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No.7 天籟
File:7 SAMURAI
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迎撃の構え。そして相手の得物は腰に構えた刀の一本だけ。詰まり、来ると分かってる迎撃さえ躱せれば、後はこっちの好きにできる。こっちから行くのが最善。俺は体勢を地面に着きそうな程低くし、一気に骸骨侍へ向かって行く。
懐へ入った。それは間違い無い。俺は右手の斧で、骸骨を股から左肩へ、切り上げるように砕こうとする。いや実際、振り上げ、そして微かに、骨と斧が接触する手応えを感じた。しかし俺は、視界の端に映った光景に、一筋の違和感を覚えてしまった。
そしてその瞬間、俺の体は右肩から左脇腹に掛けて切断された。血液や内臓、そして内臓の中にあった物……俺の体を構成していた様々な物が、その多様さに似合わない程同じ様子で地面に落下する。俺は直ぐに切断された体を再生し、骸骨侍の間合いから一歩離れる。
見えなかった。捉える事ができなかった。気が付いた時には刀が振り抜かれていた。どうやら俺は、日本の『侍』という物を嘗めていたらしい。まさかこうも速いとは。
再生能力があるから切断自体は怖かねぇ。だが問題は、コイツを倒せない事と、倒せたとして時間が掛かる事だ。少なくとも、遠く離れている蝙蝠に意識を分散させている今の状態で勝てる相手じゃねぇ。今は探索を進めるより、この障害を一刻も早く取り除く事の方が重要だ。俺は林のそこかしこへ飛ばしていた蝙蝠を呼び、多くを体に戻し、一部を周囲に飛ばしたままにする。
「さて。どうする?」
先ず、近接戦闘じゃ勝てねぇ。不意を突こうにも、相手はそもそも目が無ぇ。視界じゃなく、恐らく気配か魔力か、最悪空気の動きか何かで、俺の動きを捉えて来てやがる。見た感じ、さっきからよく見る有象無象よりも大分ゴツい。俺の貧弱な遠距離攻撃でどうこうできる相手かも疑問だ。何より弾かれて終わりだろう。
とくれば、避ける事も防ぐ事もできねぇような攻撃を繰り出すしか手は無ぇ。準備に多少時間が掛かるが……考え得る限りはそれが最良。分の悪い賭けにはなるが、勝算が無ぇ訳じゃねぇ。
だがその考えを断ち切るように、骸骨侍が俺の足元に現れた。そしてとうに、刃は振り抜かれている。俺の体は再び切断され、そして再生する。だが今度はそれだけではないらしく、骸骨侍は刀を両手で持ち直し、再度振り抜く。一歩下がったお陰で切断とは行かなかったが、それでも大きく切り裂かれた体からは、大量の血液が漏れ出る。
俺は左手に構えた銃の引き金を引き、二発の弾丸を発射する。コイツは確かに拳銃だが、魔術で補強、改造されている。通常の拳銃とそう変わらない反動で、対物ライフルのような威力を出す事ができるとかいう、とんでもねぇ代物だ。どうせならこれを手元に留めておきてぇが……叶わねぇ夢は捨てるか。
当たりゃコイツもただじゃ済まねぇ。避けりゃ反撃の隙が生まれる。一発入れられりゃ、こんな骸骨程度簡単に砕ける。俺は斧を握る右手に力を込め、それを振り被る。
骸骨侍は微かに動きを見せた。回避にしては小さ過ぎる、繊細過ぎる動き。だが、それで十分だった。二発の弾丸は骨と骨の隙間を通り抜け、地面に穴を開ける。その一方で、骸骨侍は地面へ向けていた刃を円形に振り抜き、俺の両腕を切断する。
「そんなんアリかよ……っ!」
言ってる場合か!まだ両足が残っているだろうが!俺は右足を振り上げ、骸骨侍を蹴り飛ばす。有象無象よりも重い反動が足へ響いたが、それでもまだ軽い。一瞬宙へ浮いた骸骨侍は容易く着地し、再度迎撃の構えを取る。
俺は両腕を再生させ、地面に落ちている斧と銃を拾い上げる。だが今度はさっきと違う。俺は斧を骸骨侍へ投げ飛ばし、刀を振り抜かせる。斧は容易く弾かれ、後ろの木に刺さるが、振り抜いた直後じゃ俺を斬る事はできねぇ。俺は勢いを乗せたまま拳を振り被り、それを骸骨侍の頭へ向かって繰り出す。
だが骸骨侍はそれを許さず、刀を振り抜いた勢いを利用して回転し、頭に当たった拳を逸らし、そのまま俺の胴体を真っ二つに切断した。俺は下半身を直ぐに再生させ、今度は左の拳を構える。それを捉えた骸骨侍は後ろへ跳び、俺の拳を避けた。俺はすかさず右腕を骸骨へ向かってかざし、一言、呪文を唱える。
