヌダルクが右手の指先を伸ばして振り上げる『賛成』の手話をすると、他の代表者も同じように笑顔で賛成の意思表示をし、阿武源治が席を立って深々と一礼すると会場にスタンディングオベーションが沸き起こった。
ドーム鉄骨上部の監視カメラに移動したヒミコは熱気に包まれた会場を見下ろし、福子に肘で小突かれて複雑な表情で拍手をする拓郎を見て微笑んだが、機材の陰にいる通信技術者を見付けて不審に思い、レンズをズームアップして小型マイクに囁く口の動きを読み取る。
『Name unknown……』(名前は不明)
福子は「この作戦の命運は拓郎が握っているみたいだな」と軽口を叩き、拓郎は「いや、生者界の勇者だ」と背を向けたが、監視カメラから抜け出したヒミコが「スパイだ」と叫び、福子と一緒に出席者を掻き分けて真っ先に機材の裏側へ向かう。
四階の大久保剛も警備員を引き連れて階段を駆け上がり、ヒミコの足元に横たわるスパイを取り囲んだが、既に口に含んだ黒色のビーンズを噛み砕いて口から泡を吹き出し、霊体がひび割れて灰色の塵が空中に浮遊して消滅する。
ヒミコはパラボナアンテナから星空へ流れ飛ぶ電波を見上げ、「ロシアへ情報が漏れたわね……」と嘆き、歩み寄る阿武源治に頭を下げて出迎えた。
ヒミコが同時通訳を放棄したのは福子の発言に気分を害した事より、監視の役割を依頼されたからであり、阿武は広島空港でKGBに襲撃された事で、組織内にロシアの諜報員が潜んでいると疑念を持った。
「霊能者の名前を伏して正解だった。坂本、電源を落として強制終了してくれ」
阿武の指示で和也が通信機器とモニターの電源を切り、スパイ騒ぎで混乱した会場に静寂が訪れ、非常灯の薄明かりの中で霊界史上最大の作戦が成功する事を願い、霊界サミットの幕は降りた。
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