自称異世界最強浪人のチーター達と万屋始めました

チーター達は有給休暇を取るようです

グレイス

 時を同じくして『ネクスト』から南東へ、離れた所に海を挟んでまたもう一つの街、中世のヨーロッパを思い浮かべさせるようで、どことなく現代風を思わせる街『グレイス』の中心に位置する教会らしき所では………。









 パイプオルガンが壮大な音楽を奏でていた。

♪♪♪

 その大きなパイプオルガンを弾いているのは法也だった。

「……ふぅ、久々だとこんなもんですかね？」

 パチパチパチ！

 と、盛大な拍手が上がる中、法也はそれを手を挙げて止めた。

「ただいま戻りました天文館南館『グレイス』館長天野法也です。どうぞお見知り置きを」

 そう言って恭しくお辞儀をした。

 そしてまた盛大な拍手が上がり、法也はそれを後にその建物から出て行った。

「ふぅ、やはりここは居心地が良いですねぇ？」

 法也はなんとなしに独り言を呟いた。

「やっぱりそうですか？おししょー？」

 振り返るとそこには白い修道服を着たシスターが立っていた。

「アドミーですか。これはこれはお久しぶりですね？」

「ちょっと前に会ったのにもうお久しぶりだなんて。遂にボケましたか？」

「はっはっは！まだまだボケてなんかいられませんよ。まだやりたいことが沢山ありますしね？」

 そうやって法也が軽いやり取りをしているのは、魔導神王アドミー。
 その神である。

「せっかく帰って来たんですし、まだ神王会議まで日がありますし子供達にも会って行きますよね？」

「ええ、もちろん会いに行くとしましょうか」

 この街は一部を周りを緩やかな丘が囲んでおり、その向こうには白い雪が積もっている山脈が見える。
 そして、その山脈の麓にその目的地がある。















「皆さーん！？法也さんが帰って来ましたよ～！？」

『わぁーい！』

 そう言って屋敷の前庭で遊んでいた子供達が法也目掛けて走って来た。

「法也！今回はどれぐらいここにいるの！？」

「法也さん！見てください、また新しい魔法を覚えたんです！」

「法也さん！」

「法也さん！」

 そう言って次々に押し寄せる子供達に法也は押し倒されそうになっていた。

「こらぁー！そんなに押し寄せたらおししょーが潰されちゃうでしょ！？後でちゃんと見てもらえるようにしておきますから、今はもう少し待っていて下さい！」

『えぇー！？』

「せんせーだって法也さんが帰って来るって聞いて、毎日ソワソワしてたのに？」

「先生！幾ら法也さんが好きでも…………いだだだ！」

「こ、こら！」

 そうしてアドミーは法也の方を向き直り、コホン、と咳払いをして笑顔で。

「で、ではお部屋にお連れします」

 と言った。


















「…………本当におおきくなりましたね？」

「やですね、おししょー！幾ら私が育ったとしてもそれはセクハラって奴じゃ………」

「何を言っているのですか。ここの事ですよ」

「「………………」」

 少し気まずい空気が流れた後、紛らわすように、

「そ、そうですね！本当に大きくなりましたね！そう………本当に」

 とアドミーはそう言った。

「ええ、まさかあの二人だけの生活からここまで来るなんて思いもよりませんでしたね？」

「おししょー、それだけ聞いたら私達結婚しているみたいですよ？」

「そう思っているのは貴方だけですよ」

 アドミーは顔を少し赤らめ下を向いて、

「………もう、相変わらず鈍感なんですから………」

 と、本当に小さな声でそう言った。

「何か言いましたか？」

「い、いえ！何でもありません」

「？」

 と、相変わらず兄弟一鈍感男の法也は訝しげにアドミーの顔を覗き込み、余計に顔を赤らめさせるのだった。

「ちょっとー？お兄さんの出番なしで終わらせようとしないでくれるかな？」

 と、入り口に立っていた青髪の冥府神王はそう言った。

「おや？ハデス来ていたのですか？」

「あっれー？お兄さんの存在気づかれていなかった？どっかの天使君にぶっ飛ばされて復活してからどうも存在が薄いのは気にしてたんだけどね！？
……………ってあれ？どうしたのアドミーちゃん、そんなにプルプル震えちゃって？」

「…………め」

「あ、察し」

 と、言って脱兎の如く逃げ出したハデスを追う為、涙目になりながら。

「空気読め！このへっぽこ冥王ー！」

 と、追いかけるアドミーを法也は見て、また懐かしさに少しの間浸るのだった。

「あっ、本当にここで終わりだよ？」

「まちなさーい！」

「ヤベッ！じゃあねー！」

「メタな発言は止めなさい！ハデス！」

「ア、アンタが言いますか法也さん！？」