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No.7 天籟
File:9 絵画『天籟』
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大分走ったが……かなり雰囲気が変わったな。ソフィアが居た所と同じ感じがする。あの侍並みの気配がそこかしこからしやがる。だがどうやら、魔力と気配を抑えるだけでエンカウントは避けられる。後は直接ぶつかるか、姿を見せさえしなけりゃ、ほぼ素通りだ。
ソフィアはどこまで進んだ?絵画を他の連中より早く見つけられてんなら良いが……ここで立ち止まるのはリスクが高ぇよな。支給された無線機じゃ盗聴される危険性もある。合流するまでのお楽しみにしとくか。
足跡は途切れてねぇ。戦闘の痕跡が毛程も残ってねぇのが気になるが……ソフィアも上手い事隠れながら進んでるんだろう。ソフィアは重要な事に割と早く気付く事が多い。そのお陰で上手く立ち回れた事もそう少なくねぇ。
上手く行けば絵画を手に入れた状態のソフィアと合流、最悪は絵画を協会に持ってかれた上、ここに暫く放置って感じか?上手く行ってる事を祈りてぇな……まぁ、祈る神も居ねぇんだけど。
暫く森の中を走って行くと、林の向こう側に人の陰が見えた。アレが誰の物かによって、この後の展開が大きく変わって来る。さ~て鬼が出るか蛇が出るか。
と、少しばかりの心臓の高鳴りも無駄だったようで、そこに居たのは見慣れた女性の、ソフィアの姿だった。周囲には誰も居ねぇばかりか、その腕の中には絵画が抱かれている。どうやら最高の状態のようだ。俺は林に飛ばしていた蝙蝠達を体に戻しながら、ソフィアへ近寄る。
協会の奴らが近くに居る感じもしねぇ。俺達が一番乗りな上、二位以下とは大差を付けてのゴールインらしい。多分何かのスポーツだったら、世界記録を大きく更新してる場面だ。こんな良い状況は無ぇ。
「やったなソフィア。早くトンズラするぞ」
俺はそう言いながらソフィアの肩に手を置くが、ソフィアは答えねぇ。と言うか、何か様子がおかしい。俺はソフィアの肩を揺らそうと動かす。するとソフィアの体は、力無く地面へ倒れてしまった。
「ソフィア!?」
既に攻撃を受けていたのか!?いやソフィアに何かあれば、蝙蝠を通じて分かる筈。その可能性は無い。何か見落としているとすれば、確実にこの絵画だ。何度も見ているから分かるが、これは本物の絵画。前の『絵画の中の世界』とか言う話もある。何があっても不思議じゃねぇ。
俺はソフィアが胸に抱いている絵画を奪おうとするが、ソフィアの腕はビクともしない。力強ぇなクソ!これじゃ詳しく調べる事もままならねぇ。
「ソフィア!起きろソフィア!」
気絶してんのか?この絵画がどんな物なのか知らねぇ。ベストはここで絵画を奪って逃げる事だったが、俺一人じゃこの状況はどうしようも無ぇか?だがここで協会の奴らに絵画を渡せば、奪う機会はもう訪れねぇかも知れねぇ。
どっちを取る?考えるまでも無ぇ。絵画が欲しいのはソフィアで、起こさなけりゃいくら絵画を集めても意味は無ぇんだ。俺は腰の無線機を手に取り、直ぐに全体チャンネルへ接続する。
「あ~テステス。ジョセフだ。絵画をソフィアが発見したようだが、本人が絵画を抱えたまま気絶してやがる。どうも様子がおかしい。このまま林の外へ離脱しても良いか?」
『こちらリアム。状況は把握した。各自引き上げてくれ』
「了解」
俺は人形のようなソフィアの体を背負い、林の外へ走り始めた。人一人抱えて走ると流石に速度も落ちるな。ソフィアは蝙蝠の群れにして飛ばせねぇし、抱えた状態じゃ足しか使えねぇ。この状態で侍以上に強い奴と戦闘する事になったら終わりか?あ~何だって脱出用の魔術とか用意してねぇんだクソ。
まぁ文句言ってた所で始まらねぇよな。行きと違って、エンカウントした敵ガン無視して行っても良いんだ。兎に角走り続けろ。敵と遭遇した時の事はそん時考えりゃ良い。
ってか早速侍居るじゃねぇか!迂回して行かなきゃならねぇか?面倒だが……ここで侍と戦うとかいう勝負には出たくねぇよな。
俺は四足獣以上の奴が居れば迂回、それより下の有象無象であれば迂回せず、囲まれる前に蹴り壊して突破するようにして、林の外へ走り続けた。戦闘を極力避けたのもあってか、体感は奥へ進む時より早く外へ出られた。そして外ではやはり、他の魔術師達が待機していた。
「よくやった。無事で何よりだ」
「俺は無事だが、コイツは分からねぇ。協会には医者も居るんだろ?」
「あぁ。だがここでは都合が悪い。一度ロンドンの協会本部まで来てもらえるな?」
「勿論だ。で……どこから?」
「ここから」
リアムはそう言うと、着けていた腕時計のネジを回した。すると空間が切り裂かれるような音と共に、魔術の門が開いた。そしてその向こうには、巨大な城のような建築物と、わざとらしい程晴れ渡った青空が見える。
