転生したらダンジョン雲になった訳

一色

文字の大きさ
110 / 177
1章魔獣になりましょう

110話閃光馬と対決

しおりを挟む
 黒髪の白い顔の女は痩せこけ、血色が悪いのか、唇が青紫、その疲れた表情で崖にある小さな出張った岩に這いつくばって、渡りながら、アタマカラを探していた。
 他の小さな虫達も、空中を旋回しながら、捜索を寝ずに行っていた。
 相当な魔力を消耗し、目眩をさせる虫女。
 ようやく、難所の狭い幅の岩から脱出し、坂道を下り、ようやく谷底へ到着した。
 朝方の凍りつかせるような霧が虫女の精神を追い詰める。
 いや、違う。
 覚えのある殺気だ。
 もう既に彼女には妖艶さや余裕は無い。
 苦しそうな息切れ、だが、なんとか目力だけは保ち、黒い眼差しで、周囲を見渡した。
 
「誰?」

 小さな流れる川を隔てて、向こう岸の山林から二体の凸凹の影が現れた。
 三メートルはあろうか、巨漢の三眼の鬼。
 黒い図体がのっそり近づき、水面に波を立たせる。
 酒呑鬼は首を傾げ、右手の大きな酒樽を器用に回転させる。

「久し振りだな……元鬼団四鬼……クカカカッ」

 一方、閃光馬は両手に光の玉を構築、冷徹な目で、波面を一歩一歩を渡る。
 死を宣告され、もう怖いものはないと云った表情で、虫女を凝視する。
 
「ここまで馬鹿な女だとはな……我が部下を殺すのは心が痛む」

「あら……久し振りね」

「分かってるな……お主がしたこと……」

「どうするの?」

 虫女は余裕の無い笑みを振り撒き、目を異常に泳がせ、艶めかしく首を傾げる。
 閃光馬は虫女の質問を無視し、冷徹に問い質す。

「なぜ、あの雲魔獣を逃がした?」

「フフフ……惚れた男には生きてて欲しいの」

「そんな戯れ言で、我を欺けると思ったか糞虫……」

 閃光馬は少し苛立っているのか、侮蔑の両眼をし、語気を微妙に強める。
 圧倒され虫女の呼吸は乱れるが、何とか挑発的な態度を繕うとしている。

「あら、そう。私は墓場まで持っていく秘密主義よ」

「そうか。フフッ……お主は墓場にはいけない……何人の冒険者を手に掛けた? お主の最期は地獄だ」
 
 閃光馬は戦闘開始の合図とでも言うかのように、光の玉を虫女の顔すれすれに投じ、岩肌に爆発と爆煙を発生させる
 虫女は一瞬目を見張り、少し不気味に笑って、途切れ途切れの声で、
 
「私は……間違ったことはしてないわ。いつだって魔獣の味方よ」

「それがお前の答えか。素晴らしい、これまでの鬼団の忠誠、功績……感謝を申し上げる。そして、この死は鬼団の歴史に名を残すだろう」

 閃光馬の両足から光芒が発生、まさに光の速さで、狼狽する虫女の上を奪い、両手から尖った光の剣が創造され、クロスを描き、襲いかかる。
 虫女は光を浴びた瞬間、恍惚の表情で顔を上げ、死を受け入れた。
 あの人は逃げたのかしらと思いがよぎる。

「光のクロス!!」

 一段と濃い光の球体が帯び、辺りに円状に発生し、クロスで虫女の首を貫く。
 そして、闇の谷底は一瞬で、光の一帯へと化した。巨大な爆風が岩や木々に襲いかかり、やがて、光は止んだ。
 すると、その一部始終を目撃した酒呑鬼は口を開けたまま、唖然とする。
 三眼を細め、やっと涎を垂れ流し、口を開いた。
 
「何が起きた?」

 前方で、光の魔力を消費し、その影響か煙を発し、俯き加減で、立ち尽くす閃光馬。
 次第に、右拳を作り上げ、奥歯を噛み締め、苛立ち混じりに鼻息を鳴らし、声を漏らす。

「お主……何者だ?」
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る

丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。 現代では中世近世史を研究する大学講師。 史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。 ならば変える。 剣でも戦でもない。 政治と制度、国家設計によって。 秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、 戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。 これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。 戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。 (2月15日記) 連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。 一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。 (当面、月、水、金、土、日の更新)

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

処理中です...