自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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<外伝> 椎名 賢也

椎名 賢也 52 ダンジョン 地下8階 初めての治療行為&テントが増える謎 2

 月曜日。
 今日から5日間、地下8階の攻略開始だ。

 地下1階から地下8階まで最短距離で駆け抜ける。
 安全地帯に到着後、拠点にいる冒険者達と挨拶を交わす。
 マジックテントを設置して、ホームの自宅でトイレ休憩を済ませテントから出た。

 沙良が早速オリハルコンゴーレムを見付けたようで、ニヤリと笑っている。
 何でそんな悪人面をしてるんだ?

 旭がその顔を見たら百年の恋も冷めそうだぞ。
 本当に欲望に忠実なやつだな。
 
 沙良の先導に従って魔物を倒して回ると、お目当てのオリハルコンゴーレムに辿たどり着く。
 その瞬間に沙良がサンダーアローを撃って即座に回収していた。

 そして直ぐに次に向かう。

 3時間後。
 安全地帯に行き、テントからホームの自宅に戻って食事だ。

 今日のお弁当は、ぶりの照り焼き・だし巻き卵・筑前煮・舞茸の炊き込みご飯だ。
 しじみ汁&そば茶と一緒に大盛ご飯を完食する。

 食後に沙良が子供達の家を、そろそろ購入したいと相談してきた。

 俺達も最終攻略組になったし、奴隷商は手下の冒険者を失って依頼を受ける者がいなくなってからは手を出してこない。

 目立つ行為をしても問題ないだろう。

 家を購入する事に同意し、生活に必要な物を買いそろえるのもOKした。
 ミリオネの子供達のように、また沙良が約束事を守らせるんだろう。

 その後、出現しているオリハルコンゴーレムを全て倒して今日の攻略を終えた。

 翌日夜9時。
 テントから出ると、男性冒険者の怪我人を取り囲んでいるパーティーがいた。

 手持ちのエクスポーション(銀貨30枚)では治らなかったのか、左足をかなり深く切られ出血が続いている状態だ。

 俺はすぐさま駆け出すと周りを囲んでいるパーティーメンバーを押しのけて、怪我人の太ももをマジックバッグから取り出したひもで固くしばった。

「我慢しろ」

 そう言って、傷口をウォーターボールで洗い流し状態を確認する。
 30cmに渡る広範囲の裂傷に大動脈の損傷が見られる。

 エクスポーションをかけた状態でこれか……。

 血管を修復し裂傷をつなぎ合わせるイメージを持ってヒールをかけると、数秒で傷口が塞がり皮膚が綺麗な状態に戻った。

「助かった! 今回の探索はあきらめて、帰還しようと思っていた所だったんだ。皆で礼を言わせてもらおうっ!」

「ありがとうっ!!」
 
「いや、治療出来て良かった」

 アーサーさんのパーティーメンバー全員から頭を下げてお礼を言われ、太ももをしばっていたひもほどく。

 あのままじゃ出血多量で死ぬ所だった。

 怪我をした男性から、お礼がしたいとテントに連れていかれる。
 
 何だ?
 金目の物でもくれる心算つもりか?

 どうせなら持っていない、アダマンタイトとかヒヒイロカネとかの鉱物が欲しいんだが。
 テントの中に入ると、男性がおもむろに服を脱ぎ出した。

 これは、まさかっ!

「いらんわ、ボケッ!!」

 俺は怒鳴り、テントから出て沙良の下に向かった。

 一体、何を考えてるんだ。
 そんなモノがお礼になるか!

「お兄ちゃん?」

 沙良が不思議そうに聞いてきた。

「テントの中で話す」

 マジックテント内で事情を話すと、沙良は何とも言えない顔をしていた。
 
 そして俺は、夜間にテントが増えていた理由に思い当たる。

 成程なるほど……。

 あさひ、異世界は怖い所だ。
 あやうく貞操の危機を迎えそうだったよ。

 じゃあ先週感じた俺に対する視線は、もしかしてそういう事だったのか?  
 沙良の身に危険が及ぶ事だけに注意してきたが、俺自身も狙われる可能性があるって事か。

 男は無理だ。
 同じ趣味の者同士でしてほしい。

 その後、沙良が聞いた所によると普通は治療に必要なポーションの値段×(階層階+2)の治療代を支払うのが基本だとか。

 今回の場合、エリクサー(金貨1枚)に該当するので治療費は金貨10枚(1千万円)。

 エリクサーは王都にしか売っていないらしい。
 しかも、貴族じゃないと購入出来ないとか。
 教会や治療院に金貨1枚払って治療するのが普通だそうだ。
 
 子供達の家のお金に充てるからと、沙良は受け取ったようだ。

 そして男性冒険者の接待も、深部を攻略する冒険者には珍しい事ではないらしい……。
 どちらを希望するかは治療した側が決めてよいそうだが、どちらもお断りだっ!

 高校時代、俺と旭は一度も告白された事がなかった。

 俺は祖父がイギリス人のクオーターだったから、少し日本人離れしている容姿の所為せいで人気がないんだろうと思っていた。

 旭は童顔で可愛らしい容姿をしていたのに不思議だったが、卒業式の日に理由が判明する。

 同級生や後輩の女性徒に囲まれた俺達は、てっきり制服の第2ボタンをもらいに来たのかと思って密かに喜ぶ。

 なのに沢山の花束を渡されて言われた言葉は、意味不明で理解出来なかった。

「私達全員応援してます! 2人で幸せになって下さい!」

 うん?
 そこは、「卒業おめでとうございます」じゃないのか?

 そして「写真を撮ってもいいですか?」と言われ一緒に映る事を了解すると、彼女は自分と一緒の写真ではなく何故なぜが一緒の写真を何枚も撮っていた。

 ここに至ってようやく、俺達が出来て・・・いると勘違いされていた事に気付く……。

 その後、女性徒達に激写されまくり、モテなかった真実を知って卒業した痛い思い出がある。

 あれはきっと、旭が「昨日、賢也が寝かせてくれなかったから眠い」だとか「毎晩、賢也が寝かせてくれなくて死にそう」だとか言った言葉を彼女たちが曲解した所為せいだろう。

 原因はお前かっ!?

 俺はただ、旭が医大に受かるように猛勉強させていただけだというのに、何と理不尽りふじんな目にっていたんだろう。

 やっぱり何発か殴っておけば良かったと今でも思う。
 そんな訳で学生時代、俺達は女性に全くモテなかったのだった。

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