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No.8 ふじのやま
File:7 金剛級退魔師
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ソウスケの武器用な案内の先には、契約通り六人の退魔師が待っていた。それぞれその中には、この施設に来るまで俺を丁寧にエスコートしてくれた、あの大男も含まれている。
「また会ったな」
「あぁ半日経たずに感動の再開だ」
「そうだな。俺は河崎修司。この中で自己紹介すんのは多分俺だけだから、仲良くしようぜ」
「なんで自己紹介してくれねぇんだ?」
「お前の事が信用ならねぇんだと。まぁ当然だよな」
「あぁ俺でもそうするぜ」
やっぱコイツ強ぇな。何でもアリの殺し合いでも勝てる気がしねぇ。殴り合いでは確実に勝てねぇ上、多分一晩丸々戦ってられるタフネスもある。絶対敵に回したくねぇ。て言うかソウスケ……いつの間にやら居なくなってやがる。居た方が便利だったんだろうが……まぁアイツはそういう奴か。気にする事でもねぇ。
「アメリカへはどうやって行くんだ?」
「八神が向こうのお偉方と『交渉』し、岩戸が……あぁ咲良が、例のソフィアだったか?が居る施設を特定し、その近くに転移できる術を組んである。行きも帰りも楽々だ」
「そりゃ便利」
「作戦は?」
「あ~……そうだな……」
ボスが居ない所を狙うとしても、ソフィアを攫った女も、ロンドンで俺と戦った男も居るだろう。この面子なら先ず負けねぇが、それでも少数精鋭で手早く済ませるのが最良だろう。だがこの六人を上手く活用すれば……
「この中で後方支援向きなのは?」
「二人だ。火器を扱う」
「破壊工作向きなのは?」
「全員物をぶち壊すのは得意だが、場を乱すって意味ならそこでも二人」
「正面戦闘向きなのは?」
「俺と……義明。行けるか?」
「修司さんと同列に扱わないでくださいよ?」
「よし。二人だ」
「聞いてます?」
後方支援も破壊工作も正面戦闘も二人ずつ。俺も居れれば正面は三人だ。かなりバランスが良い。勝ち筋はとうに見えているが、それもかなり解像度が上がって来た。確実に勝てるとは言わねぇが、望みは十分ある。
「じゃあ、後方支援の二人は適当な場所から増援を分断するか、無力化。破壊工作二人は通信を断絶しつつ、片っ端から敵を無力化。正面戦闘二人は俺と組んで、最短で対象が居る部屋に向かって、確保。完了したら……」
「念話の術がある」
「それで知らせる。可能な限り手早く退散だ。戦闘とかに関しては臨機応変に頼む」
時差を考えると、今直ぐ言っても俺は大して役に立たねぇ。それでもソフィアを確実に連れて来るには、俺が行くのが良いだろう。向こうも昼間なら多少は気が緩んでてもおかしくねぇ。俺の襲撃があるとすれば、夜だと考える筈だしな。
こいつらの実力もやれる事も正確には分からねぇ。こんな適当に立てた作戦で、どこまで上手く行くかも分からねぇ。だがそれでも、今はこれでやるしか無ぇんだ。早くアイツを助け出さねぇと……おぉ行けねぇ。悪い想像はさっさと断ち切らねぇと、嫌な事ばかり考えちまうからな。
俺は気持ちを切り替え、気合を入れ直す。落ち着け。何も問題は無ぇ。ここまで来たなら、後はなるようになっちまえってモンだ。
「色々急で悪いんだが、なるべく早くに終わらせてぇ。行動開始だ」
一人目の特性はゴルゴーンの物だったか。肉体の調整も難しいんだろうな。お陰でボスも、サンプル探しの為に留守にしている。単独行動が好きなお方だ。
現時点で一人目の肉体に現れている特性は、蛇の鱗と驚異的な身体能力の二つだけ。正直これだけでも十分と言えなくもないが、ゴルゴーンの特性をより色濃く発現させたいというのがボスの意思らしい。仕方が無いか。
退屈だ。煙草でも吸うか。本来こういうのは吸わない物だが……まぁ私の場合、肺を文字通りに入れ替えられる。気にする事でもないだろう。私は懐からお気に入りの煙草を取り出し、ライターでそれに火を点けようとする。
