剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!

月芝

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019 赤と白

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 ある晴れた昼下がりのことである。
 のどかな雰囲気を切り裂くように、けたたましく鳴り響いたのは教会の鐘。
 ガランゴロンというマズイ音色は製作費をケチったせいだ。
 鐘の音を聞きつけて、ぞろぞろと中央広場に集まってくる里の住人たち。

「ひさしぶりに野盗でもでたのか? それともお尋ね者か?」
「どうせなら賞金首がええのぉ。ありゃあ、いい小遣い稼ぎになる」
「わしは窃盗団の方がええ。盗賊の方が宝物をがっぽり貯め込んでおるかもしれん」
「ほら、例のお迎えが来たんじゃないのか? 中央に連絡をあげてからけっこう経ってるだろうよ」
「タケヒコのところのチヨコか。あのチビスケが、ようも立派になったもんじゃあ」
「でも見た目はちーとも変わっておらんぞ。ちーこいままじゃあ」
「母親のアヤメは、ばいんばいんなのにのぉ」
「いやいや。あれでどうして、早くも男を捕まえたと聞いたが」
「あの子は死んだジイさまのキヨスケにそっくりじゃよ。特にかち上げ気味に放たれる幻の左なんて、生き写しじゃあ」
「おー、あれかぁ。あれは確かにエグイのぉ」

 集まった里人たちがガヤガヤ。
 好き勝手にくっちゃべっていたら、真っ青な顔をした里長のモゾさんが登場。ガクブルにて尋常ならざる様子。
 これを前にして自然と静まり返る広場。
 不気味な沈黙ののちに、モゾさんがぼそりと口にしたのは「サルがくる」という言葉。
 瞬間、ざわりとその場の空気が震えた。

「なぁ、嬢ちゃん。サルがどうしたってんだよ?」

 影矛としての役目があるので、何かとわたしのそばについているホラン。
 いまのところわたしの中では、彼の評価はずずんと右肩下がり。
 だって現時点ではいいところナシなんだもの。無様にのびているところしか見ていない。

「サルってのは、アカザル、シロザルのことだよ。これは大ごとになるね。ある意味、ポポの里存亡の危機だよ」

 アカザル。
 メスザルの銅禍獣。全身の毛が赤い大きなサル。ムキムキ。群れで行動し、ときおり異種族を襲っては子種を搾取する。特に好きなのは人間の男。わりと面喰い。
 シロザル。
 オスザルの銅禍獣。全身の毛が白い大きなサル。ムキムキ。群れで行動し、ときおり異種族を襲ってはウホウホする。特に好きなのは人間の男。好き嫌いは特にない。

 わたしの説明を聞いて「おい、ちょっと待て」とホラン。
「気のせいかやたらと男ばかりが襲われているような」
「そうだよ。アカに絞られるか、シロに掘られるか。どっちにしろ肉体的精神的に深い傷を負って、犠牲者の大半が一生うつむいたまま。ふたたびたちあがれなくなるんだって。みんな新世界に旅立つと、もっぱらの評判だよ」

 未知の海へと、男たちが船出する。
 たとえ二度とは戻れぬ旅だとしても。
 いざ、征かん。荒波超えて、遥かなる水平線の彼方、まだ見ぬ世界へと。
 さぁ、冒険の始まりだ。

「そんな冒険はまっぴらごめんだ!」ホランが叫んだ。

 黒髪の青年の絶叫にも似た魂の叫び。
 これに呼応するかのようにして、里の男たちが次々と拳を天へと突き上げ、雄叫びをあげる。

「ヤラれてたまるか!」

 すると女たちもこれに続き、威勢のいい雌叫びをあげた。

「ヤラせてたまるか!」

 怒りと殺意が入り交じり、次第に戦さの気運が高まってゆく。
 広場の空気が最高潮に達したところで、隻眼隻腕隻足にて杖が手放せない、やや腰の曲がった老人だけれども、里の自警団の団長(非常勤)であるロウさんが大音声にて号令を下す。

「男どもは武器をとれ。女たちも戦える者は参加しろ。男の子らは危険なので地下の貯蔵庫か教会に避難しろ。みな、日頃の訓練の成果を見せるのは今ぞ! エテ公どもに目にもの見せてくれん。存分に返り討ちにして、今宵はサルの脳みそ祭りじゃあ!」

 即座にポポの里は臨戦態勢へと移行。
 かくして男たちの貞操と女たちの意地を賭けた、負けられない戦いが始まる。


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