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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第865話 シュウゲン 48 女性化した樹君の正体&沙良の偽装結婚式 1
それから1週間後の土曜日。
朝から樹君が女性化した姿を確認するため、皆が美佐子の家に集まってきていた。
彼の姿いかんによっては、明日の花嫁役に支障が生じると思い、儂は心配で昨夜の寝つきが悪かった程だ。
気もそぞろで朝食を食べ終わる頃、玄関のチャイムが鳴った。
樹君が来たようだな。
沙良が席を立ち玄関に行く後を尚人君が付いていく。
さて女性化した樹君は、どんな姿になっておるのかの?
今か今かと待っているとリビングの扉が開いた。
そこにいた女性を一目見て儂は立ち上がる。
「ヒルダちゃんではないか! 儂に、お礼をしに来てくれたのかの?」
沙良に良く似た面立ちだが、瞳は紫で背が高く年相応な色気がある。
ずっとお礼を楽しみにしていた儂が、ヒルダちゃんを見間違う筈がない。
「いえ、……樹です」
それなのに彼女の口から、とんでもない答えが返ってきた。
「嘘だろ!? 完全に別人じゃないか!」
隣にいた奏が大声を上げる。
ええいっ、煩いわ!
「あぁ、沙良の代役が務まるな」
ヒルダちゃんの姿をした樹君を見ても動じず、響君が落ち着き払った声で言う。
これは一体どういう事じゃ? 響君は女性化した樹君の姿を事前に知っていたのか?
それに、どう考えてもヒルダちゃん本人に間違いない。
いくら今の沙良に似せたとしても、大人になった姿をここまで正確には再現出来ないだろう。
考えられるのはヒルダちゃんが亡くなったあと、樹君に転生した場合だ。
そしてそのヒルダちゃんを知っている響君も、前世は異世界人であった可能性が高い。
2人が沙良に召喚されてすぐ異世界に馴染んでいるのも、それなら頷ける。
ガーグ老は元々ヒルダちゃんの護衛をしていたから、樹君がヒルダちゃんだと知っていたのか……。
2人の行動は前々から怪しいと思っていたが、そう考えれば全て納得じゃ。
ヒルダちゃんはエルフで長命な種族だったし、樹君は女性としての意識のほうが強かろう。
儂らに内緒にしていた理由は分からんが、響君の前世に関係がありそうだな。
ふむ、自分から言い出すまで儂も黙っておこう。
「なんだか2人が揃っていると親子みたいに見えるわね」
沙良とヒルダちゃんの姿をした樹君を見て、驚いた様子の美佐子が感想を述べる。
それから樹君へ近付き、本当に女性化しているか確認するように胸を触りだした。
羨ましいのう~。
儂も事情を聞いたあとで、約束したお礼をしてもらわねば。
「あの、ちょっと……」
「あら、本物だわ」
「妻にも散々触られたので、どうかそれ以上は止めてくれると助かります」
胸の感触を楽しんでいる美佐子に、樹君が顔を赤らめ恥ずかしそうに言う。
同性同士でも、皆の見ている前で胸を揉まれるのは嫌だろう。
そんな2人を見て尚人君が何かを言いかけたが、樹君に口を塞がれていた。
「おじさん。これからブライダルショップに行って、衣装合わせをしましょう」
自分の代役が務まると判断した沙良が樹君を誘う。
「あぁ……また、花嫁衣裳を着るのか……」
樹君が呟いたその言葉を聞いて、やはりヒルダちゃんだと確信する。
以前に花嫁衣裳を着たのは、カルドサリ国王との結婚式だろう。
沙良と樹君が家を出たあと、残った皆はまだ信じられないという風に茫然としていた。
ただその中でセイだけは、ヒルダちゃんを知っていた響君とも違う反応を見せる。
何やら感極まったように目を潤ませ、必死で感情を押し殺しているようだった。
沙良の代役が樹君に決まったのが嬉しいのか?
孫が危険に晒されないのは喜ばしい事ではあるが、少々大袈裟すぎんかの……。
外出した2人を待っている間、今迄の響君と樹君の態度を思い返してみた。
お礼を楽しみに待っていると言った時の反応からして、ヒルダちゃんは儂との約束を覚えているだろう。
現在は曾孫の婿と義理の曽祖父という関係じゃが、約束をしたのはヒルダちゃんだからの。お礼を催促しても問題なかろう。
樹君は多少気まずいかも知れんが、約束は果たしてもらわねば。
ほくほく顔で帰ってくるのを待っていたのに、戻ってきた樹君は響君の傍にぴったりと張り付き中々声を掛けられない。
そうこうしている内にガーグ老に呼ばれ、響君と一緒に異世界へ行ってしまった。
残念じゃのう~、またの機会を待つとしよう。
翌日、日曜日の朝6時。
沙良の偽装結婚式に出席するため、身重の美佐子と雫ちゃん以外のメンバー全員が異世界の沙良の家へ移動する。
2人を残したのは、偽装結婚式の最中にアシュカナ帝国から襲撃があると予想しているからだ。
敵の人数や強さが分からぬため、2人にはホーム内で待機してもらう事にした。
少ししてからガーグ老と見知らぬエルフの女性達が家に来る。
沙良の代役を務める樹君は、花嫁衣裳を着付けに女性達と2階へ上がっていった。
沙良が披露宴会場となる1階に幾つかテーブルを出し、料理をせっせと並べていく。
出席人数を聞いておらんかったが、こりゃかなり大規模な結婚式だな。
儂は身内だけを集めた、もう少しこじんまりとした式だと思っていたが、偽装結婚だとバレぬよう派手にしたのかも知れん。
早朝から、出席者の冒険者達が沙良の家にぞくぞくと集まってくる。250人近くはいるだろうか?
