時空魔術操縦士の冒険記

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2章ダンジョンへ向かおう

ヤマアラシ1

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 目の前で巨大な前足が馬車を潰していき、破壊音と呻き声が響く。
 ヤマアラシが通った道を見ると瓦礫と人の惨状だった。
 ミユミユはポケットから首を出しながら怯える。
 ポケットに隠れているように言い聞かせた。
 するとロペスが険しい表情で、巨大サイズに魔戦を具現化し、戦車が出現。
 全身迷彩柄で毛皮を纏い、腕や膝に楯が備えられた装甲。
 頭部の十字架が煌めき、その中の金眼の双眸が見上げる。
 魔戦も10メートル以上とかなりの巨体だが、ヤマアラシは遥か上を凌ぐ。
 高い山がゆっくりと威厳を保ちながら、進む。
 ヤマアラシの前に立ちはだかり、山の体部分を押さえる重戦車。

「行くガァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 動きを止められない、ザザザザザと砂塵が舞い散り、押される重戦車。
 尋常ではない重さのヤマアラシ、普通の魔戦では抑えられない事は明白。
 ヤマアラシのワニの赤い目玉は重戦車を敵と認識してはいない。
 ただの木ぐらいにしか思っていない。
 いまだかつて、このヤマアラシが正面衝突で、負けたことはないのだ。
 重戦車は一旦両手を離し、大血剣に形態変化し、ヤマアラシに突き出し、緑の魔力が放出される。

「風魔!!!!」

 眩い閃光が煌めき、攻撃はヤマアラシの頭部に直撃する。
 がしかし、両手の大剣がへし折れただけだった。
 ヤマアラシは無傷で、伸びた尻尾で重戦車を右へ払いのけた。

「クソガァァァァ!!!!」

 重戦車は無情にも巨大岩に直撃し、煙を出しながら、埋め込まれた。
 即座に、デオデオが右手に長刀を持ち、ヤマアラシの背中へ颯爽と登る。
 執事服の紳士的な老人の身体能力の高さに驚かされる。

「ロペス立ち上がれ!! 増援は来る!!」

 デオデオはあっという間に頂点へ登り、長刀を突き刺す。
 縦の青い光芒が空へ一直線に鳴る。

「ぬっ!!!!!!!」

「ゲェェェェェェェェェェェェェアアアアアア!!!」

 呻き声と首を動かすヤマアラシ。今の攻撃はだいぶ効いているようだ。
 その時、ボロボロの重戦車が復活する。
 大剣でヤマアラシの山の脇腹に、突進し、斬撃を与えていく。

「おのれガァァァァァァ!」

 ヤマアラシは尻尾や山を動かし振り払う。
 今度はヤマアラシは首を伸ばし、二人に噛みつく、肉の骨の髄まで食い込みそうな凶暴な刃。
 なんとか回避を繰り返しながら、山の脇腹を中心に攻める。
 ヤマアラシも相当痛がって、ダメージは蓄積しているのは確か。
 徐々に好機は見えてきた。
 すると、200階層方面から灰色の魔戦の集団がやってきた。
 増援だ。

「対象物発見!! 一斉放射!!」

 後方から銃を正眼に構え、一斉に青い光線や緑の光線や赤の光線を放つ。
 ヤマアラシの後体を直撃し、黒煙が舞い上がる。
 ヤマアラシの悲鳴が響き渡る。
 かなりのダメージ受けたのだ、このままやれば倒せると皆が思った。
 だが、異変が生じる。
 尻尾を地面に叩きつけ、四脚でバタバタと足踏みし、ワニの紅の両眼は異常に見開き、眼球が飛び出した。
 山の林が巨大な針へと変貌、その無数の針は灰色の魔戦の集団の機体の心臓部に突き刺さり、呆気なく墜落。

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 悲鳴が聞こえる。
 心臓を貫く山の針。
『山針《ヤマハリ》』
 針には鋭利さと毒があり危険で、毒が刺されば、一時間後に致死。
 デオデオさんが怒りの形相で叫ぶ。

「後方は危険だと前もって言っていたでしょうが
!!!! 力が無いなら黙って見てなさい!!!!」

 毒を貰って地面で苦しむ操縦士ら。
 もう、後悔した所で、遅い。

「うわぁぁぁぁぁぁ」

「毒がぁぁ」

「死ぬぁぁぁ」

 すると、この危機的状況にデイトナ王国の方角からも増援が来て、大きな砲弾を載せた戦車が何台も進み出る。
 迷彩柄の機体が横にずらっと並ぶ。

『砲弾戦車《バルハラ》軍団』
 光線や弾に特化した専門機体。
 中機体に分類。
 デイトナ国が開発した、戦争用。
 
 直後、一斉に銃口がヤマアラシ上部へ向けられる。

「全員!! 点火!! 発射!!」

 砲弾は上中腹に横一線にヒットし、連続的に爆発する。
 激痛で悶えるヤマラアシにここぞとばかりにデオデオが上空へ跳び、攻撃を仕掛ける。
 尚も、何発かの砲弾がヤマアラシに直撃し、爆音と黒煙が鳴る中、デオデオは身方の攻撃の邪魔をしないように、山頂を駆ける。

「ドンッ!! ドンッ!! ドンッ!! ドンッ!!」 

 ヤマアラシは再度激痛で叫ぷ

「ゲゲゲゲゲゲギャァァァァァァァァ!!!!!」

 その時、ヤマアラシに異変が生じた。
 いや、攻撃の兆候ではない。死の兆候だった。
 山がふらつき、一瞬で、右に凄まじい衝撃で横に倒れた。
 その際にデオデオは地上へ降り立ち、呆然とするシルバディウスの横に。
 デオデオさんにも微かな笑み。
 これは……。
 倒したということか。
 ヤマアラシを倒したのか否かという半信半疑の沈黙が場にもたらせれる。
 しかし、山は恐ろしい動作で再び立ち上がった。
 山が動くだけで、これほど恐ろしいのかと。
 トラウマになる程の一瞬だった。
 立ち上がり、ふらついた緑の山が次第に赤く染め始める。
 そして、真っ赤になった。
 美しい紅の葉を咲かせた木々。
 これぞ、絢爛豪華というべき山々だ。
 これは……。
 一斉に皆、目を見開き、思わず、

「美しい……」

 
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