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No.??? 魔女の絵画
File:8 炎の巨人
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不味い。数的不利がひっくり返るなんて生易しい物じゃなかった。そんな小せぇ踏み台じゃ超えられねぇ壁が目の前で建設されてやがる。大男という言葉が似合うようなガタイに、魔術で作ってる訳でもねぇらしい炎まで纏ってやがる。
「では、少々動作確認を挟もう」
ギルベールはそう言うと、俺へ人差し指を向けた。不味い。何かが来る。俺は回避行動を取り、スクリーンから離れる。そしてその直後、先程まで俺が居た場所を炎が飲み込んだ。それが誰の物であるかは、文字通り火を見るよりも明らかだろう。
やはり纏っている炎を自在に操れるのか。魔術を使っている様子も無い。本当、羨ましい位便利な能力だよ。
だがまぁ、まだ『最悪』じゃねぇ。体は確かにデカくなってやがるが、その分動きはほんの少し鈍い。恐らく少しの間魔術は使わねぇ。炎にさえ気を付けていれば、回避は間に合う。
問題は、あの特性が何の物であるかだ。こんな状況は完全に想定外。推測を元に対抗策を練るしか無ぇ。現時点分かってるのは、巨体と炎。前者に関しては巨大化を続けている。あの液体を飲んで直ぐの再生は……特性と捉えるべきなんだろうか。
兎に角、全力で様子見をしよう。俺は空中で血液の武器を作り出し、それらをギルベールに向かって飛ばす。しかし奴が纏う炎は剣の形に収束し、俺が作り出した武器を全て弾いた。アレも魔術じゃねぇ。本当便利な能力だ。炎を操るってだけで説明できねぇだろこんなん。
俺はギルベールのすぐ目の前まで近付き、近接戦闘に持ち込む。先程は『慣れていないから武器は使わない』と言っていた。確かにギルベールは炎の剣を消しはしたが、その代わり、炎の手甲を作り出した。それは自在に伸縮、膨張しながら、俺の心臓を貫こうとして来る。俺の魔術でも似た事はできるが……流石にここまで無法じゃねぇ。俺は炎の熱を血液の鎧で防ぎながら、殴り合いを続ける。
やっぱ魔術は使って来ねぇ。空気の壁で理不尽な防御される事も無ぇが、その分全部の攻撃を丁寧に防いで来やがる。勿論真空を作り出す魔術を充分に警戒した上でだ。こういう所で力の差を痛感しちまう。
「やはり、良い物だな」
「へぇそんならあの世で待つ三人目と四人目への手土産にでもしたらどうだぁ!?」
「生憎だが、あの子らに手土産を送る気は無い」
「薄情だなこの野郎!」
「造物主とは、往々にしてそういう物だ」
「神にでもなったつもりかよ!」
「これからなるつもりだ」
「あぁそうかい!」
俺は足元から血液の杭を伸ばすが、やはりそれらも防がれる。だが僅かに、こちらの手数の方が多くなった。身体強化魔術を使っていない状態なら入る。俺は真空を作り出す魔術を使いながら、ギルベールの胸に触れようし、そして大きく体勢を崩し、そして蹴り飛ばされる。
何が起こった?あぁ成程。炎の温度を思い切り高めて地面を溶かし、足場を崩したのか。発想もそうだが、本当どんな能力してんだコイツ。
俺は着地と同時に地面に血液を撒き、こちらへ向かって来るギルベールを迎え撃つ為の壁を作り出す。しかし奴はそれも軽く破壊し進んで来る。とは言え若干速度は下がっている。俺はもう一度壁を作り出し、奴の視界が潰れた一瞬を見計らって一気に距離を詰めようとする。
しかしそれもまた対策された。奴は空中で大きく加速したのだ。奴はその勢いのまま俺の顔面を蹴り、反転し、俺の胸を炎の剣で貫いた。
成程空中で炎を操り、逆噴射ロケットと同じ要領で加速したのか。便利な能力……ってだけじゃねぇな。やっぱ空気を操る魔術を使用し続けた経験、感覚が、炎の操作にも活かされてんだろう。能力の使いどころ、使い方をしくじるなんてミスは期待できそうもねぇ。
「ふむ。やはり、良い物だ」
「はっは。ヒューマン・トーチもびっくりの火力だな。その能力を俺にくれりゃ良かったのによ」
「悪かった。ソフィアに失敗の兆候が見られた経験から、当時は少々慎重になり過ぎていた。まぁ気にするな。吸血鬼の特性も素敵だぞ」
「あぁそりゃありがとよクソッタレ野郎」
てかコイツ、最初よりもかなりデカくなってるよな?そりゃ巨大化は鈍化しちゃいるが……もう大男なんてモンじゃねぇ。まさかコイツ、能力を使い続けてる間延々巨大化を続けるという事か?だとしたら中々面倒だぞ。そりゃデカくなり過ぎれば動きは鈍くなるだろうが、それでも体格の差ってのは致命的になり得る。
早々に仕留められるのが理想だが、この時点で互角なんだ。さっきので仕留められなかった以上、少なくともソフィアが起きるまでは勝てねぇ。起きても勝てるかどうか分からねぇ。これは中々……不味いな。
「では、そろそろ殺すぞ」
「大人しく殺されてなんかやるかよ!」
俺は全身を蝙蝠の群れに変え、空中で人の形に変える。俺は蝙蝠の翼を生やし、滞空しながら複数の剣を作り出す。
「第五ラウンドだ!空中戦と洒落込もうぜ!」
