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18. 天然と腹黒
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コレットは封筒を破ってクズ箱に捨てた。<我が愛しのアントワーヌ>と書いてあったようだ。
「まったく兄弟そろって不用心なのは血のせいね」
コレットの部屋の外から軽い足音が聞こえ、近くでドアが閉まる音がした。マリーが帰ってきたのだろう。ずいぶんと元気そうだ。
コレットは夕食の席に着くと、マリーの様子を素早く確認する。マリーの目は赤く、心なしか潤んでいる。かわいそうだけど、これでよかったの。コレットは自分の心に言い聞かせた。
不安で仕方なかったナイフとフォークの扱い方も、今はずいぶんと様になってきた。訛りはいまだ直せていないが、黙っていればそれなりのご令嬢にみえる。コレットは笑みを浮かべながら、黙って自分の皿の上の料理を片付けていく。
今晩は一度も声を発さなかったマリーは、デザートを食べ終えると、デ・ラ・クレール家の食卓に爆弾を落とした。
「あたし、聖女に決まったの。黙っていてごめんなさい。でも、もう決めたの。あたしはこれからずっと神様にお仕えします」
家族みんなぽかんと口を開けている。公爵はこめかみに青筋を作り、ナプキンを乱暴に外した。
「王子の婚約者の筆頭なのに。一体どうするんだ?相談もせずに、勝手が許されると思うのか!ずっと聖女ということは、一生この家の厄介になるつもりか?この家を継ぐジュニアの負担を考えろ!」
「筆頭ということは他にもいくらでも候補がいるってことでしょ?あたしじゃなくてもいいじゃない。別にお世話にならなくても、自分でどうにかやっていくから」
「一人で生きていけるわけがない!嫁の貰い手がいなくなるだろう。適齢期を逃したらどうするつもりだ?聖女は辞退しなさい」
「ご心配なく。あたしはもうこの人という男性を見つけました!それは神ただお一人。あたしはずっと神とともにあります」
聞く耳を持たないマリーに、大混乱の家族。マリーの自分勝手な言い分に、コレットは腸が煮えくり返りそうになりながら、黙って会話を聞いている。
混乱を極めたディナーにぐったりしたコレットは、気力を振り絞り、その夜マリーの部屋を訪れた。
「マリー、さっきはどういうつもりだ?公爵様やお兄様に迷惑かけるとか、ちっとは思わねえの?」
「聖女になったこと?王子と婚約しているわけじゃないし、そもそも正式な打診だって来ていないのに、家に迷惑もないでしょ。黙っていて悪かったけど、反対されると思って誰にも秘密にしていたの。朝晩遅かったのもそのせい」
「一生聖女でいるつもりだと言っていたけど、自分の経歴に箔をつけたらどうせすぐに聖女を辞めるつもりなんでしょう?そういうの、すんごくずるい!王子に選ばれようって魂胆はわかってる。王子のことは興味ねえって言ってたのに!」
コレットはマリーの部屋を飛び出して、自分の部屋で泣く。どうにかして次の手を考えなければ。
こんこん。窓の外から音がする。泣きはらしたコレットは顔を上げ、出窓を開いた。そこには、夜の闇に紛れたクラスメイトのユリーカがいた。
「おめえさん、なんでこんなところにいるだ?」
コレットは神経をとがらせ、青空色の瞳はユリーカを鋭く射る。ユリーカは表情一つ変えずに淡々と先を続けた。
「そんなに警戒しないで。すぐに帰るつもりなんだ。君と話したくてね。聖女とは辞退しなければ、ずっとそのまま独身なんだ」
「そんなこと知ってる。何しに来たんだろか?家の者を呼んでもいいけど」
「辞退させなければいいって、助言しに来たんだ。君がするべきことは、マリーの願いを叶えるために家族を説得し、マリーの代わりに王子と婚約できるように行動することじゃないかな。自分自身を高め、最善を尽くすことだよ」
コレットが口を開いて反論するより早く、ユリーカはほほ笑みを浮かべ、次の瞬間にはコレットの眼前から消えていた。
