静と千尋

うー吉

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体の力が抜けたのがわかった
服の上からでもわかる発熱 いつもなら気にならないぐらいの足の不自由さも
今日はよくわかる
こんなになるまで我慢せなアカンのか 
何が この子を苦しめてるんやろ 
俺が助けてあげたい 俺がこの手で守りたい 
グッと腕に力が入った

会社の最寄り駅で降りる ラッシュから解放され 一息つく
「大丈夫か?」
「はい 大丈夫です すいません」
「おはよう」
同じ営業部の瀬野さんが声をかけてきた
「おはよう」
「おはようございます」
「川越 この前の取引の件なんだけど」と瀬野が川越に話しかけてる
二人の歩くスピードにはついて行けない だから一歩下がる
「山崎 どうした?気分悪いか?」
「えっ」
川越さんが立ち止まってくれてる つられて瀬野さんも止まる
「ちがいます 大丈夫です」
「ほんなら いこか」と歩き出す 俺が歩けるスピードで

初めておにぎりを渡してから 一か月
「山崎君 これお願いしてもいいかな」
「山崎君 会議の資料できてる?」
「山崎君 あの商品の発注の件ね 大丈夫かしら?」

第二営業部は山崎が握っているとまで言われるようになっていた
もともと 愛想があるわけではないが きちんとした仕事がみんなの評価につながって
頼りにされていく 
ちょっと面白くない
「お前の方が出世しそう」
「何ですかそれは 僕はただの派遣ですよ」と笑ってる
キーボードに伸びている腕がワイシャツから少し見えた
あいかわらず細いなぁと見てたら 手首に青あざを見つけた それも両手
俺の目線に気が付いたのか スッとワイシャツの袖の中に手を隠した
「体 大丈夫か 無理してないか 仕事多すぎへんか」
と聞く
「川越さん 保護者になってますよ」と笑われた


接待で遅くなった
山崎の部屋を見る 電気が付いてる まだ起きてるな
飯食ったかな 今から行ったら迷惑やんな  
なんか手土産でも買ってきといたらよかった 駅前のコンビニでなんか買う
いやなんで 山崎の部屋訪ねる口実探してるん俺
頭を振って アパートを通り過ぎた時
言い争う声が聞こえた 振り返ったら 
山崎の部屋の人の影が争っているように見えた 
ガシャーンと大きな音がして ガラスの割れた音がした 
アパートの下まで行くと 誰かが走っていく後ろ姿が見えた
山崎の部屋の玄関が開いたままだ
「山崎っ」と部屋に入ると
割れた窓ガラスに手を突っ込んだままの山崎が 呆然をしている
顔には殴られた後
そして 一番驚いたのは 山崎が裸で その体は傷だらけだったという事だ
ジャケットを脱いで 山崎にかける タオルがあったので下半身にかける
「山崎 手動かせるか そっとな そっと」
手を窓枠から抜く 大きな血管を傷つけていないようでホッとする 
「山崎 救急車呼ぶぞ ええな」と声をかけると
「やだ やめて 呼ばないで お願いだから呼ばないで」

「大丈夫です ちょっと父親ともめただけなんです」
「ほんとに大丈夫 大丈夫」
大丈夫と何度も言うが 体の震えが止まらない
「山崎千尋 千尋落ち着いて 俺がわかるか?」
「かわごえさん」
「正解 救急車は呼ばへんけど 手の治療はせなあかんと思うねん
俺の知ってるお医者さん呼んでもええか」
「川越さん 俺大丈夫ですから ホント大丈夫です」
「ちゃんと手当てせなアカン 医者って言うても俺の兄貴やしな
ほんなら 場所変えよう 俺の家まで歩ける?」
うんとうなずく
切れている手を ワイシャツで少しきつめに巻く
「服着れる?」というと うなずくので
その間に 電話を入れる
ワンコールで出る
『セイ どうした こんな時間に 終電乗り遅れた?』
『コウ兄ちゃんごめんやねんけど ウチに来てくれへん 後輩が怪我して
ちょっと病院には行かれへんねん』
俺の声色で察してくれる
『わかった 壮志もおるから連れて行く 後輩君はどんな感じ?』
電話の後ろが少しガタガタしだした
『窓ガラスで手を怪我してる 止血はしてあるけど ちょっと深く切れてると思う』
『わかった セイ 手を上にあげるようにしてね 今から家出るから』
『ごめんね コウ兄ちゃん壮志さん』
『大丈夫だよ』と壮志さんの声が聞こえた
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