自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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<外伝> 椎名 賢也

椎名 賢也 65 迷宮都市 地下1階~地下5階

 沙良が女性ばかりの冒険者パーティーを見付け、話を聞いてくると離れていった。
 冒険者相手の情報収集は、外見が幼く警戒心を持たれない妹に任せておけばいい。
 俺は、どうにも年齢相応の振りが苦手だからな。
 年下相手に年長者の口調で対応すれば要らぬ敵意をもたれてしまうし、旭では逆にめられそうだ。
 俺は少し離れた場所から沙良の様子をうかがい、会話が終了するまで待つ事にする。
 沙良が相手にしている女性冒険者達は、庇護欲を刺激されたのか優しい顔で応じていた。
 外見詐欺の妹が、そんな可愛らしい性格でないと知っている俺はやれやれと頭を振る。
 しばらくして沙良が席から立ち上がり戻って来た。

 冒険者ギルドで用事を済ませた俺達は、ホームの自宅に戻り沙良から話を聞く。
 ダンジョン内でのルールはリースナーの町と同じらしく、治療行為にはダンジョン価格が設定されている。
 心配していた獲物を横取りする悪質な冒険者や奴隷商はいないようだ。
 とは言えクランに入っていない俺達は3人パーティーだから、注意するに越したことはない。
 また治癒術師は人気みたいで、3人の内2名がヒールを使用できるのは秘密にした方がいいだろう。
 Lv上げのためにも治療行為をするのは旭だけにするか……。
 当然だが日帰りでダンジョンを攻略する冒険者はおらず、ダンジョン泊が基本だそうだ。

「明日ダンジョンへ入って活動時間を決めよう。あまり人が多いと討伐数も減るしな。まずは、地下5階まで一気に行こう」

 リースナーのダンジョンと魔物が同じならLv上げの意味がなく、迷宮都市ダンジョン特有の魔物が出る階層から始めた方が効率がいい。
 
「了解。明日5階までの地図を購入してからね」

 俺の提案に沙良が賛同し、

「沙良ちゃんのマッピングを期待してるよ」

 ダンジョンマスターじゃなくなった事で、階層内を自由に行き来できなくなった旭が答える。

「あははっ、期待してて」

 沙良のマッピング能力は便利だが、俺達は地図がないとダンジョン内を探索するのに不便だ。
 ちゃんと忘れずに地図を買ってくれよ?
 夕食の希望を聞かれ、明日からのダンジョン攻略を考えて沙良の負担にならないようアイテムBOXにある寿司にした。
 それでも妹ははまぐりのお吸い物を作り満足そうに笑う。
 お茶だけでも良かったが、毎日料理を作っている妹は手間だと思わないんだろうな。

 翌日。冒険者ギルドで地下1階~地下5階までの地図を、魔道具屋へマジックバッグを購入しに行った。
 大型ダンジョンのある町らしく店内に展示された種類が多い。

 マジックバッグ10㎥ 金貨15枚 
 マジックバッグ15㎥ 金貨50枚
 マジックバッグ20㎥ 金貨120枚
 マジックバッグ25㎥ 金貨240枚
 マジックバッグ30㎥ 金貨410枚(使用者登録付き)

 その中でも沙良は一番容量の多い30㎥を2個購入し、見ていた旭も同じ物を買っていた。
 高額商品が3個も同時に売れたからか、店主がマジック寝袋を3個サービスでくれる。
 俺達はホームの自宅で寝るので使い道がない商品だが、あっても困らないだろう。
 しかし、相変わらずマジックバッグは高いな……。
 2個で8億2千万円もするとは、かなりの高級品だ。
 異世界で稼いだ金は全て沙良に管理を任せているため、どれだけあるか知らないが迷わず購入するくらいだから問題ないんだろう。
 2個購入した内の1個を手渡され、魔石に使用者登録を済ませる。
 こうする事で持ち主以外が中身を取り出せなくなるそうだ。
 沙良は大きいマジックバッグを持ち歩くのが面倒で、換金する際のダミー用で自分の分を購入したと言い張り、魔石に使用者登録するのを嫌がる。
 ほんの一瞬痛い思いをするだけで済むのに困った妹だ。
 俺が持っていれば冒険者の体裁は保てるから、まぁ良しとするか。

