影の王女は転生し、眠り姫だった公爵令嬢に転生する

chitose

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影の皇女

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「ありがとう。」そんな弱々しい声が薄暗い室内に響いている。
「アリア、僕は君の婚約者なのにこんなことしかできない。本当にすまない。」そんな声を出しながら、男性は泣きながら、ガラスで出来た小瓶を渡した。中には透明の液体が入っている。
「貴方は良くやってくれたわ。本当に感謝しているもの。ねぇクリストファー、貴方だけは私の無実を信じてくれたのね。その事をスカルから聞いた時とても嬉しかった。」そう言うと、アリアはクリスの手を握った。
「そんな……でも、結局君を守る事は出来なかった。僕は君を裏切ってしまった。でも、こうするしか君を助けられる方法が無かったんだ。結局、助ける事はできなかったけど。」そう言うと、アリアは悪戯っ子のように「ふふふっ」そう笑った。
「貴方が言っているのは、私との婚約を解消して、お兄様の娘、アイリス様と婚約をしたことかしら?」そう言うと、クリストファーは、ばっと顔を上げた。「アリア、それを誰から聞いたんだ?そう困惑しているように言った。「精霊たちからよ。」そう悲しげに答えると、「アリア、本当にすまない。でも、僕は彼女を愛していない。僕が愛しているのはアリアだけなんだ。」そうアリアの目をハッキリと見た。しばらく経ってから、「アリア、ここから逃げないか?」そうクリストファーが言った。
「えっ、何を言っているの?」そう困惑したようにアリアは答える。「だから、アリア僕は君を愛している。君とさえ一緒にいる事が出来れば、僕は公爵家から勘当されても構わない。何処か、山の奥で2人で暮らそう。昔の生活よりは劣るかもしれないけど、僕が君を必ず幸せにして見せるから。僕を信じて欲しい。」そう言って、柵の外から差し出した手をアリアは振り切った。「そんな事をすれば、貴方は間違いなく殺されるわ。私は自分が助かるためだけに、貴方の命を奪いたくない!それに、私だけの為に沢山の人の人生を壊したくないの!だから、私は貴方について行く事は出来ない……」そう言うと、「君はもうすぐ、殺されてしまうんだぞ!それなのに…そんな綺麗事ばかり言って…君は馬鹿だ!」そう怒鳴った声には泣き声も混じっていた。「そうね。私は馬鹿よ。だからこそ、貴方に生きて欲しいの。私が死んだら、人々は私をすぐに忘れてしまうでしょうね。私は儚い塵のように忘れられてしまう。でも、貴方の記憶の中なら私は貴方が生きている限り、たった1人、貴方に忘れられないと思うの。だから、貴方は生きて。」「アリア…僕は」そんな声は深夜12時を告げる鐘の音に消されてしまった。「クリストファー、もう帰った方がいいわ。あと、25分も経てば見張りが地下1階に来てしまうから。」そう言うと、「アリア、君とはもっと違う出会い方をしたかったよ。」そう言って、風のように姿を消してしまった。
アリアは「違う出会い方ってどんな出会い方なのかしらね。クリストファー、貴方には、これまで2つ嘘をついてきたわ。ごめんなさい」そう悲しそうな消えてしまいそうな声でで呟いた。
本当にこうするのは自分のため。
処刑されるからではない。
この事は10歳の頃から、自分で決めていた。16歳になったら、自害することを。私は……だから。
アリアは消えそうな蝋燭の火を消すと、クリストファーから貰ったガラスの小瓶の中の液体を呑み込んだ。「ごめんなさい…」そう最後に呟くとアリアは命を断った。
大魔術師であった、アリアの魂は黄金の光となって、暗闇に吸い込まれるように消えてしまった。薄暗くジメジメとした室内に残ったのは、アリアの冷たい抜け殻だけだった。アリアの頬には涙が光っていた。
***********************
(1560年1月15日)
帝国の第一皇女、シトリアス.ディ.アリア.ペルリーティアであり、大魔術師の資格を持つ14歳の少女は自ら命を断ってしまった。
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