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No.5 英雄
File:18 一斉家宅捜査
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決行の日。指定された時間、割り当てられた場所に集合という手筈だったんだが……
「なんで君と二人きりなんだい?ジョセフ君」
集合地点に居たのはジョセフ君一人で、他には誰も見当たらない。一週間前に見せてもらった名簿からは考えられない。
「世界単位で動かねぇと意味が無ぇ。だが一つの場所に十人二十人も使えねぇからな」
「ま、そうだろうね。私達二人で十分かな?」
「あぁ。ここに住んでる魔術師の情報は共有してあるだろう?」
詳しく作戦を練る余裕は無かったが、魔術師に『絵画を持っているか』と聞いて、持っているようなら奪い、持っていないなら帰るだけだ。戦闘になれば負ける可能性もあるし、そこはなるべく避けたい。注意事項には『人は殺さない』みたいな事が書いてあったのだし。
「行くぞ。準備は良いな?」
「あぁ勿論。さっさと済ませよう」
先ず千里眼で嘘を見抜ける私が相手と話す。撤収して良しとなればさっさと帰る。絵画を持っているとなれば、結界の外で待機するジョセフ君が突入、絵画を強奪し、撤退する。蝙蝠の群れになれば、攻撃をすり抜けて行くのも容易だろう。まぁ、相手が市街地への流れ弾を気にしない性格であれば別だが。
『黒猫』は私達の顔を把握している。初っ端から戦闘に入るのを防ぐため、フードを深く被った私は、早速玄関のベルを鳴らした。少ししてから、寝間着姿で眠そうに目を擦りながら、体格の良い男が現れた。
「なんだよ……夜遅くに……」
魔術師である事は確か。魔力を感じるし、千里眼はその色を捉えている。ここまでは問題無し。
「聞きたい事がある」
「だから何なんだよ……はよしてくれ」
「この家に『魔女の絵画』はあるか?」
「……してない。お前も魔術師なのか?」
嘘の色は見えない。どうやら彼は絵画を保有していないらしい。だが、まだ聞きたい事は残っている。
「お前は『黒猫』か?」
男はその言葉に反応したのか、黙ってしまった。これは……アタリか?この男が絵画を保有していない事を鑑みるに、『黒猫』は個人ではなく複数人の魔術師が集まって行動していたか、誰かの依頼か指令で動いていた個人と考えるべきだろう。
しかしどちらであろうと変わらない。ここに居るのはこの男一人。増援も、この狭いスペースにぞろぞろと来れば逆効果だ。一対一で、近接戦闘……私の得意だ。
「『YES』だな?」
「……あぁそうだよ。それで、お前は何者だ?」
少し後ずさりながら、手を腰の後ろに回している……杖か。いつでも魔術を使えると?先の戦いを見ていたのなら、こちらの戦い方は分かっている筈だが……問題無い。速攻で潰す。
「答える義理は無い」
「そうかよ!」
男は魔法陣を展開し、魔術を発動させようとする。しかし蝙蝠の姿になったジョセフ君が杖を弾き、同時に魔法陣を崩した事で、その行動は叶わないまま終わった。
「使い魔!?」
「絵画は無い!繋がりを探せ!」
ジョセフ君は無事に家の中に入った。ならばこっちはさっさと無力化させれば良し。私は一歩下がってから左足で踏み込み、男の股間を蹴り上げた。気色の悪い感触が足に伝わると同時に、男は白目を剥いて、床に倒れ込んだ。私はその隙を逃さず、男の両手両足を結束バンドで縛った上で、口に猿ぐつわを噛ませ、目隠しを着けさせた。
絵画が無いと言っても、今現在絵画を持っている人間と全く繋がりが無い訳が無い。もうジョセフ君が調べ始めている筈だ。私も直ぐに行かなければ。
と、立ち上がろうとした瞬間、私の首元に冷たく、鋭く、硬い物が押し当てられた。もう一人居たのか。まぁ、当たり前か。この男だけな訳が無い。弱すぎる。
「……賢い使い魔だ。蝙蝠のような低レベルな使い魔をどんなに調教しようが、あそこまで正確に魔力を隠匿する事は不可能だ。普通はな」
「お褒め頂き光栄だよ『黒猫』様?」
「最近のドブネズミは頭が良いのか。使い魔を従えるだけでなく、口を利けるとは」
ジョセフ君は来ていない……こちらに気付いていないのか?この男も相当魔力を隠すのが上手い。ジョセフ君を警戒しているのか、今も魔力を隠したままでいる。
敵が私に向けているのが拳銃だったら良かったんだが……ナイフでは反撃できないかも知れない。私の体がどの程度の攻撃に耐えられるのかは不明だ。爆風のような面の攻撃に強い反面、刃物には弱いという可能性だってある。この二週間で検証しておけば良かった。
「貴様らは『絵画泥棒』だろう?絵画を奪い返しに来たという訳か」
「ここには無いんだろう?絵画の行方を探りに来たのさ」
「ならば殺そう」
私の首を掻き切って殺そうと、男はナイフを引こうと一層強く押し当てる。しかし、そこの間が命取りとなった。サイレンサーによって抑えられた銃声が響き、私の首からナイフが離れて行く。私はその一瞬で男の体を突き飛ばし、丁度良い距離になった所で腹に蹴りを入れた。
「頭を撃たなかったんだね」
