冒険野郎ども。

月芝

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126 島の秘密

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 まさかの未踏の構造物の出現!
 大発見にすっかり舞い上がったタラリア。勢いのままに突進しそうになるのを、俺が背後から腰に抱きつき、「ダメですってば、せめて最低限の準備を」と懸命に説得。
 しかし好奇心が服を着て歩いているような女学者を留めるのは生半可なことではない。
 興奮したタラリアが拘束を振り払おうと大暴れ。
 俺はあちこちポカポカ叩かれたり、引っかかれたり、噛まれつつ、それでも必死にこらえて、その間にキリクとジーンに頼んで、宿営地にて探索準備を整えてもらうことにする。

  ◇

 準備が整い、タラリアがどうにか落ち着きを取り戻したところで、ようやく探索を開始。
 先頭はキリク、次が俺、タラリアを挟んでしんがりをジーンが守る隊列。
 広く浅い造りの階段を降りていく。
 はじめこそタイマツを手にしていたキリクは、すぐに火を消した。必要がなくなったからだ。
 段を踏むと足下が淡く光り、照明の役割を果たす。
 ひたすら地の底へと延びている階段。その先を睨みつつ「ヘンだな」と口にしたのは先を歩くキリク。「長いこと放置されていたわりには、床がキレイすぎる」
 確かにホコリが薄っすらと積もっているわけでもなく、塵ひとつ落ちてはいない。
 それに心なしか空気も澄んでおり清浄な気が充ちている。
 地下といえば、陰気でカビ臭いと相場が決まっているというのに。

「浮遊島のことはまだほとんどわかっていないの。山の遺跡だって存在こそは確認されているけれども、内部はほとんど手付かずだって話だし。わかっていることといったら、これだけの巨大な物体を飛ばす技術を持った人たちが、かつて存在していたということだけ。これはあくまで私見なんだけど、人間でも獣人でも昆虫人でもない、第四の種族を示唆していると私は考えているわ」

 タラリアの話に俺は思わず息を呑む。
 第四の種族。
 その言葉は心躍る響きを持つとともに、更なるナゾを抱かせる。
 奇跡にも等しい高度な技術を持っていた彼らは、いったいどこへ消えてしまったのだろうか?

  ◇

 長い階段を下りきった先は丸い空洞。
 闘技場の形状に似ているが、困ったことに壁にはたくさんの横穴。このすべてが通路だとすると、ちょっとたいへんかも。

「みんなはここで待っていてくれ。先を見てくる」

 そう言って一人、隊列を離れたキリク。最寄りの穴へと入っていった。
 待つことしばし。
 戻ってきたキリクは渋面にて「最悪だ」と口にする。
 横穴は一本道にて迷う心配はなく、とりあえずワナの類も見当たらない。ただし行き着いた先が、またしても丸い空洞にて壁には穴がびっちり。
 つまり延々と同じような構造が繋がり、広がっているということ。
 うっかり迷ったが最後、堂々めぐりをして息絶えることになる。

「目印をしっかり残して進むしかないか。どれ」

 俺はナイフを取り出すと、最寄りの壁をがりがり削って矢印を書き込もうとした。
 しかし逆に刃先がこぼれてしまう。

「なんだこの壁? ただの石じゃないぞ。まいったな」

 見た目はありふれた石材に見えたのだが、思いのほかに固い壁に俺は目を見張る。

「置き石の類でもかまわないんだが、何かのひょうしに動くと厄介だしなぁ」

 壁をぺたぺた触りながらキリクが「むむむ」と唸る。するとジーンが「削れないのならば、書いておけばいい」と言い出し、愛用のペンを持ち出すが、これもダメであった。
 石の表面がインクを水玉のようにはじいて、ちっとも定着しない。

「キリクの組み紐を使う手もあるが長さに限度があるし、さて、どうしたものか……」しばらく考え込んでいた俺は妙案を思いつきポンと手を叩く。「おっ! そういえば固いモノならばあるじゃないか。さすがにこいつならイケるんじゃないのか」
 首に下げた小袋より取り出したのは、紅いドラゴンのウロコ。
 最強生物のウロコならば、きっと壁の強度にも勝てるはず。
 ガリガリ試してみたら、うまくいった。これには思わずおっさん三人がにんまり。
 ウロコの正体を知らないタラリアが「あらあら、それは何なのかしらん?」と喰い気味に詰め寄るも、そこは適当に誤魔化しておく。

  ◇

 目印を刻み、進む。
 あちこちうろつくと方角を見失うので、まずは西へ西へとできる限り真っ直ぐ進む。特に理由はないが、しいてあげれば石の祠が向いていた方向だから。
 空洞、通路、空洞、通路、空洞、通路……。
 交互に繰り返すこと二十を超えたとき、唐突に丸い空洞が形を変えた。
 辿りついたのは、奥に真っ直ぐに伸びた巨大なトンネルのような場所。
 天井が高い。
 右の壁には一面に色鮮やかな壁画が描かれてある。
 左の壁には見上げるほどの大きさもある鎧姿の兵士のような彫像がずらりと並ぶ。
 そして一番奥には白、黒、金の三つの扉。

 キリクたちが左の壁を調べている間、俺はタラリアに促されて、壁画の撮影に大忙し。
 二人して興奮しつつ、撮影を進めていくも、次第に口数が減っていく。
 なぜなら描かれてある内容が、あまり愉快なモノではなかったからだ。
 天変地異か何かに巻き込まれたであろう都。燃え盛る中を逃げ惑う人々。その背には翼があった。見ているだけで息苦しくなるような阿鼻叫喚の地獄絵図がしばらく続き、最中に神殿らしき物体が空へと浮かぶ。これによって一部の人々や生き物たちは災厄を逃れるも、次の場面ではなぜだかすべての姿が消えて、木々だけになっていた。
 以降、生き物の姿は一切登場しなくなる。

「これって……もしかして」

 俺がおそるおそる訊ねたら、タラリアが「あらあら、もしかしなくても、そういうことみたいね」とうなずく。「地上に戻ったら、無闇に木を切らないようにと、みんなに伝えたほうがよさそうね」

 思いがけずに浮遊島の秘密を知ってしまった俺は戦慄を禁じ得ない。
 判明したナゾの、ほんのひと欠片にてこの威力。
 理屈は不明だが、ここにはあまり長逗留をすべきではないらしい。
 どうやら想像以上にヤバい場所のようだ。


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