事前に話を聞いているみたいで、皆が結婚式に似合わぬ完全武装をしていた。
結婚式は12時だと嘘の情報を流しているらしく、その前に沙良の料理を食べに来たようだ。
襲撃があれば、悠長に食事をしていられぬしな。
その後、アマンダ嬢とダンクのパーティー、ダンクのご両親が挨拶にみえる。
本当に、この2人とは親しくしておるようだ。
あれからアマンダ嬢はクランリーダーだと沙良から聞いたが、彼女のクランメンバーは全員参加していた。
碧水晶の紀章をしている者達がそうだろう。
しかし、あの碧水晶は……どこかの国で小夜の土産にと買ったような覚えがある。
記憶を手繰り、そこがエンハルト王国だと思い出した。
ほう、ならばアマンダ嬢はエンハルト王国の王族か?
クランメンバー全員が揃いの剣を腰に差し、統率された動きを見れば騎士だと分かる。
冒険者の真似事をする王女の護衛にしては人数が多い。
迷宮都市で冒険者をするのは何か理由がありそうじゃな。
「サラちゃん、お相手は何処にいるんだい?」
アマンダ嬢が周囲を見渡して沙良の結婚相手を尋ねると、沙良はエルフの正装をした集団を指差し答える。
「あの中で一番体格の良いご老人です」
沙良の差し示した方へ視線を向け、誰だか確認した全員が皆唖然として口を噤んだ。
ガーグ老との年の差に驚いたのだろう。
「あ~、5人の子持ちになったと聞いていたが……。もしかして、サラちゃんより子供達の方が年上なんじゃないか?」
黙っていられずダンクが、躊躇いがちに沙良へと質問する。
「あっはい、そうですね。その内の2人は結婚しているから、義理の娘も2人いますよ。幸い孫はまだなので、お婆ちゃんにならなくて済みました!」
「お婆ちゃんって……」
アマンダ嬢が非常に小さな声で、「私が結婚相手になれば良かった」と言うのが聞こえたが……。
妙に実感がこもっているように思えたのは、気の所為じゃろうか?
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読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
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彼の姿いかんによっては、明日の花嫁役に支障が生じると思い、儂は心配で昨夜の寝つきが悪かった程だ。
気もそぞろで朝食を食べ終わる頃、玄関のチャイムが鳴った。
樹君が来たようだな。
沙良が席を立ち玄関に行く後を尚人君が付いていく。
さて女性化した樹君は、どんな姿になっておるのかの?
今か今かと待っているとリビングの扉が開いた。
そこにいた女性を一目見て儂は立ち上がる。
「ヒルダちゃんではないか! 儂に、お礼をしに来てくれたのかの?」
沙良に良く似た面立ちだが、瞳は紫で背が高く年相応な色気がある。
ずっとお礼を楽しみにしていた儂が、ヒルダちゃんを見間違う筈がない。
「いえ、……樹です」
それなのに彼女の口から、とんでもない答えが返ってきた。
「嘘だろ!? 完全に別人じゃないか!」
隣にいた奏が大声を上げる。
ええいっ、煩いわ!
「あぁ、沙良の代役が務まるな」
ヒルダちゃんの姿をした樹君を見ても動じず、響君が落ち着き払った声で言う。
これは一体どういう事じゃ? 響君は女性化した樹君の姿を事前に知っていたのか?
