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No.3 果実
File:12 吸血鬼が主戦場
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「Shady Walking Path、Cowardly Excalibur」
数でも質でも私達を仕留め損なったから、次はその両方で攻めて来るか。十体の分身と、全員に剣か。とは言え、得物を使う相手の相手は慣れている。
「ジョセフ君。さっきのようには行かないよ?」
「もう時間が無い。突っ込むぞ」
「それでどうにかなるとでも?」
先程まで俺達を返り討ちにしていた形だったのが、今度は攻め手に回った。あれだけの強さを持つ男が自分から攻めて来る。不味い状況だが、同時に向こうも焦っている状態と見える。恐らくこれが奥の手。これさえ乗り越えられれば……
「って速っ!?避けた筈なのに!」
「細かい肉片に刻んでやるよ」
囲んで叩く。単純で安っぽい手だが、同時に効く手でもある。昔もよくやられたし、俺もやった。とは言え、今度はその『数』の質が全く違うが。
剣の丈はおよそ四フィート強。それに合わせて確実に避けた筈だ。それでも、俺は腹を切り裂かれた。こりゃがっつり行ったな。あと少し遅れていたら真っ二つか?再生が弱まってるのも感じる。
「ジョセフ君!何か仕掛けがある!」
「分かってる!避けた筈だ!」
「仕掛けを見破る事もできないだろう」
確かになぁ!だがそんな剣程度で……
「生憎と、弾丸も並行して使ってるんだ」
マジかよ!分身の動きもさっきとは明らかに違う!得物に弾丸にこの数……おまけに本体と分身が紛れてやがる!これじゃソフィアも当てにゃできねぇ!詰まり、俺がどうにかするしか……
「あんな身の丈程もある剣を自在に操るなんて何かある!下手に突っ込むな!」
「……は?」
身の丈程もある?確かにでかいが、そんなデカさは……あぁ成程。光の魔術。恐ろしい精度。俺とソフィアの間にある認識のズレ。これだけの違いがあれば……
「ソフィア」
「何だい?」
「明る過ぎてやり辛ぇ。照明を落としてくれ」
一体何を……一瞬考えたのが間違いだった。ソフィアと呼ばれた女は
『火薬の使用を検知しました。隔壁を展開します』
隔壁で建物が区切られる。そして照明を落とされたせいで、その内側は少しの光も存在しない暗闇となる。
いや。正確にはあった。十個の光源。私が作り出した十体の分身が。
「なっ!?」
やられた!分身は光で作られている。暗闇の中では分身は光源として働く。本体を隠す為のカモフラージュとしての役割はもう無いも同然。透明な弾丸は、透明に見せる為に歪めていた光が無い。加えこの暗闇では、下手には動かせない。
「分身も透明な弾丸も、もう無いも同然だなぁ!」
「だが剣はどうする!?」
これは暗闇ではどうにもならないだろう!この暗闇では真面には見えない筈だ!コイツさえ殺せればあの女も……!
だが、剣の切っ先がジョセフに届く事は無かった。ジョセフは私の剣の先端を掴み、「ヒヒッ」と小さく笑い声を漏らす。
「何故……私の剣の先端が見えている?」
「お前は光を歪める事で、剣の長さを誤魔化していたんだろう?歪ませる光が無いお陰で、正しく丈を測れる」
「この暗さでは見えないだろう!」
「おいおい。ボケるには早くないか?俺は吸血鬼だぜ?」
先程の『やり辛い』は、本来夜行性で夜に適した、吸血鬼の眼だからこその言葉だったのか!だとしたら、今のジョセフの動体視力は、更に一段上の段階になっている!
