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14. ピンクと茶色
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髪とお揃いのピンク色のパジャマを身に着けたコレットは、特大サイズのテディベアを抱きしめながら、しかし眉間にはくっきりと皺が寄っている。その可愛らしい見た目とは裏腹に、彼女の心中は可愛げがなかった。
コレットの意中の相手であるジョゼフ王子が、義姉のマリーにすっかりご執心なのだ。王子がマリーに執着を見せるようになるまでは、コレットは自身の恋に手ごたえを感じていた。マリーは王子に興味がないと言っていたのに、すっかり騙されて安心しきっていた。
「嘘つきの泥棒猫め」とつぶやき、腕に抱いていたテディベアを壁に向かって投げつける。
年齢が同じで家柄がいいという理由だけで、マリーは王子の婚約者レースの最有力候補だ。だけど、それならコレットだって同じだ。たしかに連れ子で貴族の血は流れていないけど、公爵家の娘には違いない。
小賢しいマリーは聖女に応募し、面接を受けるという。コレットは母親が公爵と再婚する前に暮らしていた村で、あるうわさを聞いたことがある。聖女を務めた乙女は嫁ぎ先が選び放題になるので、競争率が高いそうだ。そこまでしてプリンセスになりたいなんて、マリーはなんて欲深いのだろう。しかも見た目のいい転校生を味方につけて好き放題している。
コレットは手元の手紙にもう一度目を通した。聖女の面接の日程が書いてある。その手紙はマリーの部屋からくすねてきたものだった。どうせすぐに返すのだ。マリーにばれることはない。
***
マリーは今日も聖堂で聖女関係者への点数稼ぎをしてから、教室へ向かう。今朝は聖堂の窓掃除をした。聖堂は最低でも地域に一つ、学校に一つはあるが、授業でどれも神の家なのだと習った。それ以来、マリーは鼻歌を歌いながら熱心に掃除をしている。
(ユリーカ様とあたしの新居ってことでしょ?つまりここは二人の愛の巣!)
今朝もそんな邪な妄想を抱くマリーの姿を、賞賛の目で大人たちは見つめていたのだった。
にんまりと人が悪そうな顔つきで教室へと向かうマリーの真上から、予告もなしに大量の茶色いかたまりが降ってきた。マリーは悲鳴をあげる代わりに、とっさに飛びのけた。
驚きのあまり息をするのも忘れて、ひんやりとした壁に身を寄せ、しばしば足元の茶色い落下物を見つめた。マリーは顔をしかめながら、一歩近づくと、おそるおそる匂いを嗅いでみる。苦みのあるツンとした匂いが、マリーの鼻を刺激する。
「何これ、土?どうしてこんなものが降ってくるわけ?」
間一髪、危うく土まみれになるところだった。屋上で土いじりでもしているのだろうか。だが見上げても、どこまでも空が広がっている以外、何もなかった。
マリーが教室に着くと、ユリーカが「おはよう」と声をかけながら近づいてきた。その長い指でマリーの髪の毛を一房すくうと、ユリーカは不思議そうな顔をマリーに向けた。
突然の接触に錯乱するマリーの心情に気がつくこともなく、ユリーカはマリーの髪の匂いを嗅ぐ。
「君の髪から土の匂いがするね。ああ、やっぱり。土がついてるみたいだ」
ユリーカは優雅な仕草で、マリーの髪の汚れを取ってやった。マリーは恥ずかしいやら、嬉しいやらで、なぜ土が降ってきたのかなんて、すっかりどうでもよくなってしまった。
顔を乙女らしく真っ赤に染めたマリーは、しおらしく自分の席に座った。
授業中、マリーが教科書を開くと、そこに一枚の紙が挟まっていた。「セイジョハアキラメロ」と、文字が書かれている。
(聖女は諦めろ?どうして?一体誰が?)
マリーは思わず顔を上げて教室を見渡す。そんなことをしたところで犯人と目が合うはずもないし、そもそも同じ空間にいるとも限らない。マリーは机の下で拳をぎゅっと握りしめると、小刻みに震える下唇を噛み、正面の黒板を見つめた。
(誰の忠告かは知らないけど、あたしは絶対に聖女を諦めないから!聖妻の座はあたしのものなんだから!)