それに、どう考えてもヒルダちゃん本人に間違いない。
いくら今の沙良に似せたとしても、大人になった姿をここまで正確には再現出来ないだろう。
考えられるのはヒルダちゃんが亡くなったあと、樹君に転生した場合だ。
そしてそのヒルダちゃんを知っている響君も、前世は異世界人であった可能性が高い。
2人が沙良に召喚されてすぐ異世界に馴染んでいるのも、それなら頷ける。
ガーグ老は元々ヒルダちゃんの護衛をしていたから、樹君がヒルダちゃんだと知っていたのか……。
2人の行動は前々から怪しいと思っていたが、そう考えれば全て納得じゃ。
ヒルダちゃんはエルフで長命な種族だったし、樹君は女性としての意識のほうが強かろう。
儂らに内緒にしていた理由は分からんが、響君の前世に関係がありそうだな。
ふむ、自分から言い出すまで儂も黙っておこう。
「なんだか2人が揃っていると親子みたいに見えるわね」
沙良とヒルダちゃんの姿をした樹君を見て、驚いた様子の美佐子が感想を述べる。
それから樹君へ近付き、本当に女性化しているか確認するように胸を触りだした。
羨ましいのう~。
儂も事情を聞いたあとで、約束したお礼をしてもらわねば。
「あの、ちょっと……」
「あら、本物だわ」
「妻にも散々触られたので、どうかそれ以上は止めてくれると助かります」
胸の感触を楽しんでいる美佐子に、樹君が顔を赤らめ恥ずかしそうに言う。
同性同士でも、皆の見ている前で胸を揉まれるのは嫌だろう。
そんな2人を見て尚人君が何かを言いかけたが、樹君に口を塞がれていた。
「おじさん。これからブライダルショップに行って、衣装合わせをしましょう」
自分の代役が務まると判断した沙良が樹君を誘う。
「あぁ……また、花嫁衣裳を着るのか……」
樹君が呟いたその言葉を聞いて、やはりヒルダちゃんだと確信する。
以前に花嫁衣裳を着たのは、カルドサリ国王との結婚式だろう。
沙良と樹君が家を出たあと、残った皆はまだ信じられないという風に茫然としていた。
ただその中でセイだけは、ヒルダちゃんを知っていた響君とも違う反応を見せる。
何やら感極まったように目を潤ませ、必死で感情を押し殺しているようだった。
沙良の代役が樹君に決まったのが嬉しいのか?
孫が危険に晒されないのは喜ばしい事ではあるが、少々大袈裟すぎんかの……。
外出した2人を待っている間、今迄の響君と樹君の態度を思い返してみた。
お礼を楽しみに待っていると言った時の反応からして、ヒルダちゃんは儂との約束を覚えているだろう。
現在は曾孫の婿と義理の曽祖父という関係じゃが、約束をしたのはヒルダちゃんだからの。お礼を催促しても問題なかろう。
樹君は多少気まずいかも知れんが、約束は果たしてもらわねば。
ほくほく顔で帰ってくるのを待っていたのに、戻ってきた樹君は響君の傍にぴったりと張り付き中々声を掛けられない。
そうこうしている内にガーグ老に呼ばれ、響君と一緒に異世界へ行ってしまった。
残念じゃのう~、またの機会を待つとしよう。
翌日、日曜日の朝6時。
沙良の偽装結婚式に出席するため、身重の美佐子と雫ちゃん以外のメンバー全員が異世界の沙良の家へ移動する。
2人を残したのは、偽装結婚式の最中にアシュカナ帝国から襲撃があると予想しているからだ。
敵の人数や強さが分からぬため、2人にはホーム内で待機してもらう事にした。
少ししてからガーグ老と見知らぬエルフの女性達が家に来る。
沙良の代役を務める樹君は、花嫁衣裳を着付けに女性達と2階へ上がっていった。
沙良が披露宴会場となる1階に幾つかテーブルを出し、料理をせっせと並べていく。
出席人数を聞いておらんかったが、こりゃかなり大規模な結婚式だな。
儂は身内だけを集めた、もう少しこじんまりとした式だと思っていたが、偽装結婚だとバレぬよう派手にしたのかも知れん。
早朝から、出席者の冒険者達が沙良の家にぞくぞくと集まってくる。250人近くはいるだろうか?
事前に話を聞いているみたいで、皆が結婚式に似合わぬ完全武装をしていた。
結婚式は12時だと嘘の情報を流しているらしく、その前に沙良の料理を食べに来たようだ。
襲撃があれば、悠長に食事をしていられぬしな。
その後、アマンダ嬢とダンクのパーティー、ダンクのご両親が挨拶にみえる。
本当に、この2人とは親しくしておるようだ。
あれからアマンダ嬢はクランリーダーだと沙良から聞いたが、彼女のクランメンバーは全員参加していた。
碧水晶の紀章をしている者達がそうだろう。
しかし、あの碧水晶は……どこかの国で小夜の土産にと買ったような覚えがある。
記憶を手繰り、そこがエンハルト王国だと思い出した。
ほう、ならばアマンダ嬢はエンハルト王国の王族か?
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冒険者の真似事をする王女の護衛にしては人数が多い。
迷宮都市で冒険者をするのは何か理由がありそうじゃな。
「サラちゃん、お相手は何処にいるんだい?」
アマンダ嬢が周囲を見渡して沙良の結婚相手を尋ねると、沙良はエルフの正装をした集団を指差し答える。
「あの中で一番体格の良いご老人です」
沙良の差し示した方へ視線を向け、誰だか確認した全員が皆唖然として口を噤んだ。
ガーグ老との年の差に驚いたのだろう。
「あ~、5人の子持ちになったと聞いていたが……。もしかして、サラちゃんより子供達の方が年上なんじゃないか?」
黙っていられずダンクが、躊躇いがちに沙良へと質問する。
「あっはい、そうですね。その内の2人は結婚しているから、義理の娘も2人いますよ。幸い孫はまだなので、お婆ちゃんにならなくて済みました!」
「お婆ちゃんって……」
アマンダ嬢が非常に小さな声で、「私が結婚相手になれば良かった」と言うのが聞こえたが……。
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◇小説家になろうでも同時連載中です◇