「『殺すな』って話だ。文句あるか?」
「いや助かったよ。ありがとう」
男は玄関先で丸まりながら、呻き声を垂れ流している。今の内に拘束して転がしておくか。
「なんで君と二人きりなんだい?ジョセフ君」
集合地点に居たのはジョセフ君一人で、他には誰も見当たらない。一週間前に見せてもらった名簿からは考えられない。
「世界単位で動かねぇと意味が無ぇ。だが一つの場所に十人二十人も使えねぇからな」
「ま、そうだろうね。私達二人で十分かな?」
「あぁ。ここに住んでる魔術師の情報は共有してあるだろう?」
詳しく作戦を練る余裕は無かったが、魔術師に『絵画を持っているか』と聞いて、持っているようなら奪い、持っていないなら帰るだけだ。戦闘になれば負ける可能性もあるし、そこはなるべく避けたい。注意事項には『人は殺さない』みたいな事が書いてあったのだし。
「行くぞ。準備は良いな?」
「あぁ勿論。さっさと済ませよう」
先ず千里眼で嘘を見抜ける私が相手と話す。撤収して良しとなればさっさと帰る。絵画を持っているとなれば、結界の外で待機するジョセフ君が突入、絵画を強奪し、撤退する。蝙蝠の群れになれば、攻撃をすり抜けて行くのも容易だろう。まぁ、相手が市街地への流れ弾を気にしない性格であれば別だが。
『黒猫』は私達の顔を把握している。初っ端から戦闘に入るのを防ぐため、フードを深く被った私は、早速玄関のベルを鳴らした。少ししてから、寝間着姿で眠そうに目を擦りながら、体格の良い男が現れた。
「なんだよ……夜遅くに……」
魔術師である事は確か。魔力を感じるし、千里眼はその色を捉えている。ここまでは問題無し。
「聞きたい事がある」
「だから何なんだよ……はよしてくれ」
「この家に『魔女の絵画』はあるか?」
「……してない。お前も魔術師なのか?」
嘘の色は見えない。どうやら彼は絵画を保有していないらしい。だが、まだ聞きたい事は残っている。
「お前は『黒猫』か?」
男はその言葉に反応したのか、黙ってしまった。これは……アタリか?この男が絵画を保有していない事を鑑みるに、『黒猫』は個人ではなく複数人の魔術師が集まって行動していたか、誰かの依頼か指令で動いていた個人と考えるべきだろう。
しかしどちらであろうと変わらない。ここに居るのはこの男一人。増援も、この狭いスペースにぞろぞろと来れば逆効果だ。一対一で、近接戦闘……私の得意だ。
「『YES』だな?」
「……あぁそうだよ。それで、お前は何者だ?」
少し後ずさりながら、手を腰の後ろに回している……杖か。いつでも魔術を使えると?先の戦いを見ていたのなら、こちらの戦い方は分かっている筈だが……問題無い。速攻で潰す。
「答える義理は無い」
「そうかよ!」
男は魔法陣を展開し、魔術を発動させようとする。しかし蝙蝠の姿になったジョセフ君が杖を弾き、同時に魔法陣を崩した事で、その行動は叶わないまま終わった。
「使い魔!?」
「絵画は無い!繋がりを探せ!」
ジョセフ君は無事に家の中に入った。ならばこっちはさっさと無力化させれば良し。私は一歩下がってから左足で踏み込み、男の股間を蹴り上げた。気色の悪い感触が足に伝わると同時に、男は白目を剥いて、床に倒れ込んだ。私はその隙を逃さず、男の両手両足を結束バンドで縛った上で、口に猿ぐつわを噛ませ、目隠しを着けさせた。
絵画が無いと言っても、今現在絵画を持っている人間と全く繋がりが無い訳が無い。もうジョセフ君が調べ始めている筈だ。私も直ぐに行かなければ。
と、立ち上がろうとした瞬間、私の首元に冷たく、鋭く、硬い物が押し当てられた。もう一人居たのか。まぁ、当たり前か。この男だけな訳が無い。弱すぎる。
「……賢い使い魔だ。蝙蝠のような低レベルな使い魔をどんなに調教しようが、あそこまで正確に魔力を隠匿する事は不可能だ。普通はな」
「お褒め頂き光栄だよ『黒猫』様?」
「最近のドブネズミは頭が良いのか。使い魔を従えるだけでなく、口を利けるとは」
ジョセフ君は来ていない……こちらに気付いていないのか?この男も相当魔力を隠すのが上手い。ジョセフ君を警戒しているのか、今も魔力を隠したままでいる。
敵が私に向けているのが拳銃だったら良かったんだが……ナイフでは反撃できないかも知れない。私の体がどの程度の攻撃に耐えられるのかは不明だ。爆風のような面の攻撃に強い反面、刃物には弱いという可能性だってある。この二週間で検証しておけば良かった。
「貴様らは『絵画泥棒』だろう?絵画を奪い返しに来たという訳か」
「ここには無いんだろう?絵画の行方を探りに来たのさ」
「ならば殺そう」
私の首を掻き切って殺そうと、男はナイフを引こうと一層強く押し当てる。しかし、そこの間が命取りとなった。サイレンサーによって抑えられた銃声が響き、私の首からナイフが離れて行く。私はその一瞬で男の体を突き飛ばし、丁度良い距離になった所で腹に蹴りを入れた。
「頭を撃たなかったんだね」
「『殺すな』って話だ。文句あるか?」
「いや助かったよ。ありがとう」
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