人生に脇役はいないと言うけれど。

月芝

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11 王城の闇

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「手入れである! 大人しく縛につけ! 逆らう者は斬る!」

 近衛第五隊を率いるクラウセン隊長が大音声にて、一団に告げる。
 途端に現場が喧騒に包まれた。隊員たちと抵抗する者らとの間で争いが始まり、怒号や剣戟の音がそこいらで起こった
 場所は港湾地区の倉庫街の一角、王都内にてかき集めた盗品を船にて外部へと運び出そうとしているとの情報を入手した騎士団が、その捕縛に第五隊を差し向けた。
 敵を一網打尽にするために、じっと待機していた隊員らが、隊長の号令一下にて飛び出し、次々と悪漢どもを捕縛していく。だが中には激しい抵抗を見せる者もいて、剣での応酬も次第に熱を帯びていく。
 そんな連中に向かい先陣を切るは副長のカイン。
 愛用の黒剣を手に猛然と敵に襲いかかり、切っ先が容赦なく立ち塞がる者の喉笛を喰い破り、心の臓を抉る。返り血が自身の鎧を汚すことも厭わない。雄叫びをあげ荒ぶる姿に、震える敵味方を尻目に修羅場を餓狼が縦横無尽に駆ける。その度に絶叫と血飛沫が舞った。

 混乱に乗じて、なんとか細い路地裏へと抜け出した者たちを待っていたのは、美しき死神だった。
 薄闇の中に碧眼がぼんやりと浮かぶ。迅雷の如き速さにて何者かが自分たちのすぐ側をすり抜けたと思った次の瞬間には、己の首筋から盛大な赤い噴水が上がっていた。急速に体内より失われる血、耐えきれずに崩れ落ちた悪党どもが最期に見たのは、自分たちを見下ろす美しい金髪の麗人の姿であった。

 しばらくして全ての抵抗が止み、多くの者たちが隊員たちの手によって引っ立てられていく。
 その様子を眺めながら、煙草を吸っているカイン副長。その全身は朱に染まっている。あんまりな姿に呆れ顔のクラウセン隊長がハンカチを取り出し、彼の頬についた血を拭う。少し照れくさそうにしながらも、黙ってされるがままになっているカイン。
「野生の狼を手懐けている狩人のようだ」と隊員たちが揶揄うもギロリと副長に睨まれて、そそくさと退散する面々。
 そんな皆の様子を少し離れたところから、静かにじっと見つめているアデル副長。彼がその仲間たちの輪に加わることはなかった。

 ……と、こんな具合だったそうです。
 第五隊が捕り物にて留守にしていた日のことを、こと細かに私に説明して下さったのは、メイドのお姉さま方のお一人。

「まるで見てきたように臨場感たっぷりな解説です」

 率直な感想を私が零すと、実際に見てきた方よりの情報提供なんだとか。なんでも近衛隊が出動する際には、密かに暗部の監察官が同行されるそうです。つまりこれはそっち方面からの情報の横流し。いいんでしょうか? 

「いいのよ。向こうだって本当にヤバイ話は漏らさないわよ。それにこっちからだって城内の情報を提供しているんだし、昔から持ちつ持たれつの関係なんだから」

 平然とそんなことを仰るメイドさん。
 どうやら私が想像している以上に、王城内の闇は深そうです。

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