「『Kommen』!」
すると、先程投げた斧が骸骨侍の背後から飛んで来る。骸骨侍はそれを避け、俺はそのまま斧を手に取る。
この斧も魔道具だ。神話や伝承の中に登場する武器を再現する研究の一環で製造された、強度が大幅に上昇し、特定の呪文を唱える事で、持ち主の手元へ帰って来る武器。シンプルだが、扱い易くて良い。
俺は再び銃の引き金を引いた。今度は三発。俺は強く地面を蹴り、右手の斧を振り被る。弾丸が通じねぇのは分かった。だが体の動きには多少の制限が掛かる筈だ。反撃されるだろうが、それでも良い。一撃入れる。それだけで良い。
俺は振り被った斧を、そのまま骸骨侍へ向かって投擲する。勿論斧は簡単に弾かれたが、今度はその後の展開を変える。俺は真空を作り出す魔術を使い、敵へ向かってその空間を押し付ける。だが何かを察知したらしく、骸骨侍は俺の右の掌を避けるようにして、俺の右腕を切り落とした。
そして骸骨侍は決まって、振り下ろした刃を、今度は切り上げるようにして使う。俺の頭は縦に両断され、次の一歩を踏み出せなくなる。再生が始まる一瞬前、骸骨侍は俺を、大きく後ろへ蹴り飛ばした。
「クソ……」
割れた頭部を再生し、再び立ち上がろうとした俺だったが、それよりも先に、骸骨侍が残った四肢を斬り落とした。勿論再生が始まる。だが今度は訳が違う。刃を振り、そして向きを変え、また切り裂く。再生と同じ速度で、俺の体に傷を付け続ける。確かにこれじゃ俺は動けねぇ。流石に今回ばかりは……
と、考える道理なんざ俺には無ぇ。
突然、骸骨侍の動きが止まった。攻撃が止み、再生が完了した俺は立ち上がった。まさか再生能力の弱点を初見で見破って来るとは思わなかったが……まぁ、終わり良ければ何とやらだ。
攻撃を避ける事はできなかった。さっきのも、それより前のも。だが避ける事ができねぇなら、端からそれを勘定に入れりゃ良い。幸い、俺が使うのは血液を操る魔術だ。斬られて、地面に飛び散った血液を利用して、全身を縛る拘束具を作り出した。動きが素早いなら、動きを封じちまえばそれ終わる。
「脳味噌が無ぇ骸骨に説明すんのも馬鹿らしいから、説明してやんねぇけど」
そう言ってから、俺は再び真空を作り出す魔術を発動し、骸骨侍の全身を消し飛ばした。大分……疲れたような木がする。
懐へ入った。それは間違い無い。俺は右手の斧で、骸骨を股から左肩へ、切り上げるように砕こうとする。いや実際、振り上げ、そして微かに、骨と斧が接触する手応えを感じた。しかし俺は、視界の端に映った光景に、一筋の違和感を覚えてしまった。
そしてその瞬間、俺の体は右肩から左脇腹に掛けて切断された。血液や内臓、そして内臓の中にあった物……俺の体を構成していた様々な物が、その多様さに似合わない程同じ様子で地面に落下する。俺は直ぐに切断された体を再生し、骸骨侍の間合いから一歩離れる。
見えなかった。捉える事ができなかった。気が付いた時には刀が振り抜かれていた。どうやら俺は、日本の『侍』という物を嘗めていたらしい。まさかこうも速いとは。
再生能力があるから切断自体は怖かねぇ。だが問題は、コイツを倒せない事と、倒せたとして時間が掛かる事だ。少なくとも、遠く離れている蝙蝠に意識を分散させている今の状態で勝てる相手じゃねぇ。今は探索を進めるより、この障害を一刻も早く取り除く事の方が重要だ。俺は林のそこかしこへ飛ばしていた蝙蝠を呼び、多くを体に戻し、一部を周囲に飛ばしたままにする。
「さて。どうする?」
先ず、近接戦闘じゃ勝てねぇ。不意を突こうにも、相手はそもそも目が無ぇ。視界じゃなく、恐らく気配か魔力か、最悪空気の動きか何かで、俺の動きを捉えて来てやがる。見た感じ、さっきからよく見る有象無象よりも大分ゴツい。俺の貧弱な遠距離攻撃でどうこうできる相手かも疑問だ。何より弾かれて終わりだろう。
とくれば、避ける事も防ぐ事もできねぇような攻撃を繰り出すしか手は無ぇ。準備に多少時間が掛かるが……考え得る限りはそれが最良。分の悪い賭けにはなるが、勝算が無ぇ訳じゃねぇ。
だがその考えを断ち切るように、骸骨侍が俺の足元に現れた。そしてとうに、刃は振り抜かれている。俺の体は再び切断され、そして再生する。だが今度はそれだけではないらしく、骸骨侍は刀を両手で持ち直し、再度振り抜く。一歩下がったお陰で切断とは行かなかったが、それでも大きく切り裂かれた体からは、大量の血液が漏れ出る。
