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1. これがうわさの婚約破棄
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「マリー、お前みたいな女とは婚約破棄だ!金輪際、俺の前に姿を現すなよ」
ジョゼフ王子はハニーサックルみたいなピンク色の髪の毛をした少女を腕に抱き、そのするどく茶色い瞳で婚約者をきっと睨む。マリーと呼ばれた少女はつややかな金髪をびくりと揺らし、ぱっちりとした青みがかった灰色の瞳を二人に向けた。
「わたしの義妹を選ぶというの?殿下、彼女は父の再婚相手の連れ子です」
「だからどうした?そうやってコレットをいじめていたんだろ?」
周囲がざわめく。ここはロイヤルフルールアカデミーの卒業パーティーの会場だ。
「いじめてなどいません。義妹は王妃となるには血統が足りないと申しているだけです。父と養子縁組もしていませんし、彼女には貴族の血が流れていないのです。先にあるのは茨の道です。そんなに気に入っているのなら、彼女を寵妃にすればいいじゃありませんか」
「そんなことはお前が考えることじゃない。いいか、よく聞け。こいつをいじめていいのは俺だけなんだよ」
王子はドヤ顔で啖呵を切ると、コレットの晴れた青空のような瞳に向かって優しく語りかけた。
「俺は地位も名誉も金も全てを持っているから、絶対守ってやるよ」
コレットは王子の腕の中で、ヒロインよろしく幸せそうにほほ笑む。
マリーは王子の側近たちに腕を掴まれて、会場の外に放り出されてしまった。
「もう二度と僕たちの前に姿を現さないでくれよ」
マリーはあっけにとられながらも立ち上がると、悪役令嬢らしい真っ赤なドレスのすそについた汚れを払った。
「わたしは自由だわ。プリンセスにはならないけど、お伽話のその後を楽しみましょう」
***
真理はベッドに寝転びながら、携帯で読んでいた漫画のアプリを閉じると、学習机に視線をやった。そこには開いたままの教科書とノートが載っている。
「あーあ、いいところだったのに。あの俺様系王子は本当にむかつく。ヒーローは優しくて中性的なタイプだといいなあ」
再び携帯を起動させ、スケジュールを開くと、軽くめまいを覚えた。
「もう二日しかないじゃん」
期末テストが明後日に控えている。テストが全部体育の実技だったら楽勝なのにと考えてみるが、そう考えたところで筆記試験からは逃れることはできそうにない。
真理はしぶしぶ椅子に座ると、ペンケースからシャーペンを取り出し、もごもごとつぶやきながら文字を書いていく。三十分ばかり机にかじりついていたが、真理の集中力は底をついてしまったようだ。
椅子から立ち上がり、クローゼットにかかっている赤いジャンバーを羽織った。少しほつれているので、そろそろ買い替えが必要かもしれない。
「ま、近所に行くだけだし」
真理は階段を駆け降ると、台所に向かって声をかける。
「コンビニに行って、アイスを買ってくる!」
真理は夕暮れの一本道を歩く。ちょうど交差点に差しかかり、信号を待つ。真理の横をすり抜けて、ちょうど腰ほどの身長の元気過ぎる子どもが、交通量の多い道を飛び出していった。
真理は咄嗟に子どもを助けようと飛び出した。もとより考えるより行動するタイプだ。だが、真理の着ているジャンバーのほつれた糸がガードレールにひっかかって、身動きが取れなくなってしまった。
真理がもたもたしている間に、子どもはあっという間に向こうの道にたどり着いたのに、自分自身は身動きが取れなくなってしまった。真理はちょうど走ってきたトラックにぶつかりそうになり、きつく目を閉じる。
すると、真理は体が軽くなった感覚に戸惑い、おそるおそる目を開けた。
真理の目の前には、きれいな顔をした同い年くらいの少年の顔があった。小さいころに遊んだガラス玉のような、透明で複雑な色合いをした少年の瞳に釘付けになった。
「君、大丈夫?」
さらさらの金髪に、天使のように澄んだ声。美少年が真理を見下ろしている。
「え?あ、はい!」
自分が腕に抱えられえていることを知ると、真理は顔が発火しそうなほど熱くなった。こんなに近くで男の子を見たのも、抱きしめられたのも初めてだ。きれいな顔をしているのに、腕は細い女の子のそれとは全く別物であるとわかると、真理は途端にこの密着した状態がたまらなく恥ずかしくなってきたのだった。
「ぼくに君のほどけた服の赤い糸がひっかかって、うまく取れないんだ。もう少し待って」
少年は丁寧な手つきで複雑に絡まった糸をほどいた。真理は意識しすぎるあまり、息をするのも我慢して、じっとその光景を眺めた。
「ほらできた。いたずらな糸だね」
「あの!もう大丈夫です。ありがとうございます」
真理はこれ以上は耐えられないとばかりに、少年から顔をそむけた。
「そう?無理はしないでね」
少年は真理に回した腕の力を弱める。真理はようやく肥大した自意識から開放され、少年から体を離した。
真理は視線を正面に向けると、少年の後ろに見える物に目が釘付けになってしまった。「これは?」と、これ以上言葉を続けることが出来ない。それも無理はないだろう。
少年の背中から、白鳥のように白くて立派な羽が生えていた。
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【お知らせ】
『義妹に王子を横取りされて婚約破棄された悪役令嬢は、聖女を目指す』第一話
お読みいただき、ありがとうございます。どうでしたか?
