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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第326話 迷宮都市 ミリオネの子供達へのプレゼント 3
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30分後――。
12時を告げる教会の鐘の音が鳴ると、仕事を終えた子供達が続々と集まってくる。
この世界の人達(貴族はどうか知らない)は時計を持っていないので、大抵教会の鐘の音に合わせて行動していた。
私は昼食の前にまずプレゼントを渡す事にする。
「皆久し振りだね~、元気にしてた? 今日は私との【約束】を守ってくれているご褒美にプレゼントを持ってきました。まずは年齢の小さい子順に並んでくれるかな?」
「プレゼント? 今日はご馳走以外にも何か貰えるの?」
早く食べたそうにしている男の子が不思議そうに私を見る。
「そうよ。皆が寒くないように色々持ってきたの」
「ふ~ん。じゃあ年齢順に並ぶね~」
マントくらいしか、防寒着を知らないのでピンとこないようだ。
子供達に年齢の低い順に並んでもらい、1人1人にスヌード・耳当て・腹巻・ポンチョを手渡していく。
初めて見る防寒着&防寒具に子供達は不思議そうな顔をしていた。
プレゼントを受け取った子供達に兄と旭が、使い方を実演してみせている。
特に耳当ては変わった形状をしているので、見ただけでは何に使用するか分からないだろう。
兄と旭の使い方を見て、子供達も真似を始める。
「わぁ~ふわふわだぁ、耳と首がとっても暖かい! これは何の毛皮なの?」
「それはワイルドウルフの毛皮よ。お姉ちゃんが、迷宮ダンジョンで沢山狩ってきたんだから!」
「え? お姉ちゃんが狩ってきた魔物で作ったの?」
「そうよ~。私達はB級冒険者ですからね!」
驚いてほしくて胸を張って答えると、子供達が一斉に私に注目した。
「B級!? もう上がったの? だってまだ5年経ってないよね?」
「迷宮都市の冒険者ギルドでスキップ申請したのよ~」
「凄いや! プレゼントありがとう~!」
「寒い日に腹巻をお腹に巻いて寝るんだよ」
「うん、分かった~」
子供達は渡したプレゼントを大事そうに両手で抱えると、食事をする時に汚してしまったら大変だから一度家に持って帰りたいと言う。
確かに邪魔になるので、プレゼントを置いて食器を持ってきてほしいと伝えた。
子供達が戻ってくる前に『シチュー』を温め直し、キッシュを人数分にカット。
『フィッシュバーガー』を作る。
ソースをどちらにしようか迷ったけど、この場所には子供達しか居ないので『トマトソース』と『タルタルソース』の両方をかける事にした。
戻ってきた子供達から順に昼食を渡していく。
『キッシュ』と『フライドポテト』は1枚の皿に盛って出す。
今日の昼食は、かなりボリュームがある。
全ての子供達に行き渡ると全員で食事前の挨拶だ。
「頂きます」
「頂きます!」
まず最初に子供達が口をつけたのは、迷宮サーモンの『フィッシュバーガー』。
一番目立つからね。
一口食べた子供達の表情が変わる。
「美味し~い! これ何のお肉なの!?」
食べた事の無い味に皆ビックリして目がまん丸だ。
「それは迷宮サーモンっていう魔魚だよ」
「魔魚! 僕初めて食べるよ~」
それからは皆、料理を食べる事に一生懸命だ。
小さな口をモグモグと動かし食べる姿は、ちょっとハムスターに似て可愛らしい。
同じ家の子供達と料理の感想を言い合いながら笑顔一杯になっている。
スープの色が白い事に驚いて、飲んだ後には味の違いに2度驚く。
牛乳をたっぷり入れた『シチュー』は大好評だった。
カリカリの『フライドポテト』も『キッシュ』も、口々に「とっても美味しいね~」と言いながら食べている。
そんな子供達の様子を見ながら、私達も同じ料理を一緒になって食べ始めた。
兄達はお腹が空いていたらしく、自分で焼いたちょっと焦げたナンも気にしていないみたいだった。
近くに居る子供達の様子を微笑ましく見ていたので、2人が子供が作れない事を失念していた事に気付く。
あぁ、これは私にもどうにも出来ない問題だわ。
やっぱり子供が欲しいわよね。
養子を貰って育てる方法もあるけど、2人は料理が全く出来ないのだ。
私が子供に大きくなるまで作ってあげる事は無理だし……。
やはり2人には料理を覚えてもらう必要がありそう。
料理を粗方食べ終える頃、カット済みの桃を各家に配っていった。
滅多に食べる事が出来ない生の果物を食べて、子供達の表情は蕩けそうになっている。
甘くてジューシーな桃は、文字通りご褒美に相応しいデザートとなった。
子供達がプレゼントのお礼にと言って、冒険者になってから覚えた剣舞を見てほしいと言う。
これは冒険者ギルドが無料で講習をしているらしい。
へぇ~、そんな講習があった事なんて知らなかったな。
まだ体が充分に出来ていないから、その演武は大人達と比べると拙い物ではあったけれど、成長した姿を見せたかったんだろう。
一生懸命踊る姿に、私達は惜しみない拍手を送った。
路上生活をしている子供達を何とかしてあげたくて始めた支援だったけれど、こうして確実に成長した姿を見る事はとても嬉しかった。
思えば串焼き1本からのスタートだ。
あの頃、私の1日の収入は僅か鉄貨2枚(200円)。
そう考えると感慨深いものがある。
思い切って支援を始めて本当に良かった。
自己満足じゃなく、子供達が笑顔になれたのは私が一歩踏み出したからだろう。
