自称異世界最強浪人のチーター達と万屋始めました

チーター達は有給休暇を取るようです

物語は加速する

 酷い夢を見た。



『ねえ！今日はどんなことが起こるかしら？』



 やめてくれ



『おいおい、そういう風に歩くと転ぶぞ！』

『大丈夫よ！この私なら大丈夫だから！』

『全く、そう言っていつもドジるのがあなたでしょう？』

『へーきへーき！』



 やめてくれ



『あなたを今から救います！』

『おい！勝手に突っ込むな！ああもう！行くぞ！』

『『『うん！』』』



 終われ




『何で助けたの！こいつが死ねば全部丸く収まったのに！』

『出てけ！』

『出てけ！』

『出てけ！』



 終われ



『……仕方ないわよ！私達は正しいことをしたのよ！？むしろ誇りに思うべきだわ！』

『…そうだな、落ち込んでいても仕方ないしな！』

『はあ、そうね、今回ばかりはあなたを見習うとしましょうか』

『何よ！それいつも私がダメな女みたいじゃない！』

『そう言うつもりで言ったのだけど？』

『キーーー！』

『『『ハハハハハ』』』



 もうたくさんだ



『助けて……助けて………』

『………！』

『ギヤアアアア！』

『………うっ！』

『仕方ないわ、そう、仕方ないのよ……』

『……ああ、これで正しい』

『モンスターは殺されるべきなんだ……、人に危害を与えるから……』

『お姉ちゃん？』

『『『『『！！！！！』』』』』

『ねぇ？お姉ちゃん……お姉ちゃん！』

『…………』

『………この人殺し！出てけ！出てけ！』

『…………！』

『行くぞ………』

『……ええ』



 お願いだ



『何で………何で私がこんな事しなきゃいけないんですか！！』

『仕方ないんだ……頼む……』

『……………！』

『ぐっ！』

『あぁ！！ーーー！』

『いいんだ……そう、これでいいんだ……』

『うぅぅぅ！』



 これ以上は耐えられない！



『あははは！死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね！』

『ギャャャャャ！！！』

『おい！やめろ！それはやりすぎだ！』

『あははは！見てよ皆んな！モンスター達が悲鳴をあげて逃げて行くわ！何て気持ちがいいのかしら！！』

『……』



 ああ



『……今日はここで野営をする……』

『『『『…………』』』』

『……あっ』

『どうした？』

『………空……』

『ん？あぁ………』

『キレイ……』

『……そうだな……』

『そうだな……』

『……彼と見たかったなぁ』

『『『………』』』



 ああああ



『……おはよう……あいつは？』

『さあ？』

『………』

『皆んな！大変よ！』

『どうしたんだ！？敵襲か！？』

『違うの………！』

『これは………うっ！』

『あんまり直接触らないで！呪いよ』

『いったい誰が……まさか！』

『そのまさかよ……』

『解除できるか？』

『ええ、かなりかかると思うけど……』

『頼む』

『分かったわ』



ああああああああ



『こ、これは………』

『こんな物が人に書けるのか………？』

『（血文字でびっしりと何か書いてあるが読めない）』

『こんな……こんなの酷すぎる………！』

『何で俺達ばっかり………』



ああああああああああ




『クソッ！もう少しなのに！』

『あぁ！！ーーー！』

『くそがぁ！』

『………少し時間を稼いでくれる？』

『分かった！オラァ！』




………………




『おお！ーーー！ーーーは？』

『…………た…』

『何だって？』

『俺を復活させて肉の塊になった……』

『なっ………！それはどこに！？』

『…………喰った………』

『…………は？』

『………喰った………塊になりきる前に「私を食べなさい」って………』

『あ、あぁ、嘘だろ？』

『………ホントだ』

『……………』




 …………………




『これで……』

『終わりだ………』

『………』

『………』

『なぁ？』

『………何だ？』

『俺達は一体何の為に戦って来たんだ……？』

『……そりゃあ、大切な人を守る為に……』

『じゃあアイツらは大切な奴等じゃ無かったってのか！？』

『……！』

『一体俺達は何の為に……！』

『…………』

『何で俺達だけが残ったんだ！？』

『………分からない………』

『なあ、これから俺達は一体………』

『…………あぁ、あぁ、あぁ…………』




 ……………………………………………
























「………朝か」

 俺は起きると目に違和感を感じた。

「……嫌な夢だった」

 昔の後悔、遥か昔の、まだ俺が若かった頃の事。

「………」

 俺はベットから起き上がると窓辺に歩み寄った。

「無かったことにしなければけない………か」

 まるで真逆ではないか。

「あぁ、あぁ、あぁ」

 この感情は何だろうか？

 怒り？

 悲しみ？

 懐かしさ？

 何ともいえない。

 なんなんだこれは！

「あぁ、あぁ、あぁ」

 俺はまた一人今夜も呻くのだった。

「因果応報ってか？」

「……人の記憶を覗き見とは趣味が悪いぞ？」

「大丈夫だ、それはきっと報われる日が来る」

「何を根拠に………！」

 俺は胸ぐらを掴んだ。

「………早く仕事を終わらしてノウン達に会いに行くんだな」

「あぁ？」

「………また、後悔したく無かったらな」

 そいつは俺の腕からすうっと霧のようにすり抜けて、俺が開けていた窓から出て行った。

「………後悔、後悔……か」

 俺は未だ机の上に山積みになっている書類等を見た。

「………はあ」

 俺は机に座ってそれを処理し始めた。




























「う～ん」

 俺は伸びをすると周りを見渡した。

 現在俺達は野営をしていて、むさ苦しい男どもと雑魚寝状態だった。

「………」

 昨日見た夢は一体何だったのだろうか？

「………おはようございます」

 テントの中に入って来た兵士を見て俺は、

「もうこいつらも起こしますんで」

 と言った。

「ええ、あと半刻で会議が始まるのでそれまでにどうか起床しといてくださいね？」

「はい」

 兵士はそれだけを言うとテントから出て言った。

「………起きてください、もう朝ですよ」

 他のチーター達を起こしながら俺はテントの出口に向かった。

「………起きましたか、おはようございます」

「おはよう、メネヴィア」

 テントから出て、会議場に向かうと既に万屋の奴らは起きていた。

「ふぅ、おはよう」

「お、ノウンか、おはよう」

「うっす、そのボサボサ頭どうにかして来たらどうっすか？」

「ほほほ、またまた面白い頭をしているの」

「それっていつも俺が頭おかしいみたいじゃない？エルナじゃ無いんだし」

「………」

「？」

 何時もならここで、

『何なのよ！お姉さん魔女だから頭は良いんですよー！』

 とか言いそうなのに今日は黙っている。

「エルナ？」

「………はっ！ど、どうしたの？あ、おはよう」

「おはよう、どうしたんだ？ぼけっとして」

 エルナは首を傾げた。

「いえね？何だかんだ懐かしいような、それでいて何だか、泣きたくなって来るような感じがするの、この感じ、料也と会った時と………料也？」

「何だ、アイツの名前忘れたのか？」

「いいえ？あの人料也じゃ無い名前だったような気がして………」

「前に会ったことがあるのか？」

「いいえ？ただ、そんな感じがしただけ」

「どんな感じだよ？」

「この感じ………あー、思い出せないわ！」

「やっぱ駄魔女だな」

「うーーーーん」

 俺の言葉に突っ込むこともせずひたすら頭を傾げるエルナを見て、何だかんだ嫌な予感がして来るのだった。