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No.5 英雄
File:12 人ならざる
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どういう事だ?ソフィアは間違い無くただの人間だった筈……何故あんな物がある?あれじゃまるで、魔物や妖怪の類のような……
「ジョセフ君……少し……恥ずかしいんだが……」
「悪い……だがお前、その……体の……」
「分かってる……見たからね……ジョセフ君。何か着る物はあるかな?」
「え……あぁ……」
ソフィアは俺が着ていた上着を受け取りながら起き上がると、気に背を預けた。どうやら痛みも引いて来たようで、ソフィアは一度深く深く深呼吸してから、受け取ったそれを羽織った。顔を上げたソフィアの表情は痛みに歪んでこそいたが、それでも目だけははっきりと、何かを見据えていた。
「だが私もコレについてはほとんどの事が分からない。説明できる事は無い」
「そう……か。分かった」
『知るべきだ』と、『知らなければならない』と、体のずっと奥の方から、俺の魂が叫んでいる。だが今考えるべきは、ソフィアの体に何が起きているかじゃない。どう第三勢力を扱い、どう協会の魔術師を殺すかだ。
第三勢力の狙いは俺とソフィア。または協会の魔術師。或いはその両方。あぁクソこれじゃあどうしようも無ぇ。如何せん分からねぇ事が多過ぎる。あぁしかし、どちらにせよ攻撃受けるんだ。ここはどうでも良い。
先ず攻撃手段だ。第三勢力は通常兵器しか見せていない。魔術や神秘の遺産を使用される可能性も十二分にある。だが使う気なら初手で使って、確実に標的を殺す筈。少なくとも俺ならそうする。居場所を特定させないという意味合いを込めて使用しないと考えながら、警戒だけは続けよう。
ソフィアはまだ分からんが、俺は少なくとも通常兵器では死なねぇ。第三勢力の場所を把握し、ソイツに背を向けるような形で魔術師と一直線になるように立ち回れば、巻き込むような形で魔術師に攻撃を当てられるか、それが叶わずとも隙を作れるだろう。まぁ、作れるかどうかも微妙だが……
まぁ、やらなきゃ結局やられる。夜明けが遠い訳でもねぇ。やるしか生きる道は無ぇんだ。俺は体に兄貴の方の魔力が付着していないかを確認してから、少し体を伸ばす。
「俺は面倒そうな兄貴の方に行く。上手く行けば奴を巻き込む形で殺せる。お前は……」
「もう動ける。仕組みは分からないが、体は頑丈になっているようだ」
「その鱗がどう作用するのかまだ分からん。武器も無くなってんだろ?お前は一先ず……」
「大丈夫。痛みが引いてからなんでか体が軽いんだ。さっきより動ける。それに少し頑丈になったみたいだ。試させておくれよ」
「だからってなぁ……」
コイツを動かすには少し不確定要素が多過ぎる。今分かっているのは、恐らくこの鱗が出てからソフィアの体が頑丈になったであろう事と、身体能力が上がった可能性があるという事だけ。今は良い面だけが出ているが、鱗が全く不利に働かないとも限らねぇ。そもそも急に体に変化が表れて、上手く動かせる保証は無ぇ。俺も吸血鬼の状態に慣れるまで、そこそこ時間が掛かった。そんな状態でいきなり、協会の最高戦力と戦わせるのは……
だが、俺一人だけで戦うのは無謀だという事も分かっている。あの二人相手に二対一は無理だ。第三勢力の横槍もある。ここにソフィアを置いて行けば、近くに居るであろう弟の方が襲って来ねぇとも限らん。そうなれば結局、ソフィアと奴の戦闘が始まる。それも確実に先手を取られた状態でだ。先手を取られる位なら、こちらから攻めた方が良い。
「分かった。どう戦うかは任せるが、先手だけは取られるなよ?」
「分かってるから安心すると良い。あそうだ。血、吸っておくかい?」
今まで人間の血しか吸っちゃいねぇ俺が、純粋な人間じゃねぇだろうコイツの血ぃ吸う影響も計り知れねぇが……まぁ、輸血パックも巨人に潰された時に一緒に潰れたんだ。今の状態じゃ身体能力だけ取っても競り負ける。仕方無ぇよな。
「……貰っとく」
「ん……ほら。良いよ」
俺は差し出された首元に噛み付き、溢れて来る血を飲む。体が少しずつ熱くなり、それは体に馴染む事無く、全身を絶えず打ち震わせる。体の熱が最大まで達すると、俺は首から口を離し、手で唇を拭う。ソフィアは痛みなど無かったかのように首を腕で擦りながら、ゆっくりと立ち上がる。
「大分吸ったが……大丈夫か?」
「問題無いよ。一回だけならね」
「なら良い」
俺は全身を蝙蝠の形に変化させ、空へ飛び立った。ソフィアにはあぁ言ったが、先手を取られたら確実に負けるのは俺の方だ。だが何がトリガーになっているかすら見当がつかねぇ。先手を取られるのはほぼ確実。そうなっちまえばもう……だ~クソ。腐ったジャーキー見つけた時の捨て犬の気分だクソッ垂れ。
さっきの感覚を刈り取る魔術……アレのカラクリが分からねぇ事には、万に一つも勝ち目は無ぇ。魔術の仕組みと解除方法。両方……いや、片方だけでも良い。兎に角掴まなければ。
