転生したらダンジョン雲になった訳

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1章魔獣になりましょう

109話激怒悪魔鬼

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 醜い三眼を無理矢理に微笑みを作り上げ、酒呑鬼は両手で降伏を示す。
 その一瞬で、大量の汗を掻き、顔はげっそりと痩せたように見える。
 悪魔鬼の怒りは止まらない。
 解決済みにしようと結論に至った悩みの種が再び思い出される。
 次期四鬼候補の派閥争いで多数の犠牲者を出したことだ。
 それは当事者である酒呑鬼の責任なのである。
 
「お前はこの件に関してどう責任を取るつもりだ?」

「先程も申したじゃないですかぁ……来年度は次期四鬼選を辞退すると」

「なんだその言い草は?」

 悪魔鬼の異常な目の動きと、今殺戮を開始しようという夥しい骨剣が酒呑鬼を恐怖に駆り立てる。
 酒呑鬼は顔面蒼白で、全身が震え、膝を付ける。
 しかし、悪魔鬼の激怒は治まらない。
 殺戮に満ちた闇の魔力が周囲の空気を震撼させる。
 地は執拗に凹み、天はどす黒くなり、大雨を降らせ、まさに驚天動地。
 悪魔の赤い両眼が一度閉じ、開いた瞬間、無数の殺戮の骨剣を巨漢の酒呑鬼に投じようとする。
 が、白い馬人間が両手で発光色を明滅させ、悪魔鬼の視界を封じた。
 閃光馬は顔を動じる様子も、悪魔鬼の両眼を見据える。
 悪魔鬼はその美しい姿と、冷静沈着な姿に嫉妬と腹立たしさが心の底から湧き上がる。
 悪魔鬼が見下し、訝しく目を細める。

「何の真似だ?」

 閃光馬は不敵に笑った後、降伏を示すため、低姿勢になった。
 同時に闇と光は収束し、この一帯を滅ぼしかねない最悪の衝突を避けた。
 もっとも、それは閃光馬がそう願ったからだ。
 悪魔鬼は降伏を示さなければ、完全にこの二人を殺していた。
 しかし、今後対応次第で、恭順を示さなければ、この二人の命は無いのは確かだが。
 閃光馬は感情の無い、ぎょっとした黒い両眼と、冷静な声で返答した。

「今やるべきことは……虫女の抹殺でしょう。そして、この件は我々……に任せてもらえないでしょうか? その後、我々の命は悪魔鬼様に差し上げましょう」

 閃光馬の提案は活かして殺すべきという延命の訴え。
 だが、その延命は一時に過ぎない。
 ここで、殺しても、後に殺しても、どっちみち死を迎えるのだから、差異は無い。
 仮に、命乞いをしていれば、悪魔鬼はその浅ましさや意地汚さに怒りを増幅させて、二人を殺していただろう。
 悪魔鬼は感心したのか、奇怪に大声で笑った。

「アッハハハハハ……いいだろう。すぐ始末して来い」

 すると、閃光馬は承諾した後、ふと気がかりを思い出し、躊躇ったが、結局は告げた。

「雲の魔獣の件はどうしますか?」

「そいつか……なかなか、しぶとい奴だ……そいつも抹殺だ」

「かしこまりました」
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