『婚約破棄された貧乏令嬢は、今日こそモテたい!』も書いています。
王道ラブストーリーです。ぜひお読みいただければ嬉しいです!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/154944090/566457295
お気に入り登録や感想もお待ちしております♪
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「だからどうした?そうやってコレットをいじめていたんだろ?」
周囲がざわめく。ここはロイヤルフルールアカデミーの卒業パーティーの会場だ。
「いじめてなどいません。義妹は王妃となるには血統が足りないと申しているだけです。父と養子縁組もしていませんし、彼女には貴族の血が流れていないのです。先にあるのは茨の道です。そんなに気に入っているのなら、彼女を寵妃にすればいいじゃありませんか」
「そんなことはお前が考えることじゃない。いいか、よく聞け。こいつをいじめていいのは俺だけなんだよ」
王子はドヤ顔で啖呵を切ると、コレットの晴れた青空のような瞳に向かって優しく語りかけた。
「俺は地位も名誉も金も全てを持っているから、絶対守ってやるよ」
コレットは王子の腕の中で、ヒロインよろしく幸せそうにほほ笑む。
マリーは王子の側近たちに腕を掴まれて、会場の外に放り出されてしまった。
「もう二度と僕たちの前に姿を現さないでくれよ」
マリーはあっけにとられながらも立ち上がると、悪役令嬢らしい真っ赤なドレスのすそについた汚れを払った。
「わたしは自由だわ。プリンセスにはならないけど、お伽話のその後を楽しみましょう」
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「もう二日しかないじゃん」
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真理はしぶしぶ椅子に座ると、ペンケースからシャーペンを取り出し、もごもごとつぶやきながら文字を書いていく。三十分ばかり机にかじりついていたが、真理の集中力は底をついてしまったようだ。
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真理は夕暮れの一本道を歩く。ちょうど交差点に差しかかり、信号を待つ。真理の横をすり抜けて、ちょうど腰ほどの身長の元気過ぎる子どもが、交通量の多い道を飛び出していった。
真理は咄嗟に子どもを助けようと飛び出した。もとより考えるより行動するタイプだ。だが、真理の着ているジャンバーのほつれた糸がガードレールにひっかかって、身動きが取れなくなってしまった。
真理がもたもたしている間に、子どもはあっという間に向こうの道にたどり着いたのに、自分自身は身動きが取れなくなってしまった。真理はちょうど走ってきたトラックにぶつかりそうになり、きつく目を閉じる。
すると、真理は体が軽くなった感覚に戸惑い、おそるおそる目を開けた。
真理の目の前には、きれいな顔をした同い年くらいの少年の顔があった。小さいころに遊んだガラス玉のような、透明で複雑な色合いをした少年の瞳に釘付けになった。
「君、大丈夫?」
さらさらの金髪に、天使のように澄んだ声。美少年が真理を見下ろしている。
「え?あ、はい!」
自分が腕に抱えられえていることを知ると、真理は顔が発火しそうなほど熱くなった。こんなに近くで男の子を見たのも、抱きしめられたのも初めてだ。きれいな顔をしているのに、腕は細い女の子のそれとは全く別物であるとわかると、真理は途端にこの密着した状態がたまらなく恥ずかしくなってきたのだった。
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少年は丁寧な手つきで複雑に絡まった糸をほどいた。真理は意識しすぎるあまり、息をするのも我慢して、じっとその光景を眺めた。
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「あの!もう大丈夫です。ありがとうございます」
真理はこれ以上は耐えられないとばかりに、少年から顔をそむけた。
「そう?無理はしないでね」
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真理は視線を正面に向けると、少年の後ろに見える物に目が釘付けになってしまった。「これは?」と、これ以上言葉を続けることが出来ない。それも無理はないだろう。
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