「ようこそ神秘研究協会ロンドン本部へ。大した歓迎も無く、済まないがね」
「大それた歓迎程不愉快な物も無ぇから、寧ろ助かるわ」
「そう言ってくれると有難い。さぁ、彼女の状態も不明だ。早く行こうじゃないか。」
ソフィアはどこまで進んだ?絵画を他の連中より早く見つけられてんなら良いが……ここで立ち止まるのはリスクが高ぇよな。支給された無線機じゃ盗聴される危険性もある。合流するまでのお楽しみにしとくか。
足跡は途切れてねぇ。戦闘の痕跡が毛程も残ってねぇのが気になるが……ソフィアも上手い事隠れながら進んでるんだろう。ソフィアは重要な事に割と早く気付く事が多い。そのお陰で上手く立ち回れた事もそう少なくねぇ。
上手く行けば絵画を手に入れた状態のソフィアと合流、最悪は絵画を協会に持ってかれた上、ここに暫く放置って感じか?上手く行ってる事を祈りてぇな……まぁ、祈る神も居ねぇんだけど。
暫く森の中を走って行くと、林の向こう側に人の陰が見えた。アレが誰の物かによって、この後の展開が大きく変わって来る。さ~て鬼が出るか蛇が出るか。
と、少しばかりの心臓の高鳴りも無駄だったようで、そこに居たのは見慣れた女性の、ソフィアの姿だった。周囲には誰も居ねぇばかりか、その腕の中には絵画が抱かれている。どうやら最高の状態のようだ。俺は林に飛ばしていた蝙蝠達を体に戻しながら、ソフィアへ近寄る。
協会の奴らが近くに居る感じもしねぇ。俺達が一番乗りな上、二位以下とは大差を付けてのゴールインらしい。多分何かのスポーツだったら、世界記録を大きく更新してる場面だ。こんな良い状況は無ぇ。
「やったなソフィア。早くトンズラするぞ」
俺はそう言いながらソフィアの肩に手を置くが、ソフィアは答えねぇ。と言うか、何か様子がおかしい。俺はソフィアの肩を揺らそうと動かす。するとソフィアの体は、力無く地面へ倒れてしまった。
「ソフィア!?」
既に攻撃を受けていたのか!?いやソフィアに何かあれば、蝙蝠を通じて分かる筈。その可能性は無い。何か見落としているとすれば、確実にこの絵画だ。何度も見ているから分かるが、これは本物の絵画。前の『絵画の中の世界』とか言う話もある。何があっても不思議じゃねぇ。
俺はソフィアが胸に抱いている絵画を奪おうとするが、ソフィアの腕はビクともしない。力強ぇなクソ!これじゃ詳しく調べる事もままならねぇ。
「ソフィア!起きろソフィア!」
気絶してんのか?この絵画がどんな物なのか知らねぇ。ベストはここで絵画を奪って逃げる事だったが、俺一人じゃこの状況はどうしようも無ぇか?だがここで協会の奴らに絵画を渡せば、奪う機会はもう訪れねぇかも知れねぇ。
どっちを取る?考えるまでも無ぇ。絵画が欲しいのはソフィアで、起こさなけりゃいくら絵画を集めても意味は無ぇんだ。俺は腰の無線機を手に取り、直ぐに全体チャンネルへ接続する。
「あ~テステス。ジョセフだ。絵画をソフィアが発見したようだが、本人が絵画を抱えたまま気絶してやがる。どうも様子がおかしい。このまま林の外へ離脱しても良いか?」
『こちらリアム。状況は把握した。各自引き上げてくれ』
「了解」
俺は人形のようなソフィアの体を背負い、林の外へ走り始めた。人一人抱えて走ると流石に速度も落ちるな。ソフィアは蝙蝠の群れにして飛ばせねぇし、抱えた状態じゃ足しか使えねぇ。この状態で侍以上に強い奴と戦闘する事になったら終わりか?あ~何だって脱出用の魔術とか用意してねぇんだクソ。
まぁ文句言ってた所で始まらねぇよな。行きと違って、エンカウントした敵ガン無視して行っても良いんだ。兎に角走り続けろ。敵と遭遇した時の事はそん時考えりゃ良い。
ってか早速侍居るじゃねぇか!迂回して行かなきゃならねぇか?面倒だが……ここで侍と戦うとかいう勝負には出たくねぇよな。
俺は四足獣以上の奴が居れば迂回、それより下の有象無象であれば迂回せず、囲まれる前に蹴り壊して突破するようにして、林の外へ走り続けた。戦闘を極力避けたのもあってか、体感は奥へ進む時より早く外へ出られた。そして外ではやはり、他の魔術師達が待機していた。
「よくやった。無事で何よりだ」
「俺は無事だが、コイツは分からねぇ。協会には医者も居るんだろ?」
「あぁ。だがここでは都合が悪い。一度ロンドンの協会本部まで来てもらえるな?」
「勿論だ。で……どこから?」
「ここから」
リアムはそう言うと、着けていた腕時計のネジを回した。すると空間が切り裂かれるような音と共に、魔術の門が開いた。そしてその向こうには、巨大な城のような建築物と、わざとらしい程晴れ渡った青空が見える。
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