契約葬域〈ネクロ・ドミナス〉 —血と誓いが死を招く、黄昏の幻想譚—

ナイトメア・ルア

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第一章:焔に刻まれた予言

第十二話:沈黙の回廊と血塗られた契約

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湿った石畳に靴音が響くたび、冷気が肌を刺す。灯りは壁にかけられた数本の松明だけで、薄明かりの中、回廊の奥は闇に溶けていた。
その先に待つのは、千年前に封じられた「契約の間」。そこへ足を踏み入れれば、後戻りはできない。

リセルは腰の剣に指をかけ、背後のルカを振り返った。
「……本当に行くのか?」
ルカは蒼白な顔をして頷く。「もう決まったことだ。奴を解き放つ鍵は、この先にある」

二人は足を進めた。壁の模様は血のように赤黒く染まり、古代語の刻印がびっしりと浮かび上がっている。まるで誰かの心臓が、石に埋め込まれて脈打っているかのようだった。

不意に、回廊の奥から低い囁き声が響いた。
「……来タカ……契約ヲ……果タセ……」
次の瞬間、空気が重く沈み、闇の中から半透明の騎士が姿を現した。鎧はひび割れ、剣は錆びつき、だがその眼だけは炎のように燃えている。

リセルは反射的に剣を抜き、ルカを庇う形で前に出た。
亡霊の剣がゆっくりと持ち上がる。その刃先がこちらを指した瞬間、空間そのものが歪み、回廊の壁が波打った。
「この場所……生きて帰った者はいない」
ルカの声が震える。しかし、リセルは一歩も退かなかった。

亡霊の剣が振り下ろされる。火花が散り、衝撃が足元から頭の芯まで駆け抜ける。
リセルは受け流しながら、間合いを詰めた。相手は形を持たぬはずの亡霊だが、この剣だけは確かに物理を持っている――それはつまり、斬れる。

「ルカ! あの封印文を読め!」
ルカは慌てて壁の古代語に手をかざし、必死に呪文を読み上げ始めた。その声と同時に、亡霊の身体が黒い霧に溶けかける。だが次の瞬間、霧は渦を巻き、ルカの背後に再び形を取った。

「後ろだッ!」
リセルが叫ぶが、ルカが振り向くより早く、亡霊の剣が振り下ろされ――

ガギィン!
甲高い音と共に、何かが亡霊の剣を弾いた。回廊の奥から現れたのは、漆黒の外套をまとった人物。顔は影に隠れ、表情は見えない。だが、その手に握られた刃は、亡霊のそれと同じ形をしていた。

「……お前たちの契約、俺も乗ろう」
低く響く声が、回廊の空気をさらに冷たくした。
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