それが町中からの支援に繋がったのは、サヨさんが言う通り誇って良い事かも知れない。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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12時を告げる教会の鐘の音が鳴ると、仕事を終えた子供達が続々と集まってくる。
この世界の人達(貴族はどうか知らない)は時計を持っていないので、大抵教会の鐘の音に合わせて行動していた。
私は昼食の前にまずプレゼントを渡す事にする。
「皆久し振りだね~、元気にしてた? 今日は私との【約束】を守ってくれているご褒美にプレゼントを持ってきました。まずは年齢の小さい子順に並んでくれるかな?」
「プレゼント? 今日はご馳走以外にも何か貰えるの?」
早く食べたそうにしている男の子が不思議そうに私を見る。
「そうよ。皆が寒くないように色々持ってきたの」
「ふ~ん。じゃあ年齢順に並ぶね~」
マントくらいしか、防寒着を知らないのでピンとこないようだ。
子供達に年齢の低い順に並んでもらい、1人1人にスヌード・耳当て・腹巻・ポンチョを手渡していく。
初めて見る防寒着&防寒具に子供達は不思議そうな顔をしていた。
プレゼントを受け取った子供達に兄と旭が、使い方を実演してみせている。
特に耳当ては変わった形状をしているので、見ただけでは何に使用するか分からないだろう。
兄と旭の使い方を見て、子供達も真似を始める。
「わぁ~ふわふわだぁ、耳と首がとっても暖かい! これは何の毛皮なの?」
「それはワイルドウルフの毛皮よ。お姉ちゃんが、迷宮ダンジョンで沢山狩ってきたんだから!」
「え? お姉ちゃんが狩ってきた魔物で作ったの?」
「そうよ~。私達はB級冒険者ですからね!」
驚いてほしくて胸を張って答えると、子供達が一斉に私に注目した。
「B級!? もう上がったの? だってまだ5年経ってないよね?」
「迷宮都市の冒険者ギルドでスキップ申請したのよ~」
「凄いや! プレゼントありがとう~!」
「寒い日に腹巻をお腹に巻いて寝るんだよ」
「うん、分かった~」
子供達は渡したプレゼントを大事そうに両手で抱えると、食事をする時に汚してしまったら大変だから一度家に持って帰りたいと言う。
確かに邪魔になるので、プレゼントを置いて食器を持ってきてほしいと伝えた。
子供達が戻ってくる前に『シチュー』を温め直し、キッシュを人数分にカット。
『フィッシュバーガー』を作る。
ソースをどちらにしようか迷ったけど、この場所には子供達しか居ないので『トマトソース』と『タルタルソース』の両方をかける事にした。
戻ってきた子供達から順に昼食を渡していく。
『キッシュ』と『フライドポテト』は1枚の皿に盛って出す。
今日の昼食は、かなりボリュームがある。
全ての子供達に行き渡ると全員で食事前の挨拶だ。
「頂きます」
「頂きます!」
まず最初に子供達が口をつけたのは、迷宮サーモンの『フィッシュバーガー』。
一番目立つからね。
一口食べた子供達の表情が変わる。
「美味し~い! これ何のお肉なの!?」
食べた事の無い味に皆ビックリして目がまん丸だ。
「それは迷宮サーモンっていう魔魚だよ」
「魔魚! 僕初めて食べるよ~」
それからは皆、料理を食べる事に一生懸命だ。
小さな口をモグモグと動かし食べる姿は、ちょっとハムスターに似て可愛らしい。
同じ家の子供達と料理の感想を言い合いながら笑顔一杯になっている。
スープの色が白い事に驚いて、飲んだ後には味の違いに2度驚く。
牛乳をたっぷり入れた『シチュー』は大好評だった。
カリカリの『フライドポテト』も『キッシュ』も、口々に「とっても美味しいね~」と言いながら食べている。
そんな子供達の様子を見ながら、私達も同じ料理を一緒になって食べ始めた。
兄達はお腹が空いていたらしく、自分で焼いたちょっと焦げたナンも気にしていないみたいだった。
近くに居る子供達の様子を微笑ましく見ていたので、2人が子供が作れない事を失念していた事に気付く。
あぁ、これは私にもどうにも出来ない問題だわ。
やっぱり子供が欲しいわよね。
養子を貰って育てる方法もあるけど、2人は料理が全く出来ないのだ。
私が子供に大きくなるまで作ってあげる事は無理だし……。
やはり2人には料理を覚えてもらう必要がありそう。
料理を粗方食べ終える頃、カット済みの桃を各家に配っていった。
滅多に食べる事が出来ない生の果物を食べて、子供達の表情は蕩けそうになっている。
甘くてジューシーな桃は、文字通りご褒美に相応しいデザートとなった。
子供達がプレゼントのお礼にと言って、冒険者になってから覚えた剣舞を見てほしいと言う。
これは冒険者ギルドが無料で講習をしているらしい。
へぇ~、そんな講習があった事なんて知らなかったな。
まだ体が充分に出来ていないから、その演武は大人達と比べると拙い物ではあったけれど、成長した姿を見せたかったんだろう。
一生懸命踊る姿に、私達は惜しみない拍手を送った。
路上生活をしている子供達を何とかしてあげたくて始めた支援だったけれど、こうして確実に成長した姿を見る事はとても嬉しかった。
思えば串焼き1本からのスタートだ。
あの頃、私の1日の収入は僅か鉄貨2枚(200円)。
そう考えると感慨深いものがある。
思い切って支援を始めて本当に良かった。
自己満足じゃなく、子供達が笑顔になれたのは私が一歩踏み出したからだろう。
それが町中からの支援に繋がったのは、サヨさんが言う通り誇って良い事かも知れない。
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