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No.7 天籟
File:14 本物の怪物
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かなり奥の方まで来た。そろそろ絵画があった場所の筈だが……どうなってやがる。綺麗に円形の更地ができてやがる。地形は平坦な上、雑草や小石、切り株の跡すら残ってない。魔術なんだろうが……やっぱ敵に回したくねぇ類の奴らだ。
「つってもこれじゃ、元々あった場所の探しようが無ぇよな」
リアムにしろ他の魔術師にしろ、流石に手掛かり諸共更地にするとは思えねぇし、ここは放置で良いだろう。周囲に誰も居ねぇのを見るに、俺意外の奴らはここに到達、何も無い事を確認し、また他の場所へ捜索しに出たんだろう。
取り敢えず、俺はここに陣取るか。中心なら、どこかに何があったとしても、比較的短い距離で回収しに向かえる。それにこの開けた場所なら、体の大部分を蝙蝠にしている状態でも、侍の奇襲にも対応できるだろう。
「あ~クソ。やってらんね~」
俺は濃い霧の中、円形の更地のおおよそ中心に立ち、蝙蝠達から見えている情報を頭の中に集約する。この周辺には特筆すべき物は無ぇ。何かあるとすれば林の中心。詰まり絵画があった場所と丁度重なると思ってたんだが……時間が掛かりそうだ。
だが、それだけでは済まいらしい。突如、右肩から心臓付近の肉が抉られた。俺はそこの部分を再生させながら、敵の姿を捉えようとするが……速ぇ。恐らく骸骨侍と同程度には。その癖軌道が不規則だ。どう来るかのタイミングが掴めねぇ。
ここで周囲の探索を続けても良いが……邪魔だし消した方が良いな。俺は林の各地へ飛ばした蝙蝠を体へ戻すと同時に、血液で棘が生えた鎖を作りだす。
「速かろうと関係無ぇようにしてやるよ!」
俺は鎖を円形の更地全域に張り巡らせる。密度はそこまででもねぇが、そこは上げ続けられる。あの速度じゃ全部避け切るのは骨が折れるだろう。速度は必ず落ちる。速度をもう一度上げる前に、質量で潰す。
と、考えていた。敵は鎖を避けながら、一直線に俺の方へ近付いてきたようだった。しかし、別に心臓を貫く訳でも、体の一部を抉る訳でもなかった。敵がやって来たのは、ただ、暗い穴の中に浮かんだ、宝石のような目と、俺の汚い目を合わせただけだった。
何の意味があるのか。それを考えるよりも先に、体の末端の感覚が無くなった。俺は嫌な予感に突き動かされ、血液の武器で四肢を切断した。切断した部分を再生しながら、辛うじて視界に収めたそれらは、見事な石の彫像と化していた。
「ゴルゴーンの真似事かよクソ!」
反応が一瞬遅れたら全身が石像になってたか?兎に角視界に頼った戦い方は厳禁だな。そもそも俺の反応速度じゃ、見てから動くのはほぼ不可能。なのに目を開けてたら石像にされる。それなら、目を閉じて戦った方がまだマシだ。幸い、ただの物理攻撃なら、夜の俺には通じない。
目を閉じると、敵の攻撃は激しさを増した。右腕が抉られたと思えば左足が、それを感じ取った時にはまた別の個所が……一方的にやられるってのはやっぱ良い気分じゃねぇな。
敵は変則的に移動して来る。向かって来る方向へ攻撃するだけじゃまず間違い無く避けられる。敵が俺に攻撃をしたタイミングに合わせ、避けられない範囲と速度で、致命的な攻撃、またはそれに繋がる攻撃を与える必要がある。
来ると断言できるような音が聞こえた時には、既に俺の体が抉られている。何かを感じ取ってからじゃ遅ぇ。タイミングは勘。外せば長引き、ソフィアが助かる確率がさらに低くなる。俺は地面に右手と左膝を突く体勢で体を丸め、的を小さくする。
