魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ

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旅する少女編

お土産選び

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 町民と観光客が乱れ行き交うマレーアの街はつい先日まで海龍リバイアサンがいたとは思えないほどの活気を見せる。
 
「リバイアサンを討伐した街、マレーアの観光はいかがー?お安くしとくよ!」

 逆に観光客を呼び込むイベントにまでする強かさを披露するものまで現れる始末。
 そんな街をグレイとネロ、そしてカシムが歩く。

「いやいや、討伐はしてないにゃ」
「撃退だな。まぁその方が客引きは良いし、いなくなった観光客を呼び込むのを止めるわけにもいかねぇしな」

 グレイ達は昨日ネロと話した通りお土産を選びに商店街にやってきていた。
 ネロはキョロキョロと辺りを見回して初めて見るマレーアの観光街を観察する。

「魚だけかと思ったけどこっちも人気なんにゃね。そもそも観光街なんてあったの初めて知ったにゃ」

 良い土産がないか街道を歩く。アクセサリーやインテリア、食べ物や飲み物などの食べ歩きまで様々なものが軒を連ねている。皆、海のある街を全面に活かして商売をしている。

「そりゃお前が市場とウチしか行かなかったからだろうが。グレイは何度かこっち側にも観光しにいってるはずだぞ」
『うん、興味深い体験ばかりだった』

 ネロが宿屋で魚を貪っている間、グレイは街を巡り特色や歴史、言い伝えやら迷信、名物に至るまで自分が興味を持った物を見て回っていた。

「とはいえ、一人だと知らないこともあるだろ?だからこの俺がこの街を案内してやる」
「えぇ~なんか頼らないにゃあ」
「頭に魚しか入ってない奴に言われたくねぇ」

 そんなやりとりもしながらカシムは街の案内を始めた。

「そもそもこのマレーアは大きく窪んだ入り江に集落を作ったことから生まれた街だ。上の方から見ればわかるが三日月みたいな形に街ができてるから夜に見にくるやつもいるな」
『家がみんな白いのは何故?』

 グレイは当初、家の材質が石であるのは潮風対策だと考えていたが白い家が多い理由はついぞ分からなかった。

「その理由はあれだ」

 カシムは不意に右手にある売店を指差す。売店の前でキャッキャッと笑う子供達の手には綺麗な貝が握られており、綺麗な音色が聞こえて来る。

「貝がどうかしたのかにゃ?」
「この街は魚が有名だが貝の名産地でもある。特に貝の抜け殻はあぁやって笛にして土産にしたりして最後まで役立てるわけだ。でも割れたり傷がついてる売りに出せない奴は家の外壁に混ぜ込んだりして活用すんのさ」
「それ意味あるのかにゃ?」
「理屈はよくしらねぇけど強度が増すんだよ」

 そういうもんらしい、とカシムもよく分かってないような反応を返す。グレイはそういえばと街に来る前に商人から貰った笛を思い出した。

「まぁこの街のお土産と言ったら魚か貝くらいだな。どうだ、何か良さそうな物見つかったか?」
『分からない。お土産を買うの初めてだから』

 誰かの為に何かを買うこともお土産を選ぶことも初めての体験であるグレイは何を渡せば良いのか悩む。
 そんな中、ネロが助言をする。

「何が喜ぶかは勿論大事にゃ。でも、グレイが何をあげたいのかも大事にゃ」
「何を、あげたいか?」

 ネロは首を縦に大きく振って答える。

「お土産を渡してどうなりたいかを考えると良いにゃ。ただの付き合いで渡す人ならすぐ無くなる食べ物が後腐れない。でも、大事な人なら形に残る物の方がいい場合もあるにゃ」

(形に残る物……貝、とか?)

「あーそれなら自分で作るってのはどうだ?」
「「作る?」」
「さっき家の壁に貝を使うっていったろ?んで、食器とかも貝を使って作る職人もいるんだよ」

(食器……!良いかもしれない)

 ジーク達との思い出を思い出すグレイはレイラの料理を四人で囲んで食べたことを思い出す。
 木の香りがする食器棚から取り出した食器に料理を載せ、笑い合って食事をした記憶はグレイの宝物となって色褪せてはいなかった。

 そんな記憶に自分の作った食器が並ぶというのは嬉しいし、良いのではないだろうかと考える。

 早速カシムの案内でその職人の元へと向かった。食器作り体験を観光客向けにやっていた事もあり、すぐに食器作りをさせてもらえることになった。

「だが、まずどんな物を作るかを決めないといけねぇ。大皿、小皿、取り皿から深皿やコップまで。色々あるから一つに絞って欲しいんだが」

(どれにしよう……)

 うーん、と悩ましげに悩むグレイに今度はカシムが助言をする。

「コップはどうだ?使いやすいし皿と違って飾り付けも簡単だからな」
「確かに土産だとそれが一番選ばれてたりするな。何だったらガラスにすることもできるぞ」
「え、ガラスって貝殻からでも作れるにゃ!?」
「おう、砂と海藻の灰、貝殻を溶かすとガラスが作れるのさ。綺麗な良いガラスができるぞ」
『じゃあそれにする』

 グレイは食器職人の指導の元、コップを作り始めた。さまざまな手順を踏み、ガラスを作っていく。ルーンでも魔法でもないただの人の技術で作る作品に大いに関心を示したグレイは目を輝かせながら職人の話を聞き綺麗なガラスコップを作り上げた。

 それぞれ、渡したい人の色に合わせた作りになっており、複数のガラス片を繋ぎ合わせたような作りが内部にあしらわれたコップは陽の光を反射しより綺麗に映る。

「おぉ~綺麗なコップが出来たにゃ!」
『うん、二人と職人さんのおかげ。ありがとう』

 割れないよう小包に入れたグレイは荷物の入った袋にゆっくりと仕舞う。全てをしまったあと、今度は旅の食糧などの消耗品を補充して回った。

 
 そして、翌日。

「また来た時はウチの宿屋を使ってくれよな!」
「当然!バルのおっちゃんの魚料理また食べに来るにゃ」
『必ず行く』

 街の入り口で預けていた馬に荷物を載せたグレイ達を街の入り口でカシムとバルが見送りに来ていた。
 
「まぁ、その、何だ……いつでも来いよ」
「友達価格で魚を食べに来てやっても良いにゃ。それまでに私の為に漁を上手くなっとけにゃ!」
「うっせぇ、言われなくても親父よりもすげえ漁師になってやるよ!」
『楽しみ、頑張って』

 手綱を握りゆっくりと動き出した馬に跨りながらグレイはカシム達に手を振ってマレーアの街を出発する。

「これからもよろしく、グレイ」
『よろしく、ネロ』

 旅する少女達は帰郷の為に馬で走り出す。

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