「良いだろう付き合ってやる」
空中戦なら普段と勝手が違ぇだろう。取り敢えず時間稼ぎだ。この隙にソフィアの状態を確認して、可能なら戦闘に復帰させる。俺は蝙蝠を一匹、観客席の方向に向かって飛ばした。
「では、少々動作確認を挟もう」
ギルベールはそう言うと、俺へ人差し指を向けた。不味い。何かが来る。俺は回避行動を取り、スクリーンから離れる。そしてその直後、先程まで俺が居た場所を炎が飲み込んだ。それが誰の物であるかは、文字通り火を見るよりも明らかだろう。
やはり纏っている炎を自在に操れるのか。魔術を使っている様子も無い。本当、羨ましい位便利な能力だよ。
だがまぁ、まだ『最悪』じゃねぇ。体は確かにデカくなってやがるが、その分動きはほんの少し鈍い。恐らく少しの間魔術は使わねぇ。炎にさえ気を付けていれば、回避は間に合う。
問題は、あの特性が何の物であるかだ。こんな状況は完全に想定外。推測を元に対抗策を練るしか無ぇ。現時点分かってるのは、巨体と炎。前者に関しては巨大化を続けている。あの液体を飲んで直ぐの再生は……特性と捉えるべきなんだろうか。
兎に角、全力で様子見をしよう。俺は空中で血液の武器を作り出し、それらをギルベールに向かって飛ばす。しかし奴が纏う炎は剣の形に収束し、俺が作り出した武器を全て弾いた。アレも魔術じゃねぇ。本当便利な能力だ。炎を操るってだけで説明できねぇだろこんなん。
俺はギルベールのすぐ目の前まで近付き、近接戦闘に持ち込む。先程は『慣れていないから武器は使わない』と言っていた。確かにギルベールは炎の剣を消しはしたが、その代わり、炎の手甲を作り出した。それは自在に伸縮、膨張しながら、俺の心臓を貫こうとして来る。俺の魔術でも似た事はできるが……流石にここまで無法じゃねぇ。俺は炎の熱を血液の鎧で防ぎながら、殴り合いを続ける。
やっぱ魔術は使って来ねぇ。空気の壁で理不尽な防御される事も無ぇが、その分全部の攻撃を丁寧に防いで来やがる。勿論真空を作り出す魔術を充分に警戒した上でだ。こういう所で力の差を痛感しちまう。
「やはり、良い物だな」
「へぇそんならあの世で待つ三人目と四人目への手土産にでもしたらどうだぁ!?」
「生憎だが、あの子らに手土産を送る気は無い」
「薄情だなこの野郎!」
「造物主とは、往々にしてそういう物だ」
「神にでもなったつもりかよ!」
「これからなるつもりだ」
「あぁそうかい!」
俺は足元から血液の杭を伸ばすが、やはりそれらも防がれる。だが僅かに、こちらの手数の方が多くなった。身体強化魔術を使っていない状態なら入る。俺は真空を作り出す魔術を使いながら、ギルベールの胸に触れようし、そして大きく体勢を崩し、そして蹴り飛ばされる。
何が起こった?あぁ成程。炎の温度を思い切り高めて地面を溶かし、足場を崩したのか。発想もそうだが、本当どんな能力してんだコイツ。
俺は着地と同時に地面に血液を撒き、こちらへ向かって来るギルベールを迎え撃つ為の壁を作り出す。しかし奴はそれも軽く破壊し進んで来る。とは言え若干速度は下がっている。俺はもう一度壁を作り出し、奴の視界が潰れた一瞬を見計らって一気に距離を詰めようとする。
しかしそれもまた対策された。奴は空中で大きく加速したのだ。奴はその勢いのまま俺の顔面を蹴り、反転し、俺の胸を炎の剣で貫いた。
成程空中で炎を操り、逆噴射ロケットと同じ要領で加速したのか。便利な能力……ってだけじゃねぇな。やっぱ空気を操る魔術を使用し続けた経験、感覚が、炎の操作にも活かされてんだろう。能力の使いどころ、使い方をしくじるなんてミスは期待できそうもねぇ。
「ふむ。やはり、良い物だ」
「はっは。ヒューマン・トーチもびっくりの火力だな。その能力を俺にくれりゃ良かったのによ」
「悪かった。ソフィアに失敗の兆候が見られた経験から、当時は少々慎重になり過ぎていた。まぁ気にするな。吸血鬼の特性も素敵だぞ」
「あぁそりゃありがとよクソッタレ野郎」
てかコイツ、最初よりもかなりデカくなってるよな?そりゃ巨大化は鈍化しちゃいるが……もう大男なんてモンじゃねぇ。まさかコイツ、能力を使い続けてる間延々巨大化を続けるという事か?だとしたら中々面倒だぞ。そりゃデカくなり過ぎれば動きは鈍くなるだろうが、それでも体格の差ってのは致命的になり得る。
早々に仕留められるのが理想だが、この時点で互角なんだ。さっきので仕留められなかった以上、少なくともソフィアが起きるまでは勝てねぇ。起きても勝てるかどうか分からねぇ。これは中々……不味いな。
「では、そろそろ殺すぞ」
「大人しく殺されてなんかやるかよ!」
俺は全身を蝙蝠の群れに変え、空中で人の形に変える。俺は蝙蝠の翼を生やし、滞空しながら複数の剣を作り出す。
「第五ラウンドだ!空中戦と洒落込もうぜ!」
「良いだろう付き合ってやる」
空中戦なら普段と勝手が違ぇだろう。取り敢えず時間稼ぎだ。この隙にソフィアの状態を確認して、可能なら戦闘に復帰させる。俺は蝙蝠を一匹、観客席の方向に向かって飛ばした。
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