剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?七本目っ!少女の夢見た世界、遠き旅路の果てに。

月芝

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039 モンゲエ

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 大きな宴席に呼ばれた。
 これまでは「田舎娘の無作法者ゆえ、どうぞご容赦を」とか「お誘いはありがたいのですがラクシュ殿下預かりの身ですので、まずはそちらにお問い合わせを」なんぞとのらりくらりかわしてきたものの、さすがに帝から名指しされては夜会に顔を出さないわけにもいかない。それも「あらたに帝国の版図に加わることになった、神聖ユモ国らを歓迎する宴」とかいわれたらもはやいかんともしがたく……。
 で、出席が確定したので事前にシャムドに手伝ってもらいちょいと身支度を整えてみたのだが、これが毎度のことながら似合わない。
 ゆえにシャムドが「いっそのこと着飾るのはヤメましょう。背伸びをしてもかえって野暮ったくなってしまう。だからかっこうは地味に、けれども見る者がみれば価値がわかる上等な素材をふんだんに使った衣装にするわ。宝飾品も一切なし。そのかわりに天剣たちを本来の姿ではべらせなさい」なんぞと無茶を言い出す。

「いやいやいや、さすがに帝が顔を出す夜会に武器同伴はまずいでしょう」

 わたしが常識的な意見を口にすれば「いいんじゃないか、それで」と面白がったのはラクシュ殿下。「よい機会だ。ごちゃごちゃうるさい連中を黙らせてしまえ」
 ここのところどこぞより天剣たちのチカラのことを耳にした者たちが「小娘からとり上げて、帝国で管理すべきだ」と主張しているという話はわたしのところにも届いている。
 やんわり「みずから献上すればどうか」なんぞとご注進におよんだ者も一人や二人ではない。
 わたしはその都度、口を酸っぱくして「天剣たちは意思を持ち、自分の担い手は自分で選びますので。わたしの一存ではどうにも」と説明をしたのだけれども、返ってくるのは胡乱そうな視線ばかり。
 こっちの誠意と真心がまるで通じないのは、ただただ虚しい。

「チヨコはあまり乗り気ではないようだが、シャムドの案なかなかいい手だと思うぞ。いまだに天剣たちが意思を持ち、言葉を発するということを信じていない者も多い。いわんやチカラに関しては実際に戦いぶりを目にした者でないと、そのすごさはとても理解できぬであろう。
 ならばいっそのこと見せつけてしまえばよい。謙虚で慎ましやかなのもけっこうだが、ときにはガツンと示威行動も必要だ。でないとかんちがいしているバカどもはつけあがるばかりだからな。なぁにうまくいけば、これでいらぬちょっかいを出してくる者もごっそり減るだろうよ」
「減りはするけど、いなくはならないんだ」

 ラクシュ殿下の言葉にわたしが唇を尖らせるとシャムドが肩をすくめる。

「さすがに根絶は無理よ。あの手の輩は雑草と同じ。どれだけむしっても、いつのまにかポコポコ生えてくるの。マジメに相手をするだけ損だから、適当にあしらっておきなさい」

 なるほど、雑草か。
 そう考えるとあんまり腹が立たないかも。
 なにせわたしは農業と園芸の女。雑草ごときにいちいち目くじらを立てていては、とてもではないがやっていられない。あー、そういえばもう長いことちゃんと土をイジってないなぁ。ここのところワガハイの鉢植えぐらいしか触ってないや。
 そこでミヤビたちを連れて夜会に参加する案を飲むかわりに、宿舎の敷地内にある一画を好きにしていいという許可を得た。やったね!
 ワガハイによれば南の大陸は大地の気が薄くて、作物の育ちがイマイチとの話だったけど、そんな逆境でわたしのチカラがどれくらい通用するのか、ちょいと腕試しといこうかしらん。

  ◇

『なにはなくともまずはモンゲエ』

 農家に広く伝わる格言である。
 色白のムチっとした女性の下半身。
 っぽい形をしている白い根菜モンゲエ。
 先っぽの二股が艶めかしく絡み合い、足を組んでいるように見えるのが良質だとされている。
 主に輪切りにして煮て食べるが、みずみずしい身をすりおろすと辛味が強まり、薬味としても重宝する。焼き魚との相性がすこぶるよろしい。絞り汁は二日酔いとお通じに効くとされている。
 なお地面から引っこ抜くさいにジタバタ暴れて「もんげー!」と絶叫することが名前の由来。
 この野菜、元は植物系の禍獣だったのを食用に品種改良したモノ。
 さる研究家の説によると、モンゲエはあえて人間のそばに身を置くことで、厳しい生存競争を生き残ったと言われている。
 事実、各地にて広く栽培されており、土地や気候にて多様な変化をみせている。
 それすなわち適応力の高さを意味しており、確実に数を増やし子孫を残しているので、種としての優良性をも示している。 
 たぶん国が滅ぼうが人間が死に絶えようが、モンゲエだけはぬくぬく生き延びることであろう。

 それほどの植物なので、まずは小手調べにと投入したんだけど……。

「うふん、あぁん、いやん、はぁはぁ、ふぅ」

 さっきから艶めかしい声を発しては、周囲の空気をギクシャクさせている桃色のモンゲエ。
 草刈り鎌姿のアンで雑草を刈り、白銀のスコップ姿のミヤビにてざくざく地面を掘りつつ、出てきた石とかは金づち姿のツツミで粉々に。
 麦わら帽子姿のムギをかぶって、ベニオが変じた作業着のかっこうでせっせと畑仕事に精を出す。
 で、北の大陸から持ち込んだモンゲエの干物にわたしの才芽と愛情をたっぷり込めた水を与えてから植えてみたら、数日後にはなにやら公序良俗に反する等身大の妖艶なモンゲエがひょっこり育った。

「はて? おかしいな。南の大地はいろいろ薄くて禍獣とか育ちにくいって話だったのに」

 わたしがミヤビたちといっしょになって首をかしげていたら、ワガハイが言った。

「あー、これはアレだ。たぶん反発だ。大地が刺激に慣れてないから、過敏に反応してしまったのかも」

 常飲しているとクスリの効きがイマイチになるのと逆。
 そんな現象が起こったと知って、わたしは「えぇーっ!」となった。


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