俺は左手に構えた銃の引き金を引き、二発の弾丸を発射する。コイツは確かに拳銃だが、魔術で補強、改造されている。通常の拳銃とそう変わらない反動で、対物ライフルのような威力を出す事ができるとかいう、とんでもねぇ代物だ。どうせならこれを手元に留めておきてぇが……叶わねぇ夢は捨てるか。
当たりゃコイツもただじゃ済まねぇ。避けりゃ反撃の隙が生まれる。一発入れられりゃ、こんな骸骨程度簡単に砕ける。俺は斧を握る右手に力を込め、それを振り被る。
骸骨侍は微かに動きを見せた。回避にしては小さ過ぎる、繊細過ぎる動き。だが、それで十分だった。二発の弾丸は骨と骨の隙間を通り抜け、地面に穴を開ける。その一方で、骸骨侍は地面へ向けていた刃を円形に振り抜き、俺の両腕を切断する。
「そんなんアリかよ……っ!」
言ってる場合か!まだ両足が残っているだろうが!俺は右足を振り上げ、骸骨侍を蹴り飛ばす。有象無象よりも重い反動が足へ響いたが、それでもまだ軽い。一瞬宙へ浮いた骸骨侍は容易く着地し、再度迎撃の構えを取る。
俺は両腕を再生させ、地面に落ちている斧と銃を拾い上げる。だが今度はさっきと違う。俺は斧を骸骨侍へ投げ飛ばし、刀を振り抜かせる。斧は容易く弾かれ、後ろの木に刺さるが、振り抜いた直後じゃ俺を斬る事はできねぇ。俺は勢いを乗せたまま拳を振り被り、それを骸骨侍の頭へ向かって繰り出す。
だが骸骨侍はそれを許さず、刀を振り抜いた勢いを利用して回転し、頭に当たった拳を逸らし、そのまま俺の胴体を真っ二つに切断した。俺は下半身を直ぐに再生させ、今度は左の拳を構える。それを捉えた骸骨侍は後ろへ跳び、俺の拳を避けた。俺はすかさず右腕を骸骨へ向かってかざし、一言、呪文を唱える。
「『Kommen』!」
すると、先程投げた斧が骸骨侍の背後から飛んで来る。骸骨侍はそれを避け、俺はそのまま斧を手に取る。
この斧も魔道具だ。神話や伝承の中に登場する武器を再現する研究の一環で製造された、強度が大幅に上昇し、特定の呪文を唱える事で、持ち主の手元へ帰って来る武器。シンプルだが、扱い易くて良い。
俺は再び銃の引き金を引いた。今度は三発。俺は強く地面を蹴り、右手の斧を振り被る。弾丸が通じねぇのは分かった。だが体の動きには多少の制限が掛かる筈だ。反撃されるだろうが、それでも良い。一撃入れる。それだけで良い。
俺は振り被った斧を、そのまま骸骨侍へ向かって投擲する。勿論斧は簡単に弾かれたが、今度はその後の展開を変える。俺は真空を作り出す魔術を使い、敵へ向かってその空間を押し付ける。だが何かを察知したらしく、骸骨侍は俺の右の掌を避けるようにして、俺の右腕を切り落とした。
そして骸骨侍は決まって、振り下ろした刃を、今度は切り上げるようにして使う。俺の頭は縦に両断され、次の一歩を踏み出せなくなる。再生が始まる一瞬前、骸骨侍は俺を、大きく後ろへ蹴り飛ばした。
「クソ……」
割れた頭部を再生し、再び立ち上がろうとした俺だったが、それよりも先に、骸骨侍が残った四肢を斬り落とした。勿論再生が始まる。だが今度は訳が違う。刃を振り、そして向きを変え、また切り裂く。再生と同じ速度で、俺の体に傷を付け続ける。確かにこれじゃ俺は動けねぇ。流石に今回ばかりは……
と、考える道理なんざ俺には無ぇ。
突然、骸骨侍の動きが止まった。攻撃が止み、再生が完了した俺は立ち上がった。まさか再生能力の弱点を初見で見破って来るとは思わなかったが……まぁ、終わり良ければ何とやらだ。
攻撃を避ける事はできなかった。さっきのも、それより前のも。だが避ける事ができねぇなら、端からそれを勘定に入れりゃ良い。幸い、俺が使うのは血液を操る魔術だ。斬られて、地面に飛び散った血液を利用して、全身を縛る拘束具を作り出した。動きが素早いなら、動きを封じちまえばそれ終わる。
「脳味噌が無ぇ骸骨に説明すんのも馬鹿らしいから、説明してやんねぇけど」
そう言ってから、俺は再び真空を作り出す魔術を発動し、骸骨侍の全身を消し飛ばした。大分……疲れたような木がする。
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