あ~なんか懐かしい気分だ。ガキの頃ボス……爺さんに稽古付けて貰ってた時も、最初のころは一方的にやられてばっかだったような気がする。丁度今みたいに、うずくまるような体勢になって耐えてたっけ。その癖爺さんは手を緩めねぇし。きっとああいう恐ろしい部分があったから、ファミリーの全員が畏れてたんだろうな。
って何関係無ぇ事考えてんだ俺。走馬灯見るような相手でもねぇだろ。気をしっかり持て。タイミングが勝負なんだぞ。一つのタイミングを逃せば、その次が無ぇかも知れねぇ状況なんだぞ。集中しろ。
長い、そして永い時間が経ったような気がした頃。予感は唐突に訪れた。来る。根拠も無くそう感じた瞬間、俺は鎖を引っ掛けていた木々をなぎ倒し、鎖を俺の頭上の一点に向かって纏める。
当たった。棘を付けていたお陰で引っ掛かってる状態のまま持って来れる。俺は敵が鎖の隙間から抜け出すより前にと、地面に着いていた右手を頭上へ向け、真空を作り出す魔術を使用する。
あった物を丸々無くす訳だから当たり前だが、この魔術には手応えらしい手応えが無ぇ。一回目を開けて状況を確認する必要がある。目が合わねぇ事を祈るばかりだ。俺は目を開いたが、そこは肋骨の先のような部分と、巨大な蛇の骨、そして何より、奴の目があった。
石像と化した四肢の映像が、頭の中に現れる。俺は咄嗟に、その目玉を右手で掴んだ。目玉と言うよりは石やガラスに近い感触に驚きながらも、俺は心底安堵した。体が石化しねぇ。黒目がこっちに向いてなかったのか。
しかし、どうなってんだこの目玉。硬ぇだけじゃねぇ。頭蓋骨らしき部分が無かったのを見るに、この目玉も俺の魔術で消せる範囲の中にあった筈だ。なのに、これだけ残ってる。あの魔術で消せなかったのは初めてだ。
何かの手掛かりになるかも知れねぇ。持って帰るか。俺は全身が問題無く動く事を確認してから、元々来ていた方向へ向かって走り出した。
「つってもこれじゃ、元々あった場所の探しようが無ぇよな」
リアムにしろ他の魔術師にしろ、流石に手掛かり諸共更地にするとは思えねぇし、ここは放置で良いだろう。周囲に誰も居ねぇのを見るに、俺意外の奴らはここに到達、何も無い事を確認し、また他の場所へ捜索しに出たんだろう。
取り敢えず、俺はここに陣取るか。中心なら、どこかに何があったとしても、比較的短い距離で回収しに向かえる。それにこの開けた場所なら、体の大部分を蝙蝠にしている状態でも、侍の奇襲にも対応できるだろう。
「あ~クソ。やってらんね~」
俺は濃い霧の中、円形の更地のおおよそ中心に立ち、蝙蝠達から見えている情報を頭の中に集約する。この周辺には特筆すべき物は無ぇ。何かあるとすれば林の中心。詰まり絵画があった場所と丁度重なると思ってたんだが……時間が掛かりそうだ。
だが、それだけでは済まいらしい。突如、右肩から心臓付近の肉が抉られた。俺はそこの部分を再生させながら、敵の姿を捉えようとするが……速ぇ。恐らく骸骨侍と同程度には。その癖軌道が不規則だ。どう来るかのタイミングが掴めねぇ。
ここで周囲の探索を続けても良いが……邪魔だし消した方が良いな。俺は林の各地へ飛ばした蝙蝠を体へ戻すと同時に、血液で棘が生えた鎖を作りだす。
「速かろうと関係無ぇようにしてやるよ!」
俺は鎖を円形の更地全域に張り巡らせる。密度はそこまででもねぇが、そこは上げ続けられる。あの速度じゃ全部避け切るのは骨が折れるだろう。速度は必ず落ちる。速度をもう一度上げる前に、質量で潰す。
