自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
676 / 758
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第811話 エンハルト王国 指輪の依頼&摩天楼のダンジョン(99階・112階~119階) ベヒモス探し

しおりを挟む
 奥さんに約束した指輪をまったく考えてなさそうないつきおじさんの代わりに、ここは私が一肌脱ごうと口を開く。

「あのう、この指輪に加護を授けているなら作製したのは貴方ですか?」

「ええ、それは私のうろこで作ったものですよ」

 やはり、普通の素材じゃなかったらしい。
 同じような見た目の指輪は、青龍しか作製出来ないのか……。
 しずくちゃんのお母さんは、おじさんの指にはまった指輪を何度も見ているので、別のものを贈られたらガッカリするよね?

「お願いがあるんですけど、どうかこの指輪と同じものを1個作って頂けませんか?」

 外してもらった指輪を、そのままプレゼントするわけにはいかないから、魔道具じゃない指輪を用意する必要がある。
 青龍の加護が付加されていなければ、王族の伴侶である証にはならないだろう。
 アマンダさんに見られると困るので、ダンジョン攻略中は着けないよう言えばいい。

「では、巫女を助けて下さったお礼に渡しましょう」

 青龍はそう言うと目の前に大きな鱗を1枚出し、私達には聞き取れない言語を唱え出す。
 すると見る見るうちに鱗が小さくなり、ひとつの指輪に変化した。
 これは錬金術みたいな魔法かしら?
 鱗1枚で1個の指輪しか出来ないなら、相当価値がありそう……。
 
「どうぞ、お受け取り下さい」

 青龍から渡された指輪は、アマンダさんから貰った指輪と同じに見える。
 これなら雫ちゃんのお母さんに渡しても大丈夫かな?

「ありがとうごさいます! ちなみに、この指輪はサイズが自動で調整される機能もありますか?」

「はい、どの指に嵌めても問題ないです」

「その、外れないという事は……」

「それは普通の指輪ですから、安心して下さい」

 良かった。
 一度嵌めたら外れない、呪いのような効果は付いてないらしい。 
 指輪の件は解決したので、青龍にもう一度お礼を伝えカルドサリ王国へ戻った。

「樹おじさん、プレゼントの指輪を渡すね」

「えっ! これは結花ゆかの分だったのか?」

 私が青龍にお願いした理由に気付かず、おじさんは渡された指輪を見て唖然あぜんとしている。
 あぁ本当に何も考えてなかったのか……、夫婦喧嘩が勃発ぼっぱつするところだったよ。 
 雫ちゃんが両親の喧嘩に巻き込まれるのは可哀想かわいそうだ。
 今回は、未然に防げたので良しとしよう。
 それにしても、この残念さは旭と同じだなぁ。
 父や兄なら事前に対応策を練るし、そもそも指輪を嵌めたりしないだろう。
 似た者親子だと思っていると、父が思いっきり樹おじさんの頭を叩いた。

「痛っ! 何するんだ!」

「お前は沙良に感謝しろ!」

「あ~、助かったよ。ありがとう」

 おじさんは痛みに顔をしかめつつ照れたように笑い、指輪を腕輪に収納している。
 ちゃんと奥さんに渡して下さいね。

「お礼は、ベヒモスを見つけてもらえればいいです」

「ベヒモス!?」

「ええ、ちょっと必要なんですよね~」

 私は笑顔でお礼を請求した。

「そんな簡単に見つけられるのか?」

「ダンジョンの移転陣から、他のダンジョンへ行けるので探しましょう!」

「おっ、おう……」

 異世界の家で簡単な昼食を食べ、ガーグ老の工房へ向かう。
 ガーグ老達と従魔に乗って摩天楼まてんろうへ移動し、私と茜以外はアイテムBOXに入ってもらい、99階の移転陣からダンジョンにつながる112階を選んだ。
 112階は地中に埋もれて小部屋からは出られないため、一度ダンジョンマスター部屋までマッピングで移動し1階層下に降り、安全地帯で皆をアイテムBOXから出す。

「今日はベヒモスを探そうと思っているので、ダンジョンを移動する予定です」

 護衛を依頼したガーグ老達に、別の階層を調べるのではなくベヒモス探しをすると宣言した。

「サラ……ちゃん。ベヒモスを見付けるのは難しいと思うがの」

 ガーグ老が、ちらちらと樹おじさんを見て困惑こんわく気な表情をする。

「どっ、何処どこかにはいるだろう! もしかして、じいは知らないか?」

「ダンジョンに出現するような魔物ではないですぞ? 実際に見た事は、ありませんな……。セイ殿は、生息している地域をご存じか?」   

 ガーグ老に話を振られたセイさんが考え込み、首を横に振る。

生憎あいにく、私もベヒモスは見た事がないです」

 あかねが召喚したベヒモスは、かなりレアな魔物のようだ。
 1体しか呼び出せなかった事から分かってはいたけど、ベヒモス探しは難航しそう。

「ダンジョンに繋がる階層は沢山あるから、ひとつずつ当たれば見つかるよ!」

 父が私の言葉に首をかしげ、懐疑かいぎ的な顔をしたのは見ないフリだ。
 まずは、いると信じてこのダンジョンを攻略しよう。
 前回来た時は地上に出るまで移転を繰り返しただけだったから、どんな魔物がいるか見ていない。
 マッピングを展開し上空から俯瞰ふかんすると、大きい象のような魔物を発見する。
 その他には大きなサイやキリンや8本脚の馬のような魔物がいたけど、ベヒモスの姿はなかった。
 皆にいない事を告げ、次の階層へ降りる。
 ベヒモスを探しながら10階層下がったところで、次のダンジョンへ向かう。
 強い魔物なら最終階層近くにいると思い、無駄な時間を省いたのだ。

 その後、摩天楼の113階~119階から行けるダンジョンを調べたけど収穫はなく、迷宮都市へ帰る。
 ガーグ老達と別れ、異世界の家へ入るとルシファーが庭で待っていた。
 樹おじさんを見るなり、嬉しそうに近寄ってくる。
 爵位を上げるのは月~金曜日なのに、今日は何しに来たのかしら?

「姫! 私の気持ちを受け取って下さい!」

 頬を高揚させ両手を差し出したルシファーのてのひらには、またもや指輪が……。
 あぁ、これ絶対嵌めちゃ駄目なやつ。
 きっと、樹おじさんの指につけられていた指輪を見たんだろうな。
 ブラックダイヤのようにキラキラと輝く指輪には、何の効果があるんだろう?
 
「お主は死にたいらしいな。これは儂が預かっておく。来週は、いつもより多くしごいてやろう」

 突然、姿を現したガーグ老がルシファーから指輪を奪い取ってしまった。
 えっ!? さっき別れたばかりなのに……。
 いきなり過ぎて、心臓が飛び出るかと思ったよ!
 何か用事でもあったのかしら?

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、いいねやエールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,587

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。 2025/9/29 追記開始しました。毎日更新は難しいですが気長にお待ちください。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。