祝福の呪い

Future

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1章

邂逅2

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 女は赤髪の長髪を後ろでまとめ、鋭い眼光で俺を睨んでいる。
 そして先ほどの少女と同じく何かを唱え、宙に炎を生み出す。
 それを見た少女は俺を見ながら相変わらず無表情で口を開く。

「せいぜい頑張って…」

 少女にそう言われ、これから起こることを察した。

「躱せ、レイ」

 女がそう言った次の瞬間。
 複数の炎の塊がこちらに向かって急加速する。
 しかし反応できない速度ではない。ギリギリのところで躱す。
 一目でわかる。あの炎を受ければただのケガでは済まない。

「悪くない目をしている。普通の人間なら今ので仕留めていたはずだったんだがな」

 高圧的な口調で女は言う。

「その目に免じて一度だけ問おう。レイに何をしていた?」

 レイというのは先ほどの銀髪碧眼の少女のことだろう。

「何もしていない。俺はケモノを狩ってただけだ。
その途中でその子に助けられた。それだけだよ」

 後ろにある大量のケモノの死体を見ながら言う。
 女はレイの顔を見る。
 それに気づいたレイは小さく頷く。

「私がケモノを殺そうとしたら横取りされた…。でも悪い人ではないと思う」

 レイは淡々と話す。
 俺を庇っているわけではないのだろう。ただ思ったことを喋っているだけという風合いだ。

「少年、君はなぜケモノを狩る?」

 女はいぶかしげな表情をしながら俺に問う。

「目の前で危ない目にあっている人がいたんだ。助けるのが人の善意ってものだろう」

 俺の言葉に女は顔をしかめる。
 もはや吐き気を催しているようにさえ見える…

「少年…君は『善意』でそこにいるレイを助けたとでも?」

「そうだな、少なくとも悪意はなかった。『助けたいと思ったから助けた』それだけだよ」

 それを聞いて女はあざ笑うような笑みを浮かべる。

「少年、良いことを教えてあげよう」

「良いこと?」

 怪しさしか感じない。
 直感でわかる。この女は真っ当じゃない。

「この世界に純粋な善意ピュア・アルトイズムなんてものは存在しない。
この世界で善意と呼ばれているものは全て、その根本に人の欲望が存在している。
欲望を抱くことが悪いとは言わないさ。それは人の性だからな。
ただそれを善意などとのたまうのはひどく吐き気がするよ」

 女はそう言いながら、胸ポケットにしまっていた煙草とオイルライターを取り出す。
 流れるような手つきで煙草に火をつけ、左手でライターを器用にくるくると回す。
 そして女は憐れむようなまなざしでこちらを見ながら、煙草を煙を吐く。"

「自分の行動に善意を見出そうとしないことだ、少年。
 君自身の欲望を自覚しろ。そうすれば、多少は賢くなれるかもしれんぞ?」

 女はそう言って煙を吐きながらこの場を去った。
 レイと呼ばれていた銀髪の少女もそれを追って姿を消した。
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