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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第121話 迷宮都市 地下12階 ケリーさんの父親

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 さて、今日のメニューは『シチュー』・『ナン』・『キッシュ』・デザートの桃。
 『シチュー』と『ナン』の調理開始。
 兄へコカトリスクイーンの卵の電子切開をお願いし、大きな器の中に入れて卵液を作る。
 赤い殻は後で換金するため綺麗に洗いマジックバッグへ。
 キッシュの材料(たまねぎ・じゃが芋・マジックキノコ)を炒めたら、卵液とチーズを投入しファイアーボールで表面を焼く。
 これを9個、次々と作る。
 ファイアーボールは、オーブン代わりになるし調理も時短出来るから一番役に立つ魔法かも?
 『キッシュ』が完成したら6等分して皿に載せ、各リーダーへお裾分すそわけする。

 皿を受け取ったルイスさんが何やら遠い目をしていた。
 コカトリスの卵を食べるのは初めてだったのかな?
 食事が終わった後はデザートの時間だ。
 今週で地下12階の攻略を終えると伝えていたため、最後の賭けである今日は桃を出しづらい。
 収穫した桃をマジックバッグから取り出すと、冒険者達の悲痛な叫び声が上がった。
 残念、最後に皆さん大穴を狙ったんですね?
 ジョンさんのパーティーも賭けていたのか、ルイスさんに殴られていたよ。

「あああぁ~、俺の金が消えてなくなった!」

 そう言いながら、ケリーさんは地面に両手をつき崩れ落ちてしまった。
 パーティーメンバーを見ると、皆あきれかえった表情をしている。

「ケリーさん、賭け事は身を滅ぼしますよ」

 私は忠告しながらケリーさんの肩を叩いた。

「ん? ケリー?」

 ジョンさんのパーティーメンバーの1人が、ケリーさんの名を聞き近付いてくる。
 まだ地面から起き上がれないケリーさんの顔を見てたずねた。
 
「もしかしてお前の母親は、ガルシアって名前じゃないか?」

「えっ? なんで知っているんだ?」

「それは俺が、お前の父親のハリスだからだよ!」

 おっと、ここで再び20年振りの親子の再会ですか?
 ケリーさんは、愕然がくぜんとした表情をし硬直こうちょくしたように動かない。
 周りの冒険者達もざわつき始めたため、ハリスさんはケリーさんを自分達のマジックテントへ引っ張っていった。
 あれ? でもケリーさんにも顔を確認してもらったよね。
 父親に気が付かなかったんだろうか?
 後でダンクさんに聞いてみよう!
 
 桃の皮をきながらカットしていると、集金を終えたアマンダさんが満面の笑みを浮かべ食べにきた。
 ものすごく、ご機嫌麗きげんうるわしいようで……。
 多分、全勝したのはアマンダさんのパーティーだけだろう。
 最後となった桃の賭けは、冒険者達の阿鼻叫喚あびきょうかんの叫び声を飲み込んで終わる。
 途中、20年振りの親子の再会もあったようだけど……。
 配った大きなみかんを皆が食べ終え夕食は終了。

 後でダンクさんに話を聞いた所、当時10歳だったケリーさんは半年に1度しか会わない親の顔を20年経ち忘れていたらしい。
 確かに半年に1回しか会わない父親の顔など、子供は覚えていられないだろう。
 この世界には写真がないので記憶するしかない。
 日本でも海外赴任の父親が久し振りに帰宅したら、子供に忘れられ「おじちゃん誰?」と言われる例がある。

 ケリーさんの母親は、帰ってこない夫を死んだものとあきらめ再婚したみたいだ。
 再婚相手との間に娘が生まれ居づらくなったケリーさんは、父親と同じ冒険者となり家を出たんだとか。
 20年振りに会った父親が、テントで確認した冒険者であると知りケリーさんは泣いたそうだ。
 そして自分の年とそう変わらぬ父親とテントで一晩を過ごし、お互い再会を喜んだらしい。
 ちなみに、テントはアイテムBOX内にある展開した・・・・ままの物を提供させて頂きました。
 こうして最後の地下12階も問題なく5日間の攻略を終えた。

 旭が換金。
 ファングボアの肉5体を引き取り、肉屋でファングボアの肉3体を卸し1体を、お店用に保管してもらう。
 兄達を車と一緒に希望する居酒屋へ送り届け、私はシルバーとお散歩に出掛けよう。
 今週の出来事を話しながら田舎道を歩いていく。
 ケリーさんが20年振りに親子の再会を果たしたし最後の最後にで大損した件や、シルバーも使えるアイスボールとアイスニードルの違いがよく分からない事等。

 一度、シルバーにアイスボールの魔法を撃ってもらった。
 うん、ちゃんとボールに見えるね。
 私のアイスボールを見せると、シルバーはポカンと口を大きく開け動かなくなってしまう。
 そうよね?
 思いっきり槍の形をした氷が地面に突き刺さっているんだもの、ビックリするのは当たり前よ!
 でもこれ、アイスボールの魔法なんだよね~。
 この世界の魔法はイメージ通り出てくるようで、ボールとかアローとかニードルとか全く必要なかった。
 一通り魔法のお披露目ひろめをし、マッピングで自宅に戻る。
 冷蔵庫に貼られたホワイトボードを見て兄達を店へ迎えにいった。

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