自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第587話 迷宮都市 行方不明の子供達 2

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 炊き出しは母親達に任せ、私と父の2人で従魔に騎乗し冒険者ギルドへ向かった。
 残りのメンバーは、他の子供達が変に思わないよう家で待機してもらう。

 冒険者ギルドの受付嬢へ、ギルドマスターに会いたい旨を告げると直ぐに会議室へ案内される。
 数分後、オリビアさんが入ってきた。

「取り急ぎ用件を伝えます。アマンダさんが保護している子供達が誘拐されました。犯人から身代金の要求があります」

 私は挨拶する時間も惜しいとばかりに、口を開き話を伝える。
 そして犯人が書いたと思われる羊皮紙を、オリビアさんへ渡した。

 文面を見るなり彼女の表情が変わる。

『7人の子供を預かっている。返してほしければ、1人金貨30枚(3千万円)を用意しろ。12時の鐘の音が鳴ると同時に、金貨が入った袋を広場にある木の下へ置け。金を確認した後で子供達は返す。直ぐに用意出来ない場合、全員殺す。』

 身代金の要求金額は金貨30枚×7人で210枚(2億1千万円)。
 1人ずつ要求したのは、全員の親が違っていると思ったから?

 羊皮紙が家の前に落ちていたなら、同じ家に住んでいると分かりそうなものだけど……。
 犯人は下準備もなく、犯行に及んだのだろうか?

 しかし最後の一文は看過かんか出来ない。
 身代金目的の誘拐なのに、お金の準備が間に合わなければ直ぐに殺すとある。
 普通は少しでも、お金を手に入れたいと思うのでは?
 文面からは、交渉の余地が一切感じられなかった。

「分かりました。子供達は冒険者登録済みですよね? ギルドの方で動きます。サラさんは、これからどうされますか?」

「よろしくお願いします。私も、少し調べてみます。アマンダさんが衛兵所へ連絡に行っていますから、ギルドと連携を取った方がいいかも知れません」

「はい、そうした方がいいでしょう」

 今回は誘拐されたのが冒険者だから、領主と同様の権限を持つオリビアさんが動いてくれるらしい。
 これが他領だと、簡単にはいかないだろうな。

 冒険者ギルドを出ると、再び家へ向かった。
 犯人が動きをみせる12時までに、出来れば子供達を確保したい。
 お金だけ取り、子供達を返さない場合も視野に入れておかなければ……。

 門の前に知り合いが腕を組み待っていた。
 今日も護衛3人が付いている。

「教会の炊き出しへ行ったら、シスターに場所を変更したと言われた。教えてくれてもいいんじゃないか? それにしても、この家は目立ち過ぎだ!」

 久し振りに会うタケルだ。
 こんな日にくるとはタイミングが悪い……。

 まぁ彼は兄に片思いしているから、炊き出しの食料支援にかこつけて会いにきたんだと思うけどね。
 あっ旭と結婚した事を、まだ知らないかも……。

 一応、顔見知りだから父に紹介しておこう。

「お父さん。知り合いのタケルだよ。炊き出しの食料支援をしてくれているの」

「お父さん!? 初めまして、タケル・フィンレイと申します」

「あぁ、子供達の支援に感謝する」

 タケルは父を見るなり、直立不動になった。
 私達が魔法を使用するから父を貴族だと思ったのかな?
 それとも好きな人の親の前で緊張しているのかしら……。

 折角せっかくきてくれたのに門前払いする訳にもいかず、血液を登録し家の中に入ってもらった。

「従魔が増えてる!?」

 家の中に入ると、増えた従魔の数に驚きタケルが声を上げる。
 そういえば、初対面で従魔を寄越よこせと言われたんだっけ。

 タケルの姿を見て、しずくちゃんのお母さんが逃げ出した。
 
「あっ、こら待て! アリサどこに行くんだ!」

 タケルの妹である事をすっかり忘れていたよ。
 見晴らしのいい家の庭では隠れる場所もなく観念したのか、お母さんは追い掛けるタケルの前におずおずと進み出る。

「あら、ご機嫌よう。お兄様、元気でいらして?」

「何がご機嫌ようだ! 毎年、『冒険者をしています。探さないで下さい。』とだけ書いた手紙を出せば済むと思っているのか!?」

 おっと、これは修羅場になりそうだ。
 確か王都の魔法学校を卒業後、王子様の婚約者になれず政略結婚させられるかもと、家に帰らないまま冒険者になったんだよね?

 その後、娘の雫ちゃんと再会し2人で冒険者をしていたはずだ。
 旭はタケルが自分の母親に怒っている姿を見て、何とも言えない表情をしている。

 タケルからすれば、音信不通に近い妹を見付けたので家に連れ帰りたいだろう。
 でも、それだと雫ちゃんも旭も母親とは別行動になってしまうから不味い。

 取りえず子供達の前だし、2人には家の中に入り話してもらおう。
 1階には子供達がマジックテント内でまだ寝ているため、出来るだけ離れた場所で大声を出さないよう注意した。

 部外者の私がいても仕方ないから、家の問題は2人で解決して下さい。
 家の外に出ると、成り行きを見守っていた雫ちゃんと旭がやってきた。

「お母さん。家に帰っちゃうのかな? もう一緒に冒険者は出来ないの?」

 雫ちゃんは既に涙目になっている。
 異世界で再会した母親と、離れる事になるかも知れないと不安そうだ。

 私達とパーティーを組んでいると知れば、兄が好きなタケルは考えてくれるだろうけど……。
 両親とは、話し合いが必要かも?

「きっと、お母さんが一緒にいられる方法を考えると思うから心配しないでいいよ! 旭は、お兄ちゃんと結婚した事をタケルに内緒にしてね!」

「? 分かった。自分の母親がタケルの妹とか……信じたくないなぁ」

 旭は2人の姿を見て、色々と思う所があるらしい。
 親の見た目が年下で尚且なおかつ知り合いの妹の体に転移してしまったから、かなり複雑な心境のようだ。

 よく考えたら雫ちゃんのお母さんは、伯爵令嬢だったよ。

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