と、考えていた。敵は鎖を避けながら、一直線に俺の方へ近付いてきたようだった。しかし、別に心臓を貫く訳でも、体の一部を抉る訳でもなかった。敵がやって来たのは、ただ、暗い穴の中に浮かんだ、宝石のような目と、俺の汚い目を合わせただけだった。
何の意味があるのか。それを考えるよりも先に、体の末端の感覚が無くなった。俺は嫌な予感に突き動かされ、血液の武器で四肢を切断した。切断した部分を再生しながら、辛うじて視界に収めたそれらは、見事な石の彫像と化していた。
「ゴルゴーンの真似事かよクソ!」
反応が一瞬遅れたら全身が石像になってたか?兎に角視界に頼った戦い方は厳禁だな。そもそも俺の反応速度じゃ、見てから動くのはほぼ不可能。なのに目を開けてたら石像にされる。それなら、目を閉じて戦った方がまだマシだ。幸い、ただの物理攻撃なら、夜の俺には通じない。
目を閉じると、敵の攻撃は激しさを増した。右腕が抉られたと思えば左足が、それを感じ取った時にはまた別の個所が……一方的にやられるってのはやっぱ良い気分じゃねぇな。
敵は変則的に移動して来る。向かって来る方向へ攻撃するだけじゃまず間違い無く避けられる。敵が俺に攻撃をしたタイミングに合わせ、避けられない範囲と速度で、致命的な攻撃、またはそれに繋がる攻撃を与える必要がある。
来ると断言できるような音が聞こえた時には、既に俺の体が抉られている。何かを感じ取ってからじゃ遅ぇ。タイミングは勘。外せば長引き、ソフィアが助かる確率がさらに低くなる。俺は地面に右手と左膝を突く体勢で体を丸め、的を小さくする。
あ~なんか懐かしい気分だ。ガキの頃ボス……爺さんに稽古付けて貰ってた時も、最初のころは一方的にやられてばっかだったような気がする。丁度今みたいに、うずくまるような体勢になって耐えてたっけ。その癖爺さんは手を緩めねぇし。きっとああいう恐ろしい部分があったから、ファミリーの全員が畏れてたんだろうな。
って何関係無ぇ事考えてんだ俺。走馬灯見るような相手でもねぇだろ。気をしっかり持て。タイミングが勝負なんだぞ。一つのタイミングを逃せば、その次が無ぇかも知れねぇ状況なんだぞ。集中しろ。
長い、そして永い時間が経ったような気がした頃。予感は唐突に訪れた。来る。根拠も無くそう感じた瞬間、俺は鎖を引っ掛けていた木々をなぎ倒し、鎖を俺の頭上の一点に向かって纏める。
当たった。棘を付けていたお陰で引っ掛かってる状態のまま持って来れる。俺は敵が鎖の隙間から抜け出すより前にと、地面に着いていた右手を頭上へ向け、真空を作り出す魔術を使用する。
あった物を丸々無くす訳だから当たり前だが、この魔術には手応えらしい手応えが無ぇ。一回目を開けて状況を確認する必要がある。目が合わねぇ事を祈るばかりだ。俺は目を開いたが、そこは肋骨の先のような部分と、巨大な蛇の骨、そして何より、奴の目があった。
石像と化した四肢の映像が、頭の中に現れる。俺は咄嗟に、その目玉を右手で掴んだ。目玉と言うよりは石やガラスに近い感触に驚きながらも、俺は心底安堵した。体が石化しねぇ。黒目がこっちに向いてなかったのか。
しかし、どうなってんだこの目玉。硬ぇだけじゃねぇ。頭蓋骨らしき部分が無かったのを見るに、この目玉も俺の魔術で消せる範囲の中にあった筈だ。なのに、これだけ残ってる。あの魔術で消せなかったのは初めてだ。
何かの手掛かりになるかも知れねぇ。持って帰るか。俺は全身が問題無く動く事を確認してから、元々来ていた方向へ向かって走り出した。
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