コレットの意中の相手であるジョゼフ王子が、義姉のマリーにすっかりご執心なのだ。王子がマリーに執着を見せるようになるまでは、コレットは自身の恋に手ごたえを感じていた。マリーは王子に興味がないと言っていたのに、すっかり騙されて安心しきっていた。
「嘘つきの泥棒猫め」とつぶやき、腕に抱いていたテディベアを壁に向かって投げつける。
年齢が同じで家柄がいいという理由だけで、マリーは王子の婚約者レースの最有力候補だ。だけど、それならコレットだって同じだ。たしかに連れ子で貴族の血は流れていないけど、公爵家の娘には違いない。
小賢しいマリーは聖女に応募し、面接を受けるという。コレットは母親が公爵と再婚する前に暮らしていた村で、あるうわさを聞いたことがある。聖女を務めた乙女は嫁ぎ先が選び放題になるので、競争率が高いそうだ。そこまでしてプリンセスになりたいなんて、マリーはなんて欲深いのだろう。しかも見た目のいい転校生を味方につけて好き放題している。
コレットは手元の手紙にもう一度目を通した。聖女の面接の日程が書いてある。その手紙はマリーの部屋からくすねてきたものだった。どうせすぐに返すのだ。マリーにばれることはない。
***
マリーは今日も聖堂で聖女関係者への点数稼ぎをしてから、教室へ向かう。今朝は聖堂の窓掃除をした。聖堂は最低でも地域に一つ、学校に一つはあるが、授業でどれも神の家なのだと習った。それ以来、マリーは鼻歌を歌いながら熱心に掃除をしている。
(ユリーカ様とあたしの新居ってことでしょ?つまりここは二人の愛の巣!)
今朝もそんな邪な妄想を抱くマリーの姿を、賞賛の目で大人たちは見つめていたのだった。
にんまりと人が悪そうな顔つきで教室へと向かうマリーの真上から、予告もなしに大量の茶色いかたまりが降ってきた。マリーは悲鳴をあげる代わりに、とっさに飛びのけた。
驚きのあまり息をするのも忘れて、ひんやりとした壁に身を寄せ、しばしば足元の茶色い落下物を見つめた。マリーは顔をしかめながら、一歩近づくと、おそるおそる匂いを嗅いでみる。苦みのあるツンとした匂いが、マリーの鼻を刺激する。
「何これ、土?どうしてこんなものが降ってくるわけ?」
間一髪、危うく土まみれになるところだった。屋上で土いじりでもしているのだろうか。だが見上げても、どこまでも空が広がっている以外、何もなかった。
マリーが教室に着くと、ユリーカが「おはよう」と声をかけながら近づいてきた。その長い指でマリーの髪の毛を一房すくうと、ユリーカは不思議そうな顔をマリーに向けた。
突然の接触に錯乱するマリーの心情に気がつくこともなく、ユリーカはマリーの髪の匂いを嗅ぐ。
「君の髪から土の匂いがするね。ああ、やっぱり。土がついてるみたいだ」
ユリーカは優雅な仕草で、マリーの髪の汚れを取ってやった。マリーは恥ずかしいやら、嬉しいやらで、なぜ土が降ってきたのかなんて、すっかりどうでもよくなってしまった。
顔を乙女らしく真っ赤に染めたマリーは、しおらしく自分の席に座った。
授業中、マリーが教科書を開くと、そこに一枚の紙が挟まっていた。「セイジョハアキラメロ」と、文字が書かれている。
(聖女は諦めろ?どうして?一体誰が?)
マリーは思わず顔を上げて教室を見渡す。そんなことをしたところで犯人と目が合うはずもないし、そもそも同じ空間にいるとも限らない。マリーは机の下で拳をぎゅっと握りしめると、小刻みに震える下唇を噛み、正面の黒板を見つめた。
(誰の忠告かは知らないけど、あたしは絶対に聖女を諦めないから!聖妻の座はあたしのものなんだから!)
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