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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第732話 旭 樹 再召喚 26 王妃への連絡&森の家
念話の魔道具を握り締め、少し待つと相手から応答があった。
『ヒルダ……なのか?』
おや? 王妃にしては声がやけに低いな……。
いや違う、この声は3人いる兄の長男じゃないか?
『ええっと、お兄様? 連絡が遅くなりすみません。ヒルダです』
『ガーグ老から報告をもらっていたが……、本当に生きていたんだな。夫と娘には会えたのか?』
『はい。今は一緒に冒険者をしています。この魔道具は、お母様に通じるものだった筈ですが……。お母様は、いらっしゃらないのですか?』
王妃へ通じる魔道具に本人が出ないのは、どうしてなのかと思い尋ねる。
『……母は今、不在にしている』
『では戻られてから連絡を下さるよう、お伝え願います』
『あ~母は国を長期間空けているから、連絡が取れるのはいつになるか分からないんだ』
王妃が国を空ける事態って何だ? 外交は兄達の担当だ。
基本、王妃は国政に関わらない。
本人もエルフだから、他国に里帰りする必要もないし……。
非常に嫌な予感がする。
『お母様は、どの国に行かれたのですか?』
『それが……、よく分からないから困ってる』
はぁ? 一国の王妃の行方が分からないなんて、大問題じゃないか!
『お父様にも、連絡は入っていないんですか?』
『あぁ、父も知らないみたいだよ。本人は、そのうち戻ってくるだろうとあまり心配はしていない様子だけどね』
行動力のある王妃の事は、王も諦めているんだろう。
『お母様の居場所が分かったら連絡して下さい』
『そうしよう。国には、いつ戻ってくるんだい? 出来れば一度、顔を出しなさい。父も、お前の姿を見たがっているし、私達も会いたいと思っている』
まぁ、そう言われるのは当然だ。
ただ今の姿で行く訳にはいかないので、女性化した後の方がいいだろう。
『えぇ、近い内に必ず。可愛い娘も一緒に連れていきますね』
『楽しみに待っているよ』
会話を終了し、念話の魔道具を腕輪に収納する。
まさか王妃はカルドサリ王国に向かっているんじゃないよな?
それにしては、行き先も言わずに国を出るなんておかしい。
かなり母親の動向が気になったが、考えた所で何も出来ないから一旦保留にしよう。
王妃が国を空けているのは予定外だったなぁ。
でも一応、生還の連絡は入れたから目的は達成だ。
響達が戻ってくるまで、まだ時間がある。
森の家に行ってみるか。
飛翔魔法を使用するのは問題になりそうなので、ポチにグリフォンへ変態してもらい移動する。
王都には従魔も騎獣もいるから目立たないだろう。
今度は、それほど速度を出さず15分で森に到着した。
世界樹の精霊王が結界を張っている森には、許可された者しか入れない。
家が荒らされている事もないだろう。
元の姿に戻ったポチを肩へ乗せ、森の中に入っていく。
あぁ、この静謐な空気が懐かしい。
暫く森の中で佇み周囲を見渡した。
300年経っても、ここは何も変わらないな。
ティーナを妊娠し、王宮から離れ出産までを過ごした場所だ。
どんどん大きくなるお腹を抱え、泣きそうになっていたのを思い出す。
森の中央に建てられた家へ入り自室に向かい、日本語で『母子手帳』と書かれた日記帳を手に取る。
妻が妊娠した時、渡された物を真似し俺も書いていたのだ。
パラパラとページを捲り読んでいくと、当時の記憶が鮮やかに蘇る。
赤ちゃんが初めてお腹を蹴った時、性別が分かった時、名前が決まった時……。
出産後、直ぐに亡くなってしまったから、その後の娘の成長記録はない。
俺は魔道具の羽根ペンをインク壺に浸し、続きを書き出した。
【12月24日。元気な女の子を出産。
難産だったため、破水してから12時間も掛かったが産声を聞いた時は嬉しくて涙が出た。
