自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第550話 椎名 響 28 消えた娘の捜索

 ガーグ老達がくるまでに、まずは先立つものが必要だ。
 お忍びで冒険者をした時、貯めたお金を部屋の隠し扉から取り出す。
 実は、この扉から王宮へと続く秘密の通路にいける。
 最終的には王の書斎に通じる道だ。
 今は必要ないが、いずれ役に立つ日がくるかもな……。

 それから王都が詳細に描かれた地図を広げ、沙良の居場所を予想する。
 もし子供が連れ出したのなら、娘は意識がない状態かも知れない。
 近くに仲間がいる場所まで案内しただけなのか?
 騒がれるのを防ぐため、一緒に連れ去られてしまったのか……。

 子供が巻き込まれたかどうかで、沙良の行動は大きく制限される。
 人質を取られている状態だと迂闊うかつな真似は出来ないだろう。
 意識のない少女を運ぶには、人目に付かない馬車が必要だ。
 だが武器屋の近くに馬車は止まっていなかった。

 他に考えられるのは、騎獣か……。
 しまったな、シルバーと泰雅たいがを連れてくれば良かった。
 テイムされた従魔は主人の居場所が分かるから、直ぐに沙良を発見出来たのに……。
 今日は奏屋かなでやとガーグ老の家具工房へいくだけの心算つもりだったから、2匹を置いて出掛けたのが悔やまれる。

 沙良を見失って30分。
 馬車ならまだ王都内にいるはずだ。
 騎獣は魔物の種類に依って速度が変化するが、それでもまだ王都を出てはいないだろう。
 今回の件は、アシュカナ帝国の仕業しわざじゃないと踏んでいた。
 沙良は迷宮都市にいると知っているからだ。
 だから、これは事前に計画された犯行ではない。
 王都で沙良の姿を見掛け、目を付けられたのだと思う。

 次に足を確保しようと、マジックバッグ100㎥に必要な物を詰め込み家の外へ出る。
 すると突然、庭にガーグ老達影衆が姿を現した。
 やけに早いな!
 総勢20名、その中には現当主の姿もある。
 ドラゴンへ変態した2匹の背中に乗ってきたんだろう。

「待たせた王よ! して状況を確認したい。御子が連れ去られて、どれくらいだ?」

 ガーグ老から、無駄な言葉を省き単的に質問された。
 俺はドワーフの鍛冶職人がいる店を出た直後、娘が消えて30分程だと話す。
 その際、娘が男の子に声を掛けられた件も伝えておいた。

「子供か……。御子は子供には甘いでの、全く警戒せんかったのだろう。所で王よ、何のために通信の魔道具を渡したと思っておるのか? 王都へいくなら、事前に連絡をしてくれねば困る。それに、どうして従魔を連れておらぬのだ。おれば、御子をみすみすさらわれる事もなかったであろうに」

 ガーグ老から苦言をていされ、その通りだった俺は返す言葉もない。

「悪かった、俺のミスだ。それで聞きたいんだが、ポチとタマに娘を追跡するのは可能か?」

 いつきの娘である沙良は、母親と魔力が似ているかも知れない。
 現在の主人はガーグ老だが、もともと樹の従魔達である。
 
「そう思い、現在捜索を任せておるわ。御子の魔力は覚えておろう。魔力封じの魔道具を付けられていなければ、見付けられると思うが……」

 そこで、ガーグ老の顔に焦りが浮かぶ。
 娘の姿は、どう見ても貴族出身である。
 魔法を使用出来ると分かれば、魔力封じの魔道具で拘束されている可能性が高い。
 ならば敵を無力化するドレインの魔法は、使用不能かもしれないな。

 時空魔法は使えるのか?
 いや、あれも魔力が必要だろう。
 娘が自力で戻るのは難しいか……。

「現在、王都にいるマケイラ家の諜報ちょほう員に連絡し、御子の目撃情報を集めておる。ここは連絡がくるまで待つ方が懸命であろう」
 
 ガーグ老から、無暗に動き回らない方がいいと言われる。

「では、家で待機する。直ぐに動けるよう、馬か騎獣の手配をしてくれないか?」

 俺の言葉に、三男役の影衆がうなずき塀を乗り越えていった。
 俺達は家の中に入り連絡を待つ事にする。
 その間、今回の犯人像を話し合った。

 やはり、ガーグ老もアシュカナ帝国である可能性はないと言う。
 背が低く見た目が幼い美少女を、簡単にさらえると思ったんだろう。
 だとすれば、犯人の割り出しは難しい。
 貴族の好事家ならば、王都の家に隠すかも知れないが……。
 奴隷商が相手の場合、足が付かないよう王都を出て直ぐにでも場所を移すに違いない。

 俺達は発見の報告をじりじりと待つ。
 意識のない娘がひどい仕打ちを受けていたらと思うと、気が気じゃなかった。
 しばらくして、不意にガーグ老が顔を上げる。
 2匹からの連絡だろうか?

「王よ、御子の現在地が分かった。この場所に見覚えは?」

 そう言って、ガーグ老が地図にある屋敷を指す。
 ここは……!?
 どういった偶然なのか、それは第一王妃の没落した生家だった。

 まさか、此度こたびの一件は怨恨えんこんの可能性が?
 当時3歳だった第一王妃の息子は300年経った今、生きてはおるまい。
 では母親を殺された息子の怨嗟えんさの声を受けて育った、息子の系譜けいふによる仕業だろうか……。
 嫌な予感がして、背中にじっとりと汗をく。
 俺はかすれた声になり、知っている事を告げた。

「そこは第一王妃の生家だった屋敷だ」

「……急ぎ向かわねば、御子に命の危険がしょうじよう」

 全員が無言で家から出る。
 既に人数分の馬と騎獣が準備されていた。
 俺は迷わず、騎獣であるバイコーンに飛び乗り貴族街へと向かう。

 あぁ、沙良……。
 こんな所で、過去の因縁いんねんがお前に降りかかるとは!
 今、助けにいくからもう少し頑張ってくれ!

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