自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第430話 迷宮都市 地下14階 呪具発見

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 昼食後テントから出ると、安全地帯では2パーティーがまだお昼を食べている最中だった。

 今日はいつもより早く攻略を引き上げたから、少し時間がズレているみたい。
 ダンクさんのパーティーは『お好み焼き』、アマンダさんのパーティーは『焼うどん』を食べている。

 ダンジョン内の食事改善に、ケンさんとリリーさんが張り切っているようだ。
 早くなくなりそうだから、『ソース』を陶器の壺に入れ替えておかないと。

 テントの外で待っていたフォレストに乗って、兄が移動を開始する。
 旭は、また川の方面に走り出していった。

 私は2人を見送り、再びテント内に戻る。
 少し魔物分布を確認しておきたい。

 ホームに帰ってしまうと、ダンジョン内の調査が出来ないんだよね~。
 まずは地下14階から始めよう。

 トレントの森にいる2匹の迷宮タイガーを瞬殺して収納し、周辺を探っていく。

 トレントの森はいつも通り?
 あぁ、今日はかなり奥にマンゴーが生っているなぁ。
 迷宮タイガーも数が増える事なく2匹しかいない。

 フォレストウサギは、地下14階に沢山いるので判断が付かなかった。
 キラープラントが集団でいる所を発見。

 これは明らかにおかしい。
 この魔物は、集団行動を取ったりしないはずなのに……。
 やはり魔物寄せを誰かが使用したのだろうか?

 冒険者が怪我をする前に、私の方で処理しアイテムBOXに収納。
 大量発生の理由が知りたくて、私はキラープラントがいた場所にシルバーと移転した。

 20匹程のキラープラントを引き寄せていた原因を調べるため、地面を見ながら慎重に歩いていくと10分後に不思議な物が地面に落ちているのを発見する。

 それはテニスボールくらいの大きさをした、赤紫色の丸い玉だった。
 こんな色の魔石は見た事がないし、その色がどんどん薄くなっていくのも奇妙に思える。

 私は不審に感じたので、手を触れたりはせずアイテムBOXに収納した。
 そして3mくらい離れた場所に、赤緑色の物と黒色の丸い玉も見付けた。

 それぞれ玉が置いてある地点を結ぶと三角形になる。
 どう考えても不自然だった。

 こちら2つの丸い玉も回収し、再びテント内に移転する。
 キングビーとクインビーについては、今の所変化は見られない。

 地下13階をのぞくと、迷宮ピーコックだけが異常に多い。
 私は魔物を瞬殺して収納後、地面を拡大してみた。

 するとやはり丸い玉が3ケ所に置かれている。
 しかし色は無色であったので、普通に攻略していたら気付かないだろう。
 こちらも証拠として回収しておいた。

 怪しすぎる……。

 地下14階・13階に仕掛けがあるのなら、地下12階以上の階層にも同様に丸い玉が置かれている可能性が高い。

 魔物寄せと効果が一緒なら、冒険者達が危険だ。
 これは私の手に負える問題じゃないと判断し、地下13階で果物を収穫している兄の下へ移転した。

 以前突然現れたら驚くだろうと怒られたので、今回は兄の2m前方に出現する。
 先程別れたばかりの私の姿を見付けて、兄が怪訝けげんそうな表情になった。

「お兄ちゃん大変! 誰かが、ダンジョン内に変な物を置いてる。魔物が増えているのは、きっと丸い玉の所為せいだよ!」

「沙良、もう少し分かるように話せ」

「うん。やっぱり魔物の数が増えている事が気になったから、地下14階と地下13階をテントの中でマッピングを使用して調べてみたの。地下14階ではキラープラントが、地下13階では迷宮ピーコックが集団発生してた。おかしいと思って地面を調べたら、3角形になるように地面に丸い玉が置いてあったんだよ! どう考えても変でしょ? これ以上1人で調べるのは危険だと思い相談しにきました」

「分かった、旭とすぐに合流しよう。沙良、今回は報告が早くて助かった。いつもこうだと、俺も安心出来るんだがな……」

 一言余分な兄の台詞はスルーして、地下14階の川でサンダーボールを楽しそうに撃っている旭を回収する。

 2人にはフォレストの背に乗って安全地帯まで戻ってもらい、私はテント内に1人で移動。
 数分後、テント前に到着した兄達を迎えるためにテントから出ていった。

 ダンクさん達はまだ攻略中なので、ここにいるのはアマンダさんのパーティーだけだ。
 私が貸した普通のテントには使用者登録がないので、外から少し大きな声を掛ける。

「沙良です。ケンさん、ちょっといいですか?」

「サラちゃん? ああ、今出ていくよ」

 本当はクランリーダーのアマンダさんの方が持っている情報が多いかも知れないけど、彼女は今体調を崩して寝ているから負担をかけられない。

 でも最終攻略組であったパーティーメンバーなら、何か知っているかもと聞いてみる事にした。
 ケンさんがテントから出て来ると、時間が惜しいとばかりに私は話を切り出す。

