義妹に王子を横取りされて婚約破棄された悪役令嬢は、聖女を目指す

ともり

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2. あなたのいる世界

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 「鳥人間?」

真理は少年の背中から生える大きく白い翼を見ると、思ったことを口にしていた。少年はふっと目元を緩めて、穏やかに言った。

「君って面白いね。ぼくの姿を見て驚いているのかな?ぼくは別の世界の神様をやってるんだ」

「別の世界の神様なのに、どうしてあたしを助けくれたんですか?」
「どうしてって、かわいい女の子のピンチに駆けつけないわけにはいかないだろ?」
「え、かわいい?」

まるでアイドルのような少年の言い方に、真理は照れてしまって、夕日を浴びた顔が真っ赤に染まってしまった。神様とは人気アイドルみたいなものなのだろうかと、不謹慎にも真理は考えた。

「なんて本当は、君の服のほつれた糸がぼくにひっかかって、気づいたらここにいたんだ」
神様だと自称する少年は、片手は真理の背中にそえたまま、もう一方の手で自分の絹のような前髪を掻きあげ、いたずらな笑顔を見せた。

「ああ、これ」と言って真理は自分の服を見ると、着ていた赤いジャンバーは大胆にほつれて、無残な姿になっている。

「かわいそうに。君のかわいい服が台無しになってしまったね。そうだ、君の名前は?」
「真理です。田中真理、十六歳。あなたには名前はあるの?」
「マリか、かわいい名前だ。ぼくはユリーカ」

真理は再び頬が熱くなった。明日から同級生の男子がこれまで以上に子供っぽく思えてしまいそうだ。いや、ユリーカと比べられば、誰だってじゃがいも以下に見えるだろう。

「あたし買い物の途中だった。ユリーカ様、助けてくれてありがとうございました」

真理は地面に足をつけようとするが、スケートリンクのようにつるつると滑り、いつまでたっても地面の感覚をつかめない。

「ちょっとなにこれ……ぎゃあ!?」

真理はバランス感覚を失い、派手に宙を舞う。


 真理の手首をつかんだユリーカは重力を感じさせない軽やかさで、一瞬にして真理を抱きとめた。

「マリはおっちょこちょいだね」

真理はユリーカを見上げると、彼の透明で複雑な色合いの瞳が揺れているのを悟った。ユリーカはそれまでの甘さを含んだ物言いからすっかり変わって、真剣に告げた。

「マリ、どうやら君はこの世界にはいられないみたいだ。ぼくの世界に来る?」

「あなたの世界に?」
「うん。ぼくが見守る世界に」

真理はうつむいて、しばし考えた。次にユリーカを見上げたときには、真理の黒い瞳には強い意志が宿っていた。

「あたしはあなたのいる世界に行きたい」

ユリーカは真理を優しく見下ろすと、腕にぎゅっと力を込めて言った。
「わかった。今からぼくの世界に転移するから、離れないようにマリはぼくにしっかり抱きついていて」

真理はためらいを見せたのも一瞬だった。ユリーカにぎゅっと抱きつき、目をしっかりと閉じた。

 夜が夕暮れを包み込もうとしている。静寂に包まれた瞬間、二人の前に小さなブラックホールが出現した。それはあっという間に大きくなって、夜の雑音が聞こえ始めると、真理とユリーカはすでにブラックホールに飲み込まれた後だった。
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