 冒険者ギルド前から乗合馬車に乗り30分後、ダンジョン前に到着した。
 入場料の銀貨1枚を払いダンジョンに入ると、中は迷路状になっている。

「あ~、見えないと不便だなぁ」

 今まで沙良のマッピング能力同様、階層内を把握していた旭が愚痴をこぼした。
 俺は2人のように見えた事がないから分からない。
 視界に映るものが全てだから、壁を透視して見渡すなんて混乱しそうだ。
 魔物を避けながら沙良が先頭を走り、俺達は後ろを付いていく。
 特に問題なく地下5階の安全地帯まで辿たどり着き、マジックテントを設置した。
 活動する冒険者が多いためか、30個くらいのテントが見える。
 これはクランの数と同じだろうか?
 テント内からホームの自宅に戻り休憩を済ませ、地下5階の常設依頼を確認する。

【ダンジョン5階 常設依頼 C級】

 オーク1匹 銀貨10~12枚(魔石・本体必要)
 オークメイジ1匹 銀貨12~15枚(魔石・本体必要)
 ハイオーク1匹 銀貨15~18枚(魔石・本体必要) 
※アルマジロ1匹 銀貨10~15枚(魔石・本体必要)
※迷宮ドッグ1匹 銀貨1枚(魔石)
 ゴブリンメイジ1匹 銀貨1枚(魔石)
 ハイゴブリン1匹 銀貨1枚(魔石)

 初見の魔物はアルマジロと迷宮ドッグだな。
 地下1階から地下5階まで魔物と交戦せず来たため、張り切っていた旭が不満そうな顔をしている。
 大方、沙良の前で颯爽さっそうと魔物を倒し格好良く思われたいんだろう。
 気持ちは分かるが油断してくれるなよ。

 安全地帯を出て本格的に攻略を始めると、体長3mのアルマジロと会敵した。
 俺は初見の魔物の強さを知るため、ついいつもの癖で沙良より早く魔法を撃つ。
 それを見た旭が、見せ場を取られたというように俺を恨めし気に見てきた。
 いや、悪気はなかったんだ。
 次は、お前に譲るからそんな目で見ないでほしい。
 しかし今度は迷宮ドッグを見付けた沙良が瞬殺してしまう。
 俺達の攻略速度に慣れてくれ……。
 
 魔物を見付けたら即瞬殺する俺達に、旭も負けじと魔法を撃ち魔物を倒していった。
 沙良はゴブリン以外に魔石取りが必要な魔物がいた事で、「解体ナイフが役に立って良かった~」と喜んでいる。
 言うだけで魔石取りは俺と旭の仕事だが……。
 3時間ごとに休憩を挟み、夕方6時に攻略を終え自宅へ戻った。
 敵も強くないし5日間だけ地下5階を拠点にすると決める。
 攻略時間は夜間ではなく日中のままで大丈夫そうだ。
 安全地帯の冒険者を観察したが、沙良に手を出すような危険人物は居なかったからな。
 
 5日後、冒険者ギルドで換金を済ませる。
 ハイオークとアルマジロの状態が良いから、常設依頼より高くしてもらえたと沙良はご満悦だ。
 旭もアイテムBOX内にある魔物を換金し、大量の金貨を手にして笑顔を浮かべている。
 解体場のおじさんに毎回ファングボアの肉1体を引き取る事を沙良が伝え、冒険者ギルドを後にした。
 迷宮都市でも教会の炊き出しに参加する心算つもりなんだろう。
 出来る範囲の支援ならば好きにさせてもいい。 
 路上生活をしている孤児を見るのは俺も胸が痛むからな。
 俺達のパーティーに大人がいれば、もう少し大きな支援が出来るんだが……。
 召喚枠に限りがある現状では難しい。

 今回の攻略では怪我人が出ず、旭が治療する機会はなかった。
 例のお礼を受けるのは、まだ先か……。

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