親友が死んだ

雷雨

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親友が死んで1日目

親友の死を告げられる

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高校2年の8月、雲一つない晴れの月曜日だった。その日は模試があり、夏休みで唯一学校に行かなければならない日。
自分の高校は田舎の進学校で、髪を染めたり、ピアスをしたり、屋上でお弁当を食べたり。どこかで見たような青春を送る人はおらず、送りたいと思うような人もいないようだった。
一方で、共学ということもあってか、最近結構な数のカップル成立を耳にする。みんな学校にも慣れてきて、受験を意識しだしてきたのだろう。勉強と孤独は切っても切り離せないもので、そこからの解放を求めて、告白をする人が極端に増えた。実際、自分は容姿がいいほうなので女子の何人かから告白された。そのたびに断っては泣かれ、いつも相手の女友達4,5人から白い目で見られる。地味につらいが、そこまで気にしていない。もともと友達も多くはないし、困ってもいない。関わる必要もない人間に好かれようと嫌われようとどうでもいい。だいいち、自分に告白をしてくる奴なんて、自分のことをアクセサリー程度にしか思っていない。校則が厳しい分、恋人を作ったり、部活や勉強を頑張ったりして虚勢を張る。そんな奴らのために身を捧げるなんて馬鹿げている。

そもそも、自分は異性を好きにならない。

幼稚園の時かわいいな、好きだな、と思った男の子がいた。ある日、母親に「好きな子できた?」と笑顔で聞かれたとき、言おうか悩んだ。今思うと、そのころから自分は違和感に気づいていたのかもしれない。
小学生になって、女の子を好きになった。男の子よりも女の子と仲が良かった。告白されたので付き合った。でも、それからが面倒くさかった。友達の延長線上が好きという感情なのだと思い込んでいた自分に襲い掛かる特別な関係の重荷。なぜ友達の時のような付き合いができないのだ。結局、その子とは中学校が離れたので自然消滅した。


自分は異性を好きにならないと言ったが、男とも付き合う気はない。将来、相手や自分が禿げても老けても、相手を好きでいられる自信はないし、そんな自分を好きでいてほしくない。仲のいい友達に不思議な感情を抱いては、感情を壺に詰め込み、重い蓋をのせる。

こんなことを考えていたら、朝のチャイムが鳴った。ホームルームの時間なのに先生はまだ来ていない。ふと後ろを見ると、自分の後ろの席が空いていた。そこは自分と唯一仲のいい友人の席だった。名前は流星で、よく寝坊して、遅刻するやつだ。夏休みだからって気を抜きすぎだよね、と隣の子と少し笑う。流星は面白いやつで、いわゆる陽キャである。名前が自分と似ているのをきっかけに話し始め、それからなぜか自分を気にかけてくれ、気づけば移動教室はいつも一緒だった。
すぐ担任の先生が来た。出席を取り、流星の名前を言いながら、小声で遅刻ね、と言った。模試の問題を配った。いつもより簡単で、これなら全国でも100番以内に入れそうだった。

模試がすべて終わった。大問4の解き方がわからなかったと囃し立てるクラスメイト。今からスタバ行こ、と話す女子。騒がしくなった教室。そこにいる誰もが日常を体現していた。
しかし、担任の様子が少し違う。
彼は今年、初めてクラスを請け負う先生だ。30代後半なのに今まで担任をさせてもらえなかった彼は、生徒から“ポンコツ”扱いされていたし、実際そうとも言えた。まじめで、柔軟性がなく、授業もそこまでうまくない。でも一生懸命で、生徒思いで。どこか親近感が湧く先生だった。
様子がおかしいのを見るのは初めてだったが、特段気にしなかった。

「皆さん席についてください。」
担任の声に、え~と文句を言いながらみんなが嫌々席に着く。着いた後もおしゃべりは止まらない。自分も隣のやつと話していた。みんなで不自然な教室の空気を笑っていた。だから、担任のこわばった表情を感じ取るまでに、結構時間がかかった。


先生が泣いた。

昨日、流星が死んだと、嗚咽交じりに担任が伝えた。
交通事故で、お通夜は今週土曜だそうだ。


教室は静まり、アブラゼミの鳴き声と車の通る音だけが聞こえる。





自分は親しい人を亡くしたことがなかった。祖父母は元気で、曾祖父母は自分が生まれる前に死んだ。
初めて、人間の死に対面した。

担任は、模試の成績に悲しみが反映されないように流星遅刻といったのか。こざかしい。

それからのことはあまり覚えていない。自分はうつむきながら、ただひたすらに泣いていた。
泣くと楽になるなんて聞く。しかし、流星を失った苦しみが涙に入って体から出ていく、なんてことはなく、不必要な成分のみが体を出ていき、流星との記憶や感情のみが体でどんどん濃くなっていった。


あぁ、おれはあいつを、すげえ好きだったんだな。
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