自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
330 / 781
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第456話 迷宮都市 『製麺店』のボーナス支給&寂しい夜

 母子が発表する木琴の演奏も確認出来たし、ボーナス支給も済んだので私達は『肉うどん店』を後にした。
 その後は、『製麺店』に寄る事にする。

「こんばんは」

 店内に入ると、従業員達が丁度夕食を食べている所だった。
 『肉うどん店』は、子供達がいるので食事の時間が早いのだろう。

「オーナー、食事中ですみません」

 そう言いながら、席を立ったバスクさんに謝られてしまった。
 突然行った私達のタイミングが悪いだけなので、こちらの方こそ申し訳ない気分になってしまう。

「あっ、どうかそのまま食事を続けて下さい。空いているテーブル席を貸してもらいますね」

 現在時刻は19時だ。

 兄達もそろそろお腹が空いている頃かしら?
 どうせこの後、飲みに行くだろうから量は少しでいいか。

 私はアイテムBOXに収納してある、『ナン』を使用したカツサンドを取り出しそれぞれ皿に2枚ずつ置いた。
 『シチュー』をスープ皿に入れ、紅茶と一緒に私達も夕食を食べる事にする。

 先に食べていた従業員達と簡単なメニューにした私達の食事は、ほぼ同時に食べ終わる事が出来たようだ。

「皆さん、店の従業員としてよく働いて下さりありがとうございます。今日は、『ボーナス』を支給しにきました」

「『ボーナス』ですか? それは一体何でしょう?」

 聞きなれない言葉に、従業員一同が顔を見合わせる。

「店の利益から、従業員に一部を還元する制度です。給料とはまた別なので、好きに使用して下さいね」

 そう言って、私から銀貨20枚(20万円)入った小袋を一人一人手渡す。
 『肉うどん店』と『製麺店』の給料は月額10万円なので、2ケ月分だと20万円だ。
 
 来年の4月には昇給も考えている。
 働いた経験から、1年後に昇給がゼロだとやる気が出ないしね。

 異世界での給料事情は知らないけど、私が経営する店は好きにさせてもらおう。
 兄達も、口を挟んだりはしてこないだろう。

 受け取った小袋の中身を見て、従業員の1人が突然涙を流し始めた。

「オーナー……。俺をこの店に雇ってくれて、本当にありがとうございます。正直、利き腕を失くした所為せいでまともな仕事に就けず、一生路上生活になるかと覚悟をしていました。それなのに、住み込みで俺にも出来る新しい仕事を与えてくれた。麺職人という仕事が今では誇りになり、毎日やりがいまで感じるようになったんです。同じ境遇の仲間と一緒に働く事が、どれほど助けになっているか……。同室のこいつがいるお陰で、俺は何ひとつ不自由を感じる事がありません」

 そう言って、頭を下げる。

 足の不自由な人と手の不自由な人を同室にしたので、お互い出来る事を助け合いながら生活しているんだろう。

 でも大丈夫だよ。
 ちゃんと全員、失った部分を治してもらえるから。

 そう考えた所で、あれっ? となる。
 身体の欠損は、切り離された部分が残っていない状態では兄達には治せないはずだ。

 どうして治療が可能だと思ったんだろう?
 なんだか最近、記憶が曖昧あいまいになっている感じがする。

 確か、ガーグ老が製作した天蓋てんがい付きのベッドを見た時にも妙な既視感があった。
 これはリーシャの記憶だろうか?

「オーナー。従業員一同、お礼を言わせて頂きます。毎日食事を取る事で、冒険者時代と同じくらい体力も戻りました。そろそろ製麺の量を増やしても問題ないと思いますので、お任せ下さい」

 リーダーのバスクさんに続いて、皆がうなずきを返している。

 最近はダンジョンを攻略する冒険者達も購入しているので、住人さん達の分が不足しているかも知れないな。

「では、無理をしない範囲でよろしくお願いしますね」

「はい、これからも頑張ります。お前達、頂いた『ボーナス』は全部使うんじゃないぞ!」

 最後にバスクさんから皆に注意が飛ぶ。
 まぁ、冒険者時代に貯金をしてこなかった人達だからね。
 あれば路上生活はしなかっただろう。

 用件を済ませ、私達はホームの自宅へと戻った。
 兄達を車と一緒に希望する居酒屋に送り届けた後――。

 私は何故なぜか急に寂しくなり、リビングに2匹を入れてブラッシングをしていた。
 なんだろう突然。
 
 2人が飲みに行く事を、引き留めたいと思ってしまった。
 そばにいてほしいなんて、異世界にきて8年が経つというのに……。

 今頃、ホームシックになったのかしら?
 でもここは自分の家だし、兄も旭もいて独りじゃないのになぁ。
 
 もう直ぐ会いたかった両親にも会う事が出来る。
 何を寂しく思う必要があるんだろうか……。

 その夜、私はどうしても独りで寝るのが耐えられず、シルバーとフォレストの間に挟まり尻尾を毛布代わりにしリビングで一緒に眠る事にする。

 もふもふの毛を触りながら、あの子達の体はどんどん大きくなるので育てるのが大変だったなぁと思いながら意識が薄れていく……。

 うんん?
 これは双子達の事かしら……。

 子供の成長は早いけど、あの2人はそんなに大きく育ったと感じない。
 容姿も体型もどちらかというと女性に近い。

 この記憶の齟齬そごはいつから?
 考えようとすると、頭にもやがかかったようになる。

 2匹の体温で体がポカポカする事もあり、私はそのまま眠りに落ちてしまった。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
感想 2,669

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

家ごと異世界ライフ

もちもちほっぺ
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。 七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!! 初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。 2024年5月 書籍一巻発売 2025年7月 書籍二巻発売 2025年10月 コミカライズ連載開始

転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~

結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』 『小さいな』 『…やっと…逢えた』 『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』 『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』 地球とは別の世界、異世界“パレス”。 ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。 しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。 神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。 その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。 しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。 原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。 その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。 生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。 初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。 阿鼻叫喚のパレスの神界。 次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。 これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。 家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待! *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈ 小説家になろう様でも連載中です。 第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます! よろしくお願い致します( . .)" *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろうでも同時連載中です◇