「地下14階にキラープラントが異常発生していたので全滅させたんですが、地面にこれが落ちていたんです」

 そう言って色の付いていた方の丸い玉を3個、アイテムBOXから手に触れないよう取り出し地面に置いた。

 すると、瞬時に丸い玉は無色になる。
 私は内心の驚きを隠してケンさんに尋ねた。

「これが何か分かりますか? もしかして魔物が増えている原因に関係しているのかと思って……。実は地下13階にも、兄が同じ玉を3個見付けたんです。こちらは既に色はありませんでした」

 最初に置いた場所から30cm程離して、3個の玉をアイテムBOXから取り出す。

 それを見たケンさんの表情が、みるみるうちに険しいものに変化していった。

「リーダーを呼んでくるから待っていてくれ」

 やはり、彼はこの丸い玉の存在に何か心当たりがあるようだ。
 そして具合の悪いリーダーを呼び出すなんて、尋常じゃない。

 わずか数分で、顔色が真っ青になったアマンダさんがテントから出てきた。
 挨拶も交わさず、無言で地面に置かれた6個の丸い玉をにらみ付けている。

「サラちゃん、お手柄だ。一体なんでこんな物騒な物がダンジョンに……。無色になった物は効力を失っているから、もう仕舞っても大丈夫だよ。ちょっと外で話す話題じゃないから、サラちゃん達のテント内で話そう」

 テント前まで移動すると、アマンダさんは解体ナイフを取り出して豪快ごうかいに親指を切った!
 いやいや、魔石に垂らす血の量は、ほんの一滴で充分ですよ!?

 ボタボタと垂れる血液を魔石に登録している間に、旭があわててヒールを掛ける。

「おや、ありがとうね」

 冒険者はよく怪我をするから、痛みにも慣れているんだろうか?
 まぁ大抵の傷はポーションを掛ければ治るので、怪我をする事に鈍感になっているのかも知れないけど……。

 ケンさんは普通に指を針で刺していたから、性格に因る違いが大きいのかなぁ。

 5人一緒にテント内に入ると、荷物一つ置いていない状態を見てアマンダさんが目をまたたかせていた。
 普通は、ここで寝泊まりするからマジック寝袋なんかがあるのだろう。

 話が長くなりそうなので、6人掛けのテーブルと椅子を出し全員に座ってもらった。

「サラちゃん達が見付けた玉は、人為的にスタンピードを起こす呪具じゅぐだ。ケンから聞いたけど、最初に取り出した時は色が付いていたんだって? きっと安全地帯で取り出したから、効力を失ったんだろうね。その呪具は禁制品の中でも持っているだけで処刑される程、効力が高い。今回使用したのは、赤紫・赤緑・黒だったようだから効果は6時間くらい続く物だ。これが全て黒色の場合は1日中効果が出る」

「具体的に、どんな効果があるんですか?」

「三角形に設置した呪具の中に魔物が入ると、同種の魔物の出現率が跳ね上がる。逆に言うと設置場所が悪ければ魔物が中に入らず、半日後効力を失ってただの置物に変わるんだよ」

 魔物寄せとは違い同一の魔物を引き寄せるのではなく、出現率を上げる効果があるのか……。

 それは非常に危険だ。

 人為的にスタンピードを起こす事が出来るという話にもうなずける。
 今回私が発見した呪具の範囲には、1種類の魔物しか入らなかったんだろう。

 もし、この呪具を設置した中に複数の魔物が入ってしまったらと思うとゾッとした。

「じゃあ誰かがこの呪具を、人知れずダンジョン内のどこかに設置して回っているって事ですよね?」
 
「あぁ、かなり危険な行為だから多分犯人は複数だろう。しかも冒険者の中にいるって事が問題だ」

「ダンジョンには、C級冒険者以上じゃないと入れませんからね。それで、その呪具の効果を消す方法ってないんですか?」 

 私の質問に、アマンダさんはちらりと兄に視線を向けて言う。

「……ひとつだけ方法がある。これは呪具だから、浄化魔法を掛ければ一発だろう」

 あぁ、リッチのマントと同じなんだ。

 浄化かぁ~。
 兄と旭はマッピングを使用出来ないから、全階層を見て回るのは大変そう。

 浄化と言えば、『毒消しポーション』でも玉に掛ければ効果は消えるのかしら?

「アマンダさん、今日から『毒消しポーション』の販売が開始されたんですけど……。それキングビーに刺された治療が出来る物なんです。薬師ギルドからダンジョン内で販売してもいいと許可をもらいました。実は、ポーションに浄化を掛けているんですよね。これって、呪具の浄化に使用出来ませんか?」

「はあっ!? 『毒消しポーション』だって!?」

 数時間前に、ダンクさんと同じ遣り取りをしたなぁ~。
 私は驚愕きょうがくしている2人を見ながら、そんな事をぼんやりと思ったのだった。

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