しかし次の瞬間、『異常事態』を知らせる警報が鳴り響いた。ジョセフか?いや奴が行動するとしたら夜の筈。ならば誰だ?いや私が考えるよりも、他の人間に聞いた方が早い。私は壁に備え付けられた有線電話で状況を把握しようとする。
しかし、聞こえて来るのは雑音だけ。破壊工作か。盗聴リスクを減らす為に無線を使わなかったのが裏目に出たか?しかし妙だ。通信系を司る機械室には、十人以上の見張りを用意している。警報が鳴り始めてからほんの数秒でそれら全員を無力化し、破壊工作をしたと言うのか?いやそんな事は不可能。そもそも入口から機械室までは遠い。詰まり警備に殆ど引っ掛かる事無く機械室まで到達し、通信を断絶させたという事になる。
だがそれだけであれば、その後警報を鳴らさせる意味が無い。ここから導かれる結論は一つ。既に本隊が合流しているという事だ。
この状況は不味い。ここを攻めて来る理由は不明だが、ボスの命令だ。ソフィアだけは死守する必要がある。私はソフィアが居る実験室へ向かって走り始めた。
やがて実験室の前まで到着した私は、どうやら一足早くここまで来ていたらしい四人目と鉢合わせた。どうやらまだ敵はここに来ていないらしい。
「四人目!状況は!?」
「分からない。魔術の通信も妨害されているせいで完全な状況把握は不可能だ。だが辛うじて逃げて来た奴の話じゃ、退魔師が来ているらしい」
「退魔師!?何故だ!?」
「知っている訳が……」
『無いだろう』。そう言い掛けた三人目の体は突如現れた人影によって、殴り飛ばされた。次は私だ。そう感じた瞬間、私は後ろへ飛び退いた。避けた。その筈だった。
私の体は、その人影の拳とは別の物に弾き飛ばされた。それは固く、灰色で、重い……コンクリートの触手だった。そして視界の端には、もう一人の人影が姿を現している。
これが件の退魔師か。強い。それも相当。勝てるか?不可能。ボスは来ないのか?通信が潰されている。不可能だ。ならばどうやって……
そう考えていた次の瞬間、私の体は無数のコンクリートの棘に貫かれた。痛みの余りか、それとも血液を多く流したのか、それとも単に命を落としたのか……原因は定かではない。だが私はその直後に、自分の意識が遠退いて行くの感じた。
「また会ったな」
「あぁ半日経たずに感動の再開だ」
「そうだな。俺は河崎修司。この中で自己紹介すんのは多分俺だけだから、仲良くしようぜ」
「なんで自己紹介してくれねぇんだ?」
「お前の事が信用ならねぇんだと。まぁ当然だよな」
「あぁ俺でもそうするぜ」
やっぱコイツ強ぇな。何でもアリの殺し合いでも勝てる気がしねぇ。殴り合いでは確実に勝てねぇ上、多分一晩丸々戦ってられるタフネスもある。絶対敵に回したくねぇ。て言うかソウスケ……いつの間にやら居なくなってやがる。居た方が便利だったんだろうが……まぁアイツはそういう奴か。気にする事でもねぇ。
「アメリカへはどうやって行くんだ?」
「八神が向こうのお偉方と『交渉』し、岩戸が……あぁ咲良が、例のソフィアだったか?が居る施設を特定し、その近くに転移できる術を組んである。行きも帰りも楽々だ」
「そりゃ便利」
「作戦は?」
「あ~……そうだな……」
ボスが居ない所を狙うとしても、ソフィアを攫った女も、ロンドンで俺と戦った男も居るだろう。この面子なら先ず負けねぇが、それでも少数精鋭で手早く済ませるのが最良だろう。だがこの六人を上手く活用すれば……
「この中で後方支援向きなのは?」
「二人だ。火器を扱う」
「破壊工作向きなのは?」
「全員物をぶち壊すのは得意だが、場を乱すって意味ならそこでも二人」
「正面戦闘向きなのは?」
「俺と……義明。行けるか?」
「修司さんと同列に扱わないでくださいよ?」
「よし。二人だ」
「聞いてます?」
後方支援も破壊工作も正面戦闘も二人ずつ。俺も居れれば正面は三人だ。かなりバランスが良い。勝ち筋はとうに見えているが、それもかなり解像度が上がって来た。確実に勝てるとは言わねぇが、望みは十分ある。
