剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!

月芝

文字の大きさ
21 / 81

021 ポポの里防衛戦。序盤戦!

しおりを挟む
 
 里の正面ではロウさんが孤軍奮闘。
 というか、凶刃閃くのが危ないから、誰も近づけやしない。
 里の広場では父タケヒコが囮役となって、敵の注意を惹きつけつつ、その隙に女性陣が側面より竹槍や弓矢にてちくちく数を減らしている。
 これ以外にも、すでに里のあちこちにてサルとの戦闘が勃発。そこかしこにて怒号と血煙があがっている。
 その様子を上空から見下ろしていたのは、勇者のつるぎミヤビに乗っている、剣の母であるわたしことチヨコ。
 わたしの役割は、圧倒的機動力を活かした伝令および遊撃手。
 文字通りの高見の見物ゆえに、戦場を俯瞰できる立場にて、敵味方の位置や状況がいち早く把握できる。

「ムムム、いまのところ負けてはいないけれども、やはり敵の数が厄介だね。長引くほどに不利になるのは確実だよ。せめて一か所にまとまってくれたら、殲滅も可能なんだけど」
「そうですわね、チヨコ母さま。おそらくはそれを見越しての戦力分散なのでしょう。数を活かした戦術。欲情まみれのハレンチザルのくせに、妙に知恵が回ること」
「ちなみになんだけど、ミヤビが本気になったらどうかな?」
「わたくしですか? そうですわね……、たぶん里一帯が更地になるかと」

 ひとふり千殺。敵も味方も森の木々もおかまないなし。
 だって斬撃は相手を選んで避けてはくれないから。
 バッサリ、ザックリ、気合一閃。すべてが根こそぎ刈られる。
 うちの子、とんだ環境破壊兵器だよ。

「となると、ちょろちょろしつつ援護に徹するのが無難か……」

 なんぞと、わたしが今後の方針を固めていると、「あっ、チヨコ母さま。アレを」とミヤビが声をあげた。
 見れば、ハチミツ酒造の三男坊のサンタ他、いつもつるんでいる悪童どもがシロザルに囲まれて、窮地に陥っていた。
 子どもは隠れていろと言われたのに、じっとしていられずに勇んで参戦したのだろう。
 で、あえなく返り討ちにあい、ひんむかれて、いまにもその身に黒歴史を深々と刻まれようとしている。
 十一才前後の未成熟な少年たち。上衣はそのままに、下衣の袴(はかま)だけを脱がすとか。おのれサルどもめ、なかなかやりおる。
 せっかくだからギリギリまで見物してから、颯爽と駆けつけ、一生返せないほどの恩を着せてやろう。そして極上のハチミツ酒を毎年貢がせるのだ。
 しかしわたしのたくらみは、ホランによって阻止された。
 里の住人ではない彼もまた遊撃として動いていたのだが、血刀を引っさげて救援に駆けつけてしまう。ちっ。

  ◇

 ホランは瞬く間に三体のサルどもを仕留める。
 滑るように大地を移動し接敵。流れる刃が首筋の急所を撫でたかとおもえば、吹き出す真っ赤な鮮血。宵闇に血の雨が降る。

「無事か! ガキども。ったく無茶をしやがって、ケガはないか?」

 助けられたサンタたち。やや放心状態にてコクコクとうなづくばかり。
 これを背に庇いつつ、襲ってくるサルを斬り、近寄るサルには切っ先を向け、周囲をにらんで牽制するホラン。
 突然の乱入者。凄まじい戦いぶりにシロザルたちは怯む。
 この隙を突いてどうにか血路を開こうと、ホランが動き出した矢先のこと。
 敵勢を割って悠然とあらわれたのは、他の個体よりもひと回り大きなアカザルであった。
 貫禄たっぷり。群れの中でも有数のチカラを誇るのは、他のシロザルどものビクビクした態度を見れば一目瞭然。
 難敵の登場に表情が険しくなるのが抑えられないホラン。
 さすがに子どもたちを守りつつ戦える相手じゃないと判断したわたしは、ここで参戦。
 上空から急降下した勇者のつるぎ。
 シロザル数体を跳ね飛ばし、地上へ。

「遅いぞ、チヨコ!」怒鳴るホランを無視し、「そっちの赤いのはお願い。こっちの白いのとサンタたちは、わたしとミヤビが引き受けるから」

 空から舞い降りた白銀の大剣と小娘。
 半裸状態のサンタたちとシロザルどもの間に立ちふさがる。
 わたしはともかく、神々しいまでのミヤビの威容に、長い尻尾を丸めるシロザルたち。
 しかし次にシロザルたちの目がそろって点になった。
 なぜなら勇者のつるぎがピカッっと輝き、みるみる小さな白銀のスコップに変身したからである。
 白銀のスコップを右手に握ったわたしは、何やらそれっぽい構えをとる。
 珍妙な小娘の登場にサルたちはたいそう困惑した。
 でも、じきに一斉に「ウキキキ」と嘲笑に転じる。
 上には全力で媚びへつらい、下には居丈高となって調子に乗る。
 それが野生の法則。
 だからサルどものこの態度は、あながちまちがってはいない。
 けれどもサルどもはひとつだけかんちがいをしている。
 剣士は剣を手にして十全となり、料理人は包丁を握り十全となる。同様に農家の小娘がスコップを持つ。その意味をやつらは身をもって知ることになる。


しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

処理中です...