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049 お手紙
しおりを挟む紅風旅団の面々が、ナゾの男にダマされていたこと。
どうやらそいつが第三の勢力を動かしているらしいこと。
もしかしたら海外から送られた工作員かもしれないこと。
これらの情報に加えて、アズキたちから聞き出した情報をもとに作成された似顔絵(自筆)を提出し、かくかくしかじか。
小柄な身体をいっぱいに使って、わたし熱弁。
「悪いのは全部そいつなの」「裏にきっととんでもない陰謀が!」「このままだと国に災いが降りかかるかもしれない」
アズキとキナコとマロンが義賊としてブイブイいわせていたという、都合の悪い情報は隠蔽もしくは誤魔化し、開示すべき情報は言葉を選び印象操作。より大きな問題を提示し、意識をそっちに誘導。大事の前の小事だからと、もっともらしい適当を並べての論理のすり替え。
幼い頃より、里長のモゾさんの「巧みにこすい交渉術」を間近で見聞し、相手を問答無用でねじ伏せる神父さまの「ガミガミ説教」を喰らい続けてきたのは、伊達じゃない。
加えてアズキたちが、自分たちを利用した相手を探しているということも功を奏する。
「今後とも得た情報をきちんとあげるのならば」
渋々ながら、どうにかホランとカルタさんを言い含めることに成功。
かくして団員たちは、わたし預かりとなりお咎めなし。
となったところで、いつになく真剣な面持ちのホラン。「ちょっと出てくる」
上司へ報告に行くと、似顔絵をひったくって行ってしまった。
◇
「チヨコちゃんにこんな特技があったとはねえ」
わたしがいそいそ新たな似顔絵を作成していたら、ひょいとのぞき込んでカルタさんが「うまいものねえ」と感心。
「まぁね。下手な言葉より、絵の方がばーんと情報が伝わるから。里の小さな子らや年寄り連中を相手にするときには、こっちの方が早いんだよ」
フフンと得意になりつつも、手を休めることはない。
同じのを何枚も描くつもりだから、いそがしいのだ。
何のためにかって? 手配書としてバラまくんだよ。
なおアズキとキナコとマロンの三人には、ちょっとシモロ地区へおつかいに行ってもらっている。
相手は賭場を仕切り地元の顔役となっている親分さんたち。彼らに手紙とお土産を渡すように頼んだ。
なお託した手紙の内容はこんな感じ。
『こんにちわ、はじめまして。
わたしは剣の母をしているチヨコです。
辺境の東部域のすみっこ、ポポの里生まれの十一歳です。
じつはいま、わたしはとっても困っています。
えらい人たちから、やたらと贈り物を押しつけられて、
このままではいずれ埋もれて死んでしまいます。
でも、わたしはそんな人生の終わり方はイヤです。
わたしは大勢の孫に囲まれて、惜しまれつつも寝台の上でにっこり逝きたい。
そこですべて放出することにしました。
つきましては皆さまのチカラをお貸しください。
金銀財宝、宝物の数々、その使い道は賢い大人たちにお任せします。
日々の生活に困っている方々に施すなり、新規事業を立ち上げるなり、
学習に当てるなり、医療の充実をはかるなり、孤児院を整えるなり、
職業訓練所を作るなり、地域の修繕費用に充てるなり。
いかようにも、どうぞご随意に。
あと、お手数ですが、荷車と人足の手配はそちらでお願いします。
なお詳しいことは、使いの者たちにおたずねください。
それではごきげんよう』
◇
日々、増え続ける富。
なにをぜいたくなっ! と、お怒りになられる方もいるかもしれないが、実際に体験してみればわかる。
これは、ただただ怖い。
見るたびに膨れ上がる宝物の山が、まるで得体の知れないバケモノのよう。
うん。わたしは理解した。
これはムリだ。わたしの手にあまる。
がんばったら、がんばった分だけ手元に残るのがいいよ。
がんばってもいないのに、勝手に転がり込んでくるのは、なんだか心がざわざわして健全じゃない。とっても気持ちが悪いもの。
ついには夢でうなされるまでになり、処理について悩んでいたわたしは、アズキたちに再会してピコンと閃いた。
流れない水は濁って腐るに例えられる経済の動き。
商人たちに売り飛ばす案も考えたけれども、それだとカモロ地区とタモロ地区の間を富が行ったり来たりするばかり。
そこですっかり蚊帳の外になっているシモロ地区を巻き込んでしまえと、わたしは考えた。
えっ、その行為がもたらす結果について、ちゃんと責任がもてるのかですって?
ハハハハハ、そんなのムリに決まってるじゃない。
っていうか、そこまで面倒みきれねえーよ!
知ったこっちゃねー!
金は出すが口は出さん。
わたしは自分の平穏を守るのでいっぱいいっぱいです。
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