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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第385話 ガーグ老 2 御子の失踪&300年後の姿
御子の姿が消えた事を、最初に気が付いたのは王だった。
「赤子の姿が見えないが、誰が面倒をみている?」
問われた女官達が御子を寝かせていた場所を見て騒ぎ始める。
儂が慌てて警護をしている影衆に確認するも、御子は確かに数分前までその場所に寝かされていたという。
では、御子は何処に消えたのだ?
産まれたばかりで、まだ立つ事さえ出来ぬのだぞ?
王の一言から、女官・侍女・我々影衆の者が一斉に捜索を始めるも、消えた御子の姿は見付からない。
数時間が過ぎる頃には、姫様の逝去と御子の失踪が重なり女官と侍女達が精神的疲労からその場で崩れ落ちてしまった。
さめざめと泣く彼女達を横目に、王とその側近・儂らで引き続き森中を探し回る。
夜が明けても御子は見付からず、王は一旦捜索を中止し第2王妃の葬儀を行うと宣言した。
翌日――。
姫様は国葬を行われる事もなく、ひっそりと傍付きの者達だけに見送られた。
王が聞いた遺言では、埋葬ではなく火葬にし遺灰は森に撒いてほしいと言われたそうだ。
エルフの王族に墓がないとは……。
本来ならばそのご遺体は本国に帰還させ、王族の霊廟に安置する事が当然であったが、他国に嫁いだならばそれもまた本望であったろう。
王宮ではいつも、「私は鳥籠の鳥のようね。自由が無いんだから……」と寂しそうに空を眺めていらした。
カルドサリ王国に来てからは本当に楽しそうな様子で、王と城下にお忍びで出掛ける事も多かった。
何故か行先は酒場であったが……。
酌婦の胸元に、気前よく金を与えてもいた。
一体、どこでそんな事を覚えてきたのか……。
姫様の思い出が次々と蘇える。
300年、一時もお傍を離れずにお守りした儂の小さな姫様。
成長するに従って、じいじから爺へその後はガーグ老と呼び名が変化した。
それでも儂にとってはじいじと呼んでくれた頃の小さな姫様のままであった。
多少、口が悪かろうがやんちゃで手のかかる大切な姫様。
気が付けば、目から涙がとめどなく溢れておった。
儂の両肩に止まる姫様の従魔だった『ポチ』と『タマ』も、寂しそうに項垂れてしまっている。
たとえ権限を譲渡されても、以前の主人の事は覚えているのだろう。
最後に姫様の遺灰を皆で森に撒いた。
閉じ込められていたエルフの国ではなく、自由に生きられたカルドサリ王国を終の棲家としたのか……。
王が赤子は神隠しにあったのだと言った。
神隠し……。
エルフの国においても、昔から言い伝えがある伝承の類だ。
こちらは神隠しではなく、精霊の愛し子として赤子が姿を消す事象であったが。
そもそも、この森には世界樹の精霊王の結界が張られているのだ。
不審人物など入る余地はない。
王は赤子の事は諦めたようである。
姫様の散骨が済んだ後、王宮に戻っていった。
だが儂は王のように諦める事なぞ出来ぬ。
姫様が命懸けで産んだ御子だ。
絶対に探し出し本国に連れて帰ろう。
それまで儂はこの地に留まる事を決めた。
事の経緯を記した手紙を本国に向けて送り、そこに責任を取って影衆当主の座を降りる事も併せて書いておいた。
それから儂と共に残ってくれた影衆達と、御子の捜索を始める。
ただ闇雲に探すのは時間が掛かり、噂を聞いて駆けつければ誤報ばかりだった。
カルドサリ王国周辺の国にまで赴き必死に探し続けたが、御子の姿を見付けることは叶わない。
1年・10年・100年・200年・300年……と時だけが過ぎていく。
もう儂も既に1,100歳を超える。
いくらLvを100に上げたからとて元はエルフの身、残った者達も800歳を超えていた。
皆そろそろ寿命が尽きる頃だ。
このまま最後まで姫様の産んだ御子に会う事は出来ぬのか……。
半ば諦めかけた頃、カルドサリ王国で諜報員をしているカマラに預けた『タマ』が儂の所にやってきた。
足に付いている丸筒から小さな羊皮紙を取り出すと、なんと御子発見の報が書かれているではないか!?
儂は急いで返信を書き『タマ』を送り出した。
現在居る場所はカルドサリ王国の王都だ。
ここから迷宮都市まで馬で行けば1週間。
逸る気持ちを抑えながら、迷宮都市へとひた駆ける。
1週間後。
商業ギルドに居るカマラから、御子の事を聞き出した。
御子は姫様によく似ているらしい。
お会いすれば直ぐに分かるという事だった。
今は3人でダンジョンを攻略中だと言う。
エルフの王族が冒険者の真似事をするとは……。
カマラは実際に御子と直接会ったので、嘘ではないだろうが俄かには信じがたい。
儂らは迷宮都市に滞在し、御子がダンジョンから帰還する金曜まで辛抱強く待った。
そして運命の日――。
金曜の夕方、冒険者ギルド内で『迷彩』を用い待機していると、そこに姫様とそっくりな御子が2人の少年を伴って現れた。
あぁ、姫様!
やっと、忘れ形見を見付けました!
300年も掛かってしまったが、目の前にちゃんと生きておられる。
御子は300歳の筈だが、何故か人族の12歳頃の姿をしていた。
そして少々、胸を盛っていらっしゃる?