ティーナを育てられないのを申し訳なく思う。
再会した娘が沙良ちゃんだと知り、ずっと自分の傍にいた事に安堵する。
父親の響と美佐子さんの下で大切に育てられていた。
俺は、ずっと娘の成長を見ていたんだな。
いつか俺が母親であると話せる日がきたら、この日記を渡そう。
愛するティーナ、お前が生まれてくるのを俺はずっと楽しみにしていたよ。
旭 樹】
インクが乾くのを待ち、そっとページを閉じる。
室内には、ティーナ用のベビーベッドが置かれていた。
精霊王の結界の中にあるおかげなのか、生前過ごしたままの状態が保たれている。
壁には女官長が気を利かせ、俺達2人の結婚式の様子を描いた肖像画が飾られていた。
肖像画の俺達は幸せそうに微笑んでいるが、実際は引き攣った笑顔を向けていたと思う。
かなり修正して描いたに違いない。
他には赤ちゃん用の服が何枚も揃えてある。
女の子だと知った女官達が沢山準備してくれたものだ。
綺麗なドレスは、まだ気が早いだろうと窘めたが、子供は直ぐに大きくなりますからと聞いてもらえなかった。
いや、いくらなんでもそんなに早く大きくならないだろう。
しかも俺の子供はハイエルフで成長が遅い種族だ。
12歳くらいの子供用ドレスを着られるのは、当分先だと思うぞ?
そう思っていたが、このドレスは今の娘の背丈にピッタリ合うかも知れない。
ティーナの世話をするのを楽しみにしていた女官達は、俺が亡くなり娘が行方不明になったので落胆したよな。
一緒に嫁ぎ先まで来てくれたのに、悪い事をしてしまった。
あれから近衛の女性騎士達と共に本国へ帰っているだろう。
300年経っているなら、エルフの彼女達にはもう会えない。
最後まで尽してくれた彼女達に、一言お礼を伝えたかったが……。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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『ヒルダ……なのか?』
おや? 王妃にしては声がやけに低いな……。
いや違う、この声は3人いる兄の長男じゃないか?
『ええっと、お兄様? 連絡が遅くなりすみません。ヒルダです』
『ガーグ老から報告をもらっていたが……、本当に生きていたんだな。夫と娘には会えたのか?』
『はい。今は一緒に冒険者をしています。この魔道具は、お母様に通じるものだった筈ですが……。お母様は、いらっしゃらないのですか?』
王妃へ通じる魔道具に本人が出ないのは、どうしてなのかと思い尋ねる。
『……母は今、不在にしている』
『では戻られてから連絡を下さるよう、お伝え願います』
『あ~母は国を長期間空けているから、連絡が取れるのはいつになるか分からないんだ』
王妃が国を空ける事態って何だ? 外交は兄達の担当だ。
基本、王妃は国政に関わらない。
本人もエルフだから、他国に里帰りする必要もないし……。
非常に嫌な予感がする。
『お母様は、どの国に行かれたのですか?』
『それが……、よく分からないから困ってる』
はぁ? 一国の王妃の行方が分からないなんて、大問題じゃないか!
『お父様にも、連絡は入っていないんですか?』
『あぁ、父も知らないみたいだよ。本人は、そのうち戻ってくるだろうとあまり心配はしていない様子だけどね』
行動力のある王妃の事は、王も諦めているんだろう。
『お母様の居場所が分かったら連絡して下さい』
『そうしよう。国には、いつ戻ってくるんだい? 出来れば一度、顔を出しなさい。父も、お前の姿を見たがっているし、私達も会いたいと思っている』
まぁ、そう言われるのは当然だ。
ただ今の姿で行く訳にはいかないので、女性化した後の方がいいだろう。
『えぇ、近い内に必ず。可愛い娘も一緒に連れていきますね』
『楽しみに待っているよ』
会話を終了し、念話の魔道具を腕輪に収納する。
まさか王妃はカルドサリ王国に向かっているんじゃないよな?
