義妹に王子を横取りされて婚約破棄された悪役令嬢は、聖女を目指す

ともり

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15. 手紙

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 マリーは授業中に発見した脅迫めいた紙のせいで、唯一の取り柄といっても過言ではない溌溂とした魅力が、すっかり鳴りを潜めてしまった。マリーは小さくしぼんだ背中で、周囲を警戒しながらロッカーに寄った。
荷物を取り出す際に、ロッカーから手紙が床に落ちた。それに気がついたマリーはそれを拾い上げた。

(ラブレター!?差出人の名前がないってことは、恥ずかしがり屋なのかな?待って、ファンレターという線もあるかも!?)

どきどきしながら封を切る。さきほどの授業で脅しのような紙が教科書に挟まっていたにも関わらず、ラブレターだと思う自意識の高さは、思春期ゆえなのか。それともマリー自身の持つ厚かましさゆえなのか。
どきどきしながら手紙を読むと、みるみるうちに、マリーの顔は引きつっていった。

「不幸の手紙!?何よ、このいたずら!」
マリーは声に出してキレる。同時に、背筋が冷たくなるような恐怖に襲われた。マリーはこの手のものが苦手なのだ。

 ちょうどコレットが通りかかり、挙動不審なマリーを見ると、冷たく声をかけた。

「そうやってると、変人みてえだよ。恥ずかしいからやめて。何さしてるの?」
「あたしのロッカーに不幸の手紙が入っていて。どうしたらいいの?誰かに回さないといけないよね!?」

すっかり震えあがっているマリーに、コレットは思いっきり軽蔑した顔をした。

「馬っ鹿じゃねえの?そんなの迷信なのに、いい年して他の生徒に迷惑さかけてどうすんだ?」
「あ、そうだよね。迷信……。でも、念の為ってこともあるよね?」
「はあ。おめえさんのロッカー、もう一通手紙が入ってるみたいだけど?また不幸の手紙だったりしてな」

コレットはロッカーの中を指さすと、「また家でね」と独り言のようにつぶやき、さっさと帰ってしまった。


 周囲を確認して、困惑しながらも、おそるおそる手紙を開封する。

(なんで二通も不幸の手紙が?聖女を諦めろっていうメモと一緒のいたずら?)
「んん?これ、ラブレター?」

封筒にはマリーの宛名が印字されていた。手紙はいきなり「愛するあなた」と始まっている。真っ黒になるくらい文字がつまった手紙は走り書きのような筆跡で埋めつくされ、そこには情熱がほとばしっていた。マリーは顔を真っ赤にさせて読みすすめる。

「ああ、愛おしいあなた。薔薇の蕾のように瑞々しく清らかなその唇に触れることができたらどんなにいいか。これまでに何度想像したことだろう。だけど、あなたの美しい瞳には私は映っていない。一度でいいのだ。一目、そのサファイアのように澄んだ瞳に見つめられたなら、私はそれを糧に生きてゆけるだろう。
愛するあなた。明日、来てくれないだろうか。私の気持ちをどうか知ってほしい。
愛を込めて D.L.C.J」

封筒には、もう一枚紙が入っていた。待ち合わせの時間と場所が印字されていた。すっかり手紙に感動してしまったマリーは、D.C.Jに会ってみたくなった。初めてもらったラブレターに舞い上がっているのだ。この学校の生徒に、D.L.C.Jは思い当たらない。デイヴィッド?ダミアン?ダーシー?デズモンド?

(誰であるにせよ、お断りしなくちゃ!あたしは聖女になるんだから。ユリーカ様に敵う人なんていないし。)

 マリーがラブレターの差出人を特定しようと躍起になっている絶妙なタイミングで、ユリーカが登場した。

「どうしたの?さっきから独り言が聞こえるけど、困りごとかな?」
「ぎゃあ!?なんでもないです!あっ、そうだ。相談に乗ってください」

マリーはラブレターを急いでカバンに突っ込むと、ユリーカに恐怖の手紙を見せた。

「子供みたいないやがらせだね。こんなの怖がる人がいるのかな」

苦笑するユリーカから、マリーはいたたまれなくなって目をそらす。ユリーカはそれまで面白がっていた表情から一変させ、今度は真面目な顔つきになった。

「一応、ぼくのそばから離れないで。当面、ぼくが送り迎えのエスコートをさせてもらうよ」

ユリーカにエスコートされて、マリーは家まで送ってもらった。こうやってエスコートされるなら恐怖の手紙も悪くないと、マリーは心の中でつぶやいた。
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