「まぁ、思い付く限りの事を全部試せば良いか」
俺は自分の心臓に細工をしながら、さっきの場所へ向かって飛んだ。
「ジョセフ君……少し……恥ずかしいんだが……」
「悪い……だがお前、その……体の……」
「分かってる……見たからね……ジョセフ君。何か着る物はあるかな?」
「え……あぁ……」
ソフィアは俺が着ていた上着を受け取りながら起き上がると、気に背を預けた。どうやら痛みも引いて来たようで、ソフィアは一度深く深く深呼吸してから、受け取ったそれを羽織った。顔を上げたソフィアの表情は痛みに歪んでこそいたが、それでも目だけははっきりと、何かを見据えていた。
「だが私もコレについてはほとんどの事が分からない。説明できる事は無い」
「そう……か。分かった」
『知るべきだ』と、『知らなければならない』と、体のずっと奥の方から、俺の魂が叫んでいる。だが今考えるべきは、ソフィアの体に何が起きているかじゃない。どう第三勢力を扱い、どう協会の魔術師を殺すかだ。
第三勢力の狙いは俺とソフィア。または協会の魔術師。或いはその両方。あぁクソこれじゃあどうしようも無ぇ。如何せん分からねぇ事が多過ぎる。あぁしかし、どちらにせよ攻撃受けるんだ。ここはどうでも良い。
先ず攻撃手段だ。第三勢力は通常兵器しか見せていない。魔術や神秘の遺産を使用される可能性も十二分にある。だが使う気なら初手で使って、確実に標的を殺す筈。少なくとも俺ならそうする。居場所を特定させないという意味合いを込めて使用しないと考えながら、警戒だけは続けよう。
ソフィアはまだ分からんが、俺は少なくとも通常兵器では死なねぇ。第三勢力の場所を把握し、ソイツに背を向けるような形で魔術師と一直線になるように立ち回れば、巻き込むような形で魔術師に攻撃を当てられるか、それが叶わずとも隙を作れるだろう。まぁ、作れるかどうかも微妙だが……
まぁ、やらなきゃ結局やられる。夜明けが遠い訳でもねぇ。やるしか生きる道は無ぇんだ。俺は体に兄貴の方の魔力が付着していないかを確認してから、少し体を伸ばす。
「俺は面倒そうな兄貴の方に行く。上手く行けば奴を巻き込む形で殺せる。お前は……」
「もう動ける。仕組みは分からないが、体は頑丈になっているようだ」
「その鱗がどう作用するのかまだ分からん。武器も無くなってんだろ?お前は一先ず……」
「大丈夫。痛みが引いてからなんでか体が軽いんだ。さっきより動ける。それに少し頑丈になったみたいだ。試させておくれよ」
「だからってなぁ……」
コイツを動かすには少し不確定要素が多過ぎる。今分かっているのは、恐らくこの鱗が出てからソフィアの体が頑丈になったであろう事と、身体能力が上がった可能性があるという事だけ。今は良い面だけが出ているが、鱗が全く不利に働かないとも限らねぇ。そもそも急に体に変化が表れて、上手く動かせる保証は無ぇ。俺も吸血鬼の状態に慣れるまで、そこそこ時間が掛かった。そんな状態でいきなり、協会の最高戦力と戦わせるのは……
だが、俺一人だけで戦うのは無謀だという事も分かっている。あの二人相手に二対一は無理だ。第三勢力の横槍もある。ここにソフィアを置いて行けば、近くに居るであろう弟の方が襲って来ねぇとも限らん。そうなれば結局、ソフィアと奴の戦闘が始まる。それも確実に先手を取られた状態でだ。先手を取られる位なら、こちらから攻めた方が良い。
「分かった。どう戦うかは任せるが、先手だけは取られるなよ?」
「分かってるから安心すると良い。あそうだ。血、吸っておくかい?」
今まで人間の血しか吸っちゃいねぇ俺が、純粋な人間じゃねぇだろうコイツの血ぃ吸う影響も計り知れねぇが……まぁ、輸血パックも巨人に潰された時に一緒に潰れたんだ。今の状態じゃ身体能力だけ取っても競り負ける。仕方無ぇよな。
「……貰っとく」
「ん……ほら。良いよ」
俺は差し出された首元に噛み付き、溢れて来る血を飲む。体が少しずつ熱くなり、それは体に馴染む事無く、全身を絶えず打ち震わせる。体の熱が最大まで達すると、俺は首から口を離し、手で唇を拭う。ソフィアは痛みなど無かったかのように首を腕で擦りながら、ゆっくりと立ち上がる。
「大分吸ったが……大丈夫か?」
「問題無いよ。一回だけならね」
「なら良い」
俺は全身を蝙蝠の形に変化させ、空へ飛び立った。ソフィアにはあぁ言ったが、先手を取られたら確実に負けるのは俺の方だ。だが何がトリガーになっているかすら見当がつかねぇ。先手を取られるのはほぼ確実。そうなっちまえばもう……だ~クソ。腐ったジャーキー見つけた時の捨て犬の気分だクソッ垂れ。
さっきの感覚を刈り取る魔術……アレのカラクリが分からねぇ事には、万に一つも勝ち目は無ぇ。魔術の仕組みと解除方法。両方……いや、片方だけでも良い。兎に角掴まなければ。
「まぁ、思い付く限りの事を全部試せば良いか」
俺は自分の心臓に細工をしながら、さっきの場所へ向かって飛んだ。
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