「じゃあ、後方支援の二人は適当な場所から増援を分断するか、無力化。破壊工作二人は通信を断絶しつつ、片っ端から敵を無力化。正面戦闘二人は俺と組んで、最短で対象が居る部屋に向かって、確保。完了したら……」
「念話の術がある」
「それで知らせる。可能な限り手早く退散だ。戦闘とかに関しては臨機応変に頼む」
時差を考えると、今直ぐ言っても俺は大して役に立たねぇ。それでもソフィアを確実に連れて来るには、俺が行くのが良いだろう。向こうも昼間なら多少は気が緩んでてもおかしくねぇ。俺の襲撃があるとすれば、夜だと考える筈だしな。
こいつらの実力もやれる事も正確には分からねぇ。こんな適当に立てた作戦で、どこまで上手く行くかも分からねぇ。だがそれでも、今はこれでやるしか無ぇんだ。早くアイツを助け出さねぇと……おぉ行けねぇ。悪い想像はさっさと断ち切らねぇと、嫌な事ばかり考えちまうからな。
俺は気持ちを切り替え、気合を入れ直す。落ち着け。何も問題は無ぇ。ここまで来たなら、後はなるようになっちまえってモンだ。
「色々急で悪いんだが、なるべく早くに終わらせてぇ。行動開始だ」
一人目の特性はゴルゴーンの物だったか。肉体の調整も難しいんだろうな。お陰でボスも、サンプル探しの為に留守にしている。単独行動が好きなお方だ。
現時点で一人目の肉体に現れている特性は、蛇の鱗と驚異的な身体能力の二つだけ。正直これだけでも十分と言えなくもないが、ゴルゴーンの特性をより色濃く発現させたいというのがボスの意思らしい。仕方が無いか。
退屈だ。煙草でも吸うか。本来こういうのは吸わない物だが……まぁ私の場合、肺を文字通りに入れ替えられる。気にする事でもないだろう。私は懐からお気に入りの煙草を取り出し、ライターでそれに火を点けようとする。
しかし次の瞬間、『異常事態』を知らせる警報が鳴り響いた。ジョセフか?いや奴が行動するとしたら夜の筈。ならば誰だ?いや私が考えるよりも、他の人間に聞いた方が早い。私は壁に備え付けられた有線電話で状況を把握しようとする。
しかし、聞こえて来るのは雑音だけ。破壊工作か。盗聴リスクを減らす為に無線を使わなかったのが裏目に出たか?しかし妙だ。通信系を司る機械室には、十人以上の見張りを用意している。警報が鳴り始めてからほんの数秒でそれら全員を無力化し、破壊工作をしたと言うのか?いやそんな事は不可能。そもそも入口から機械室までは遠い。詰まり警備に殆ど引っ掛かる事無く機械室まで到達し、通信を断絶させたという事になる。
だがそれだけであれば、その後警報を鳴らさせる意味が無い。ここから導かれる結論は一つ。既に本隊が合流しているという事だ。
この状況は不味い。ここを攻めて来る理由は不明だが、ボスの命令だ。ソフィアだけは死守する必要がある。私はソフィアが居る実験室へ向かって走り始めた。
やがて実験室の前まで到着した私は、どうやら一足早くここまで来ていたらしい四人目と鉢合わせた。どうやらまだ敵はここに来ていないらしい。
「四人目!状況は!?」
「分からない。魔術の通信も妨害されているせいで完全な状況把握は不可能だ。だが辛うじて逃げて来た奴の話じゃ、退魔師が来ているらしい」
「退魔師!?何故だ!?」
「知っている訳が……」
『無いだろう』。そう言い掛けた三人目の体は突如現れた人影によって、殴り飛ばされた。次は私だ。そう感じた瞬間、私は後ろへ飛び退いた。避けた。その筈だった。
私の体は、その人影の拳とは別の物に弾き飛ばされた。それは固く、灰色で、重い……コンクリートの触手だった。そして視界の端には、もう一人の人影が姿を現している。
これが件の退魔師か。強い。それも相当。勝てるか?不可能。ボスは来ないのか?通信が潰されている。不可能だ。ならばどうやって……
そう考えていた次の瞬間、私の体は無数のコンクリートの棘に貫かれた。痛みの余りか、それとも血液を多く流したのか、それとも単に命を落としたのか……原因は定かではない。だが私はその直後に、自分の意識が遠退いて行くの感じた。
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