エルフはスレンダーな種族だ。
それはハイエルフである王族にも同じ事がいえる。
お年頃故、見栄えが気になるのだろう。
それよりも傍らに居る少年2人の素性を、早急に調べなければならん。
1人は見た目がハーフエルフの若者だ。
整った容姿で背が190cmくらいはあるだろうか?
もう1人は完全に人族の少年の姿をしている。
こちらは背も低く、御子と同じくらいの年齢に見えるが……。
後でカルドサリ王国の諜報を任されているマケイラ家のガリアに連絡を取ろう。
儂は、お健やかに育った御子を見る事が出来て胸が一杯になる。
この300年、何度ももう生きてはいないかも知れぬと不安に思ったものだ。
しかし、冒険者というのは6人パーティーを組むのが普通ではないのか?
何故、3人だけしかおらぬのだ。
人族の冒険者の基準が分からぬため、その実力が測れない。
その後、御子が何処に住んでいるか確認しようと冒険者ギルドを出た後も付いていったが、3人の姿が目の前で忽然と消えた。
まさかっ!
御子は存在を秘匿された御方であるのか!?
これはいかん。
既に引退した儂らでは御子を守り通す事が出来ぬ。
本国から影衆当主率いる、50人の『万象』を呼び寄せなくてはならない。
時空魔法の使い手が誕生するのは、実に1,200年振りであった。
この報は、ナージャ王国に僥倖をもたらすものになろう。
エルフ国の最後の砦。
秘匿された御方とは、まさにそういった至高の存在であるのだ。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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問われた女官達が御子を寝かせていた場所を見て騒ぎ始める。
儂が慌てて警護をしている影衆に確認するも、御子は確かに数分前までその場所に寝かされていたという。
では、御子は何処に消えたのだ?
産まれたばかりで、まだ立つ事さえ出来ぬのだぞ?
王の一言から、女官・侍女・我々影衆の者が一斉に捜索を始めるも、消えた御子の姿は見付からない。
数時間が過ぎる頃には、姫様の逝去と御子の失踪が重なり女官と侍女達が精神的疲労からその場で崩れ落ちてしまった。
さめざめと泣く彼女達を横目に、王とその側近・儂らで引き続き森中を探し回る。
夜が明けても御子は見付からず、王は一旦捜索を中止し第2王妃の葬儀を行うと宣言した。
翌日――。
姫様は国葬を行われる事もなく、ひっそりと傍付きの者達だけに見送られた。
王が聞いた遺言では、埋葬ではなく火葬にし遺灰は森に撒いてほしいと言われたそうだ。
エルフの王族に墓がないとは……。
本来ならばそのご遺体は本国に帰還させ、王族の霊廟に安置する事が当然であったが、他国に嫁いだならばそれもまた本望であったろう。
王宮ではいつも、「私は鳥籠の鳥のようね。自由が無いんだから……」と寂しそうに空を眺めていらした。
カルドサリ王国に来てからは本当に楽しそうな様子で、王と城下にお忍びで出掛ける事も多かった。
何故か行先は酒場であったが……。
酌婦の胸元に、気前よく金を与えてもいた。
一体、どこでそんな事を覚えてきたのか……。
姫様の思い出が次々と蘇える。
300年、一時もお傍を離れずにお守りした儂の小さな姫様。
成長するに従って、じいじから爺へその後はガーグ老と呼び名が変化した。
それでも儂にとってはじいじと呼んでくれた頃の小さな姫様のままであった。
多少、口が悪かろうがやんちゃで手のかかる大切な姫様。
気が付けば、目から涙がとめどなく溢れておった。
儂の両肩に止まる姫様の従魔だった『ポチ』と『タマ』も、寂しそうに項垂れてしまっている。
たとえ権限を譲渡されても、以前の主人の事は覚えているのだろう。
最後に姫様の遺灰を皆で森に撒いた。
閉じ込められていたエルフの国ではなく、自由に生きられたカルドサリ王国を終の棲家としたのか……。
王が赤子は神隠しにあったのだと言った。
神隠し……。
エルフの国においても、昔から言い伝えがある伝承の類だ。
こちらは神隠しではなく、精霊の愛し子として赤子が姿を消す事象であったが。
そもそも、この森には世界樹の精霊王の結界が張られているのだ。
不審人物など入る余地はない。
王は赤子の事は諦めたようである。
姫様の散骨が済んだ後、王宮に戻っていった。
だが儂は王のように諦める事なぞ出来ぬ。
姫様が命懸けで産んだ御子だ。
絶対に探し出し本国に連れて帰ろう。
それまで儂はこの地に留まる事を決めた。
事の経緯を記した手紙を本国に向けて送り、そこに責任を取って影衆当主の座を降りる事も併せて書いておいた。
それから儂と共に残ってくれた影衆達と、御子の捜索を始める。
ただ闇雲に探すのは時間が掛かり、噂を聞いて駆けつければ誤報ばかりだった。
カルドサリ王国周辺の国にまで赴き必死に探し続けたが、御子の姿を見付けることは叶わない。
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もう儂も既に1,100歳を超える。
いくらLvを100に上げたからとて元はエルフの身、残った者達も800歳を超えていた。
皆そろそろ寿命が尽きる頃だ。
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半ば諦めかけた頃、カルドサリ王国で諜報員をしているカマラに預けた『タマ』が儂の所にやってきた。
足に付いている丸筒から小さな羊皮紙を取り出すと、なんと御子発見の報が書かれているではないか!?
儂は急いで返信を書き『タマ』を送り出した。
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◇小説家になろうでも同時連載中です◇