それにしては、行き先も言わずに国を出るなんておかしい。
かなり母親の動向が気になったが、考えた所で何も出来ないから一旦保留にしよう。
王妃が国を空けているのは予定外だったなぁ。
でも一応、生還の連絡は入れたから目的は達成だ。
響達が戻ってくるまで、まだ時間がある。
森の家に行ってみるか。
飛翔魔法を使用するのは問題になりそうなので、ポチにグリフォンへ変態してもらい移動する。
王都には従魔も騎獣もいるから目立たないだろう。
今度は、それほど速度を出さず15分で森に到着した。
世界樹の精霊王が結界を張っている森には、許可された者しか入れない。
家が荒らされている事もないだろう。
元の姿に戻ったポチを肩へ乗せ、森の中に入っていく。
あぁ、この静謐な空気が懐かしい。
暫く森の中で佇み周囲を見渡した。
300年経っても、ここは何も変わらないな。
ティーナを妊娠し、王宮から離れ出産までを過ごした場所だ。
どんどん大きくなるお腹を抱え、泣きそうになっていたのを思い出す。
森の中央に建てられた家へ入り自室に向かい、日本語で『母子手帳』と書かれた日記帳を手に取る。
妻が妊娠した時、渡された物を真似し俺も書いていたのだ。
パラパラとページを捲り読んでいくと、当時の記憶が鮮やかに蘇る。
赤ちゃんが初めてお腹を蹴った時、性別が分かった時、名前が決まった時……。
出産後、直ぐに亡くなってしまったから、その後の娘の成長記録はない。
俺は魔道具の羽根ペンをインク壺に浸し、続きを書き出した。
【12月24日。元気な女の子を出産。
難産だったため、破水してから12時間も掛かったが産声を聞いた時は嬉しくて涙が出た。
ティーナを育てられないのを申し訳なく思う。
再会した娘が沙良ちゃんだと知り、ずっと自分の傍にいた事に安堵する。
父親の響と美佐子さんの下で大切に育てられていた。
俺は、ずっと娘の成長を見ていたんだな。
いつか俺が母親であると話せる日がきたら、この日記を渡そう。
愛するティーナ、お前が生まれてくるのを俺はずっと楽しみにしていたよ。
旭 樹】
インクが乾くのを待ち、そっとページを閉じる。
室内には、ティーナ用のベビーベッドが置かれていた。
精霊王の結界の中にあるおかげなのか、生前過ごしたままの状態が保たれている。
壁には女官長が気を利かせ、俺達2人の結婚式の様子を描いた肖像画が飾られていた。
肖像画の俺達は幸せそうに微笑んでいるが、実際は引き攣った笑顔を向けていたと思う。
かなり修正して描いたに違いない。
他には赤ちゃん用の服が何枚も揃えてある。
女の子だと知った女官達が沢山準備してくれたものだ。
綺麗なドレスは、まだ気が早いだろうと窘めたが、子供は直ぐに大きくなりますからと聞いてもらえなかった。
いや、いくらなんでもそんなに早く大きくならないだろう。
しかも俺の子供はハイエルフで成長が遅い種族だ。
12歳くらいの子供用ドレスを着られるのは、当分先だと思うぞ?
そう思っていたが、このドレスは今の娘の背丈にピッタリ合うかも知れない。
ティーナの世話をするのを楽しみにしていた女官達は、俺が亡くなり娘が行方不明になったので落胆したよな。
一緒に嫁ぎ先まで来てくれたのに、悪い事をしてしまった。
あれから近衛の女性騎士達と共に本国へ帰っているだろう。
300年経っているなら、エルフの彼女達にはもう会えない。
最後まで尽してくれた彼女達に、一言お礼を伝えたかったが……。
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