「だが!剣が消えた訳じゃない!」
分身に持たせていた十本の剣!これは未だ健在だ!この全てを使えば動きを封じる位なら……
「何の話だ?もう一本も残ってねぇぞ?」
「そんな訳が無いだろう!」
分身は全て私と同期している!剣の状態なんて丸わかり……の筈……なのに……剣の先端が消えている。折れた訳でも削れた訳でもなく、ただただ、消えている。まるで最初から無かったように。
「何故だ!」
「俺の魔術は、真空を作り出す。だがそれは、そこに物体があろうと関係無い。それすら消し飛ばして、真空にするんだよ」
「なっ!?」
見誤ったというのか!?この私が!?敵の魔術を!?それどころか、一方的に魔術を見破られ、こんな……
「お膳立ては済んだ。後は頼むぜソフィア」
「あぁ。分かっている」
「何を……」
ぐっ!?一体何が……頭が……割れる……?回る?首が……?えぁ?ぎ……あ……
あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
「……ジョ……セ……フ……」
「悪く思え。私の夢の為だ」
数でも質でも私達を仕留め損なったから、次はその両方で攻めて来るか。十体の分身と、全員に剣か。とは言え、得物を使う相手の相手は慣れている。
「ジョセフ君。さっきのようには行かないよ?」
「もう時間が無い。突っ込むぞ」
「それでどうにかなるとでも?」
先程まで俺達を返り討ちにしていた形だったのが、今度は攻め手に回った。あれだけの強さを持つ男が自分から攻めて来る。不味い状況だが、同時に向こうも焦っている状態と見える。恐らくこれが奥の手。これさえ乗り越えられれば……
「って速っ!?避けた筈なのに!」
「細かい肉片に刻んでやるよ」
囲んで叩く。単純で安っぽい手だが、同時に効く手でもある。昔もよくやられたし、俺もやった。とは言え、今度はその『数』の質が全く違うが。
剣の丈はおよそ四フィート強。それに合わせて確実に避けた筈だ。それでも、俺は腹を切り裂かれた。こりゃがっつり行ったな。あと少し遅れていたら真っ二つか?再生が弱まってるのも感じる。
「ジョセフ君!何か仕掛けがある!」
「分かってる!避けた筈だ!」
「仕掛けを見破る事もできないだろう」
確かになぁ!だがそんな剣程度で……
「生憎と、弾丸も並行して使ってるんだ」
マジかよ!分身の動きもさっきとは明らかに違う!得物に弾丸にこの数……おまけに本体と分身が紛れてやがる!これじゃソフィアも当てにゃできねぇ!詰まり、俺がどうにかするしか……
「あんな身の丈程もある剣を自在に操るなんて何かある!下手に突っ込むな!」
「……は?」
身の丈程もある?確かにでかいが、そんなデカさは……あぁ成程。光の魔術。恐ろしい精度。俺とソフィアの間にある認識のズレ。これだけの違いがあれば……
「ソフィア」
「何だい?」
「明る過ぎてやり辛ぇ。照明を落としてくれ」
一体何を……一瞬考えたのが間違いだった。ソフィアと呼ばれた女は
『火薬の使用を検知しました。隔壁を展開します』
隔壁で建物が区切られる。そして照明を落とされたせいで、その内側は少しの光も存在しない暗闇となる。
いや。正確にはあった。十個の光源。私が作り出した十体の分身が。
「なっ!?」
やられた!分身は光で作られている。暗闇の中では分身は光源として働く。本体を隠す為のカモフラージュとしての役割はもう無いも同然。透明な弾丸は、透明に見せる為に歪めていた光が無い。加えこの暗闇では、下手には動かせない。
「分身も透明な弾丸も、もう無いも同然だなぁ!」
「だが剣はどうする!?」
これは暗闇ではどうにもならないだろう!この暗闇では真面には見えない筈だ!コイツさえ殺せればあの女も……!
だが、剣の切っ先がジョセフに届く事は無かった。ジョセフは私の剣の先端を掴み、「ヒヒッ」と小さく笑い声を漏らす。
「何故……私の剣の先端が見えている?」
「お前は光を歪める事で、剣の長さを誤魔化していたんだろう?歪ませる光が無いお陰で、正しく丈を測れる」
「この暗さでは見えないだろう!」
「おいおい。ボケるには早くないか?俺は吸血鬼だぜ?」
先程の『やり辛い』は、本来夜行性で夜に適した、吸血鬼の眼だからこその言葉だったのか!だとしたら、今のジョセフの動体視力は、更に一段上の段階になっている!
「だが!剣が消えた訳じゃない!」
分身に持たせていた十本の剣!これは未だ健在だ!この全てを使えば動きを封じる位なら……
「何の話だ?もう一本も残ってねぇぞ?」
「そんな訳が無いだろう!」
分身は全て私と同期している!剣の状態なんて丸わかり……の筈……なのに……剣の先端が消えている。折れた訳でも削れた訳でもなく、ただただ、消えている。まるで最初から無かったように。
「何故だ!」
「俺の魔術は、真空を作り出す。だがそれは、そこに物体があろうと関係無い。それすら消し飛ばして、真空にするんだよ」
「なっ!?」
見誤ったというのか!?この私が!?敵の魔術を!?それどころか、一方的に魔術を見破られ、こんな……
「お膳立ては済んだ。後は頼むぜソフィア」
「あぁ。分かっている」
「何を……」
ぐっ!?一体何が……頭が……割れる……?回る?首が……?えぁ?ぎ……あ……
あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
「……ジョ……セ……フ……」
「悪く思え。私の夢の為だ」
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