時空魔術操縦士の冒険記

一色

文字の大きさ
120 / 175
2章ダンジョンへ向かおう

超大型異世界神

しおりを挟む
「またお前かよ……アイリスをまだ付け回しているのかよ」

「ははは……もうしていないよ。きっぱりアイリスは諦めたよ。だがしかし、あの麗しい金髪の少女に一目惚れをした」

「そうかよ」

「君のお仲間だよ」

「え? だったらリオラしかいないだろ?」

「この国に来ているのかな? 会いたいよ僕は。はははは」

「じゃあな?」

「待ってくれ」

「なんだよ」

「エキドナの件はご苦労だった。おかげで有益な情報を獲得できたよ。それにもしかしたら大事な部下であるロペスが死んでいたかもしれない。愛していたアイリスもだ。礼を言わせてもらうよ……ありがとう」

 シャルマンは真剣な眼差しで、胸に手を当て、頭を下げた。
 金眼からは嘘は感じられなかった。

「ああ」

「それなりの報酬はちゃんと入金されたはずだね?」

「ああ」

 そして、シャルマンは咳を鳴らす。

「また依頼を頼みたい」

「無理だ」

「頼むよ? 君しか頼めないんだよ?」

「俺がやらなければならない筋合いはない」

「確かにね……ところで君? 珍しい生物を飼っているんだね? おや? もしや? カナブンバッタじゃないか?」

「何か知ってるのか?」

「その超大型異世界神から採集できる液体があるんだけど。偶然にもその液体はカナブンバッタを進化させることができるんだ」

「おおっ!!」

「やるかい?」

「やる!!」

 俺は即座に承諾。
 ミユミユはくんくんと頷いた。
 シャルマンは、「さて、出発しようか」

「早過ぎるだろ!」

「既に牛車を待たせてある」

「ああ。なら、仕方ないか」

「正直言って今回かなり危険だから…‥お仲間は外して、君だけの参加とするよ」

「まあ、それもそうだ」

「他ギルドから強者のゴットハンターも参加しているから……命の危険までには及ばないと思うけどね」



              *


 そして、70階層からGルートを馬車で進み、200階層まで進む。
 一般に1階層から199階層は下層、200階層から499階層までが中層、500階層以上が上層や神層と呼ばれる。
 既に何個かの牛車は発車していた。
 シャルマンが俺に牛車に乗るように促す。
 馬が二頭を率いて、大きな車輪の上に六人乗りの箱が備わっている。
 俺は乗り込む。
 すると、そこには白髪白髭の紳士な老人と閉じた左目に傷がある、髪の毛の汚い犬の男がいた。

「デオデオさんとロペスさん」

 デオデオはにっこりと頷く。
 ロペスは煙管を吹かして、手を挙げる。

「アルも来たガァか? おっ? 今日は一人ガァ?」

「はい。今回は危険ですからねぇ。まだあいつらには早いと思いまして」

「確かにガァ。今回はきついガァな」

 険しい表情をするロペス。
 俺は座席へ座る。
 そして、ゆっくりと馬車は動き出した。
 デオデオは指を立てながら、朗らかに話をする。

「今回の依頼は200階層に住む超大型異世界神です。200階層は下層と中層を結ぶ大事な拠点。当初は難しくはないと判断していましだが、ここで中層へ上がる多くの新人ゴットハンターの犠牲者が多発しましてね。よって危険度Sランクと評価し、大事な討伐となったのです。だから、十強神団《アルカディアス》が直々に出征する事になったのです」

「その対象物は?」

 俺は恐る恐る問い掛ける。
 デオデオは怖い表情をする。

「覇山嵐《ヤマアラシ》です」

「え? 待ってくださいよ! 昔は確か上層にいた異世界神ですよね? なぜ中層に?」

「年々に隠れたルートから下層に下がって来ているのでぇす。我々は色々と手を尽くしていたのでぇすがね、事情があり思い切った決断は出来ずに今までおりました。でぇすが今回やっと討伐をする事ができるようになりました。嬉しい限りでぇす」

「そうですか」

 突然、ガガガガガガガと馬車が揺れる。

「なんだガァ?」

「なんだ?」

 そして、うぁぁぁぁという悲鳴やガキガギガギガギという破壊音が聞こえる。

「ヤマアラシが接近中!!!! 今すぐ退避!! 退避!! うぁぁぁぁぁ!!!!」

 すぐさま馬車から降りる。
 すると、目の前には体長は1000メートルはあろうか巨大な山があった。
 亀が山を背負った生物、爬虫類のような黒鱗が四脚。
 黒い焦げた顔と赤い目玉、大きな口。
 四足歩行で緑の山を動かし、長い尻尾から針を広げている。
 レベル400。
【覇山嵐《ヤマアラシ》】。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

処理中です...