ちゃらんぽらんな天然と腹黒め。コレットはユリーカが去った後も、夜空をずっと睨んでいた。
「まったく兄弟そろって不用心なのは血のせいね」
コレットの部屋の外から軽い足音が聞こえ、近くでドアが閉まる音がした。マリーが帰ってきたのだろう。ずいぶんと元気そうだ。
コレットは夕食の席に着くと、マリーの様子を素早く確認する。マリーの目は赤く、心なしか潤んでいる。かわいそうだけど、これでよかったの。コレットは自分の心に言い聞かせた。
不安で仕方なかったナイフとフォークの扱い方も、今はずいぶんと様になってきた。訛りはいまだ直せていないが、黙っていればそれなりのご令嬢にみえる。コレットは笑みを浮かべながら、黙って自分の皿の上の料理を片付けていく。
今晩は一度も声を発さなかったマリーは、デザートを食べ終えると、デ・ラ・クレール家の食卓に爆弾を落とした。
「あたし、聖女に決まったの。黙っていてごめんなさい。でも、もう決めたの。あたしはこれからずっと神様にお仕えします」
家族みんなぽかんと口を開けている。公爵はこめかみに青筋を作り、ナプキンを乱暴に外した。
「王子の婚約者の筆頭なのに。一体どうするんだ?相談もせずに、勝手が許されると思うのか!ずっと聖女ということは、一生この家の厄介になるつもりか?この家を継ぐジュニアの負担を考えろ!」
「筆頭ということは他にもいくらでも候補がいるってことでしょ?あたしじゃなくてもいいじゃない。別にお世話にならなくても、自分でどうにかやっていくから」
「一人で生きていけるわけがない!嫁の貰い手がいなくなるだろう。適齢期を逃したらどうするつもりだ?聖女は辞退しなさい」
「ご心配なく。あたしはもうこの人という男性を見つけました!それは神ただお一人。あたしはずっと神とともにあります」
聞く耳を持たないマリーに、大混乱の家族。マリーの自分勝手な言い分に、コレットは腸が煮えくり返りそうになりながら、黙って会話を聞いている。
混乱を極めたディナーにぐったりしたコレットは、気力を振り絞り、その夜マリーの部屋を訪れた。
「マリー、さっきはどういうつもりだ?公爵様やお兄様に迷惑かけるとか、ちっとは思わねえの?」
「聖女になったこと?王子と婚約しているわけじゃないし、そもそも正式な打診だって来ていないのに、家に迷惑もないでしょ。黙っていて悪かったけど、反対されると思って誰にも秘密にしていたの。朝晩遅かったのもそのせい」
「一生聖女でいるつもりだと言っていたけど、自分の経歴に箔をつけたらどうせすぐに聖女を辞めるつもりなんでしょう?そういうの、すんごくずるい!王子に選ばれようって魂胆はわかってる。王子のことは興味ねえって言ってたのに!」
コレットはマリーの部屋を飛び出して、自分の部屋で泣く。どうにかして次の手を考えなければ。
こんこん。窓の外から音がする。泣きはらしたコレットは顔を上げ、出窓を開いた。そこには、夜の闇に紛れたクラスメイトのユリーカがいた。
「おめえさん、なんでこんなところにいるだ?」
コレットは神経をとがらせ、青空色の瞳はユリーカを鋭く射る。ユリーカは表情一つ変えずに淡々と先を続けた。
「そんなに警戒しないで。すぐに帰るつもりなんだ。君と話したくてね。聖女とは辞退しなければ、ずっとそのまま独身なんだ」
「そんなこと知ってる。何しに来たんだろか?家の者を呼んでもいいけど」
「辞退させなければいいって、助言しに来たんだ。君がするべきことは、マリーの願いを叶えるために家族を説得し、マリーの代わりに王子と婚約できるように行動することじゃないかな。自分自身を高め、最善を尽くすことだよ」
コレットが口を開いて反論するより早く、ユリーカはほほ笑みを浮かべ、次の瞬間にはコレットの眼前から消えていた。
ちゃらんぽらんな天然と腹黒め。コレットはユリーカが去った後も、夜空をずっと睨んでいた。
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