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すれ違い…………??
神無月明海サイド
しおりを挟む明海と唯利が最後に会話して一週間後…………
白蓮寮の夕食時、
『これは…………避けられちゃってますかね』
生徒会会計こと、神無月明美はため息をつく。
明海先輩と呼び、慕ってよく顔を見せに来る、子犬みたいな後輩。桜河唯利
酔って倒れたり、どこかで転んだらしくちょくちょく青アザ作ってたりおっちょこちょいで天然でちょっと心配になるが…とっても可愛い後輩。
ついこの前までは、会ったら普通に挨拶する仲だったはずだが、最近見かけない。
『いや、存在は感じますが………』
「あ、ユイリーン様だ!!」
「やっとキター!!!」
「今日こそは神無月様とユイリーン様のツーショットが拝める!」
という、歓声が聞こえる
しかし、
すぐに
「あ~ん。ユイリーン様行っちゃった…………」
「せっかく久しぶりに食堂にいらしたのに.………何も食べずにいっちゃった……」
「最近なんか時間ずらしてる感じだよねな…何かから逃げてるとか…??」
「今日も寮長達と食事とらないのかな…??」
というがっかりした声に変わっていく。
『つまり、私が食堂にいるのを見て食事をするのをやめたということですかね…』
先日、生徒会の会計をやってみないかと声をかけてから、これなのだ。
明海がいると、近づかない。
『私、なにかしましたかね…』
ほんとに悩ましい限りだ。
それまでは、朝、夕、寮の食堂で会ったら当たり前のように一緒に食べたりしていたのだが、会うこと事態避けられてるようなので、一緒に食べたりすることもなくなった。
『だとしたら、生徒会へ誘ったことが原因でしょうか』
一番最後に会話した内容を思い出す
『桜河君は、ほんとは生徒会に入りたくないと思ってたけど、私が誘ってしまったことで…………そういうことですかね……』
単に生徒会へ誘っただけなのに、
さすがにここまで避けられると少し悲しくなってくる。
確かに生徒会へ誘ったことが元凶…きっかけなのだが。
『どうしましょう…このまま会えないのも寂しいですね…………』
気分が落ち込み、明海の顔が憂いに変わる。
「明海??どうしました?」
明海の顔を覗き込んでくる、金髪のイケメン、寮長。
寮のみんなから王子と呼ばれ、慕われれいる。
さすが三年らしく、そして王子と呼ばれるにふさわしい、凛とした雰囲気をまとっている。
「いえ…」
『いけない、無意識にため息をついてましたか。』
あわてて明海はごまかすように中断していた食事を再開する。
しかし、
「最近明海と仲良かった唯利くん。彼、最近見かけませんね。彼となにかあったんでしょう?」
寮長は探るような、でも綺麗な笑顔を見せて聞いてくる。
「…。寮長にはお見通しですね」
ここまで見抜かれてしまったら、観念するほかない。
「私、桜河くんに嫌われてしまったようで…………」
結局、
生徒会会計を桜河唯利にやってみないかと誘ったこと、
けれども、
「少し考えさせてください」
と言われたきり、避けられてること。
これらを伝える。
「なるほど…。それで最近落ち込んでたんですね」
「そんなに目に見えるほどでしたか…??」
「はい。明海は悩み事があるときは、紅茶に砂糖を多めにいれるでしょう」
紅茶を飲んでみると、確かに普段より甘めだ。
おそらく、その癖を知っているのは明海と長年一緒にいる寮長ぐらいなのだが、微妙な自分の心の動揺を見抜かれてるようで、それを聞くと羞恥心が沸いてくる。
「考え事するときは、誰でも甘いものを食べたいんです!!」
ちょっといいわけする。
しかし、それを聞いて、
「じゃあ、解決するようにもう少しいれないと」
さらに角砂糖を明海のカップにちゃぽんと追加して、面白そうな顔をする寮長。
「もう十分です!」
さすがにこれは甘すぎだろう。
今日の寮長はいつにもまして少し意地悪だ。
「なら、明海の中で答えはでたんですか??」
『でるわけないでしょう…』
答えられない質問に、無言で返す。
「原因は、生徒会役員に誘ったことですかね…………しかし、どちらにせよ唯利くんは何かしらの役員になるでしょう。それがランキング上位者の宿命です。私たちのように」
「そうなんですが…それも伝え忘れてしまったんです。」
次期生徒会メンバー等は、役員決め会議で行われる。
もし現役員が次期役員の推薦者を出さなくても、他の役員達が誰か指名してすれば、指名された者は役員になることが決定する。
役員達はランキングを元に次期役員を指名するから、結局ランキング上位者は強制的に役員をやらされるのだ。
特に桜河唯利は現生徒会長達を抜いて上位になってしまったので、絶対といっていいほど何かしらの役員にはさせられるだろう。
だからこそ、
「発表されたら、本格的に嫌われちゃいますかね。勝手に推薦したとか思われて…………」
「明海は嘘をついていませんよ」
「いえ、言わなかった事も罪の一つです」
弁明しようにも、
会えないのがもどかしい。
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