冒険野郎ども。

月芝

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131 二枚目

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 超大な宙石と三本の紅い閃光が繋がったとたんに、宙石の色味が増す。
 黄光が錯綜し、世界が白に包まれる。
 眼球の底までもが白に満ちる。
 だが俺は見た。光の中にて翼をたたみ、長い首と尾を抱きかかえるようにして丸まっている黄色いドラゴンの姿を!
 閉じられてあった瞼がゆっくりと開き、目が合った。
 それと同時に脳裏へと響いたのは『備えよ。運命の時は近い』という荘厳な女性の声。

「教えてくれっ! いったいどういうことなんだ」

 俺は叫ぶように問いかける。
 しかし返事はなく、すでに黄色いドラゴンの瞼は閉じられてあった。
 ドラゴンを中心にして光が爆ぜる。
 そしてすべてが完全な白に染まった。

  ◇

 カツンと音を立てたのは俺が落とした盾。
 床の上を車輪のように転がり、しばらくふらつきながら進み、じきに離れたところで倒れて止まった。
 自分の身に何が起こったのかはわからない。
 ただすでに肉体は自由を取り戻しており、俺はその場にへたり込む。
 キリクとジーンも同じにて、お互いに顔を見合わせるも若干目が泳いでおり、言葉がうまく出てこない。明らかに動揺している。
 そんな俺たちを心配して「あらあら、だいじょうぶ?」とタラリア。ひとり平然としていた彼女は先ほどの光景を目にしておらず、あの声も聞いていない?
 ということは、紅いドラゴンのウロコを持つパーティー「オジキ」だけが体験したのか。

「夢ってことはないよな?」
「あぁ。認めたくはないが確かに聞いたし、ばっちり見た」
「まさかこんなところで二体目に遭遇するとは……」

 おっさん三人が愕然としている姿を前にして、タラリアがふしぎそうに首をかしげている。
 とてもすぐにはすべてを飲み込めそうにない。
 だがいつまでもへたり込んではいられないので、俺はよっこらせと重い腰をあげ、パンパンとズボンについたホコリを払う。
 キリクとジーンも立ち上がった。
 俺たちはひそひそ相談の上で、黄色いドラゴンのことはいったん脇へと置いておき、すぐそこにある危機について目を向けることにする。
 それは脱出経路について。
 自分たちが通ってきたのとそっくりな穴はたくさん開いているが、どれが地上へと通じているのかは皆目見当もつかない。
 あまりにも数が多すぎる。
 闇雲に進んで当たりを引く確率は、限りなくゼロに近いだろう。
 石の祠から地下へと潜ってから、ここまで来るのに少なく見積もっても七日前後は経過している。
 たとえ当たりを引いたとて、ワナを解除しながらでは、順調にいっても同程度の日数が必要。となれば合計で十五日ほどにもなり、それすなわち浮遊島での滞在期限いっぱいいっぱい。
 実際には猶予をもって調査を切り上げるはずだから、一日二日ばかり短くなることもあるだろう。これでは到底間に合わない。
 どうにか地上へと戻れたとして、島からの脱出手段は皆無にて閉じ込められてしまう。
 完全なる手詰まり。
 さしものジーンも妙案が思いつかないらしく、ずっと眉間に深いシワを寄せたまま。
 タラリアに至っては「あらあら、殿方三人とだなんて、カラダが持つかしら」なんぞとぶつぶつ。
 キリクを見れば、お手上げだとばかりに肩をすくめていた。
 俺もまた同様にて、なんら有効な手立てを思いつけずに、途方に暮れるばかり。

  ◇

 八方塞がりの状況が唐突に破られる。
 足元が光った。
 床に大きな魔法陣が浮かびあがる。
 俺たち四人はあわててその場を離れようとするも、光のベールに阻まれて外には出られなかった。四人そろってオデコを見えない壁にぶつけて「あいた!」
 そうしている間にも魔法陣の光がどんどんと強まっていく。

「だぁーつ、つぎからつぎへと。これはなんの魔法陣なんだよ」キリクが喚くもジーンは「わからん。少なくともわたしの記憶にはない」とつっけんどんな物言い。
 ぎゃんぎゃん吠える二人を尻目に、タラリア女史は貴重な記録が収められた機材の入った袋をがっちり抱き、俺はそんな彼女をさらにがっちり抱き絞める。
 じきにとても目を開けていられないほどの光度となり、たまらず俺は瞼を強く閉じた。
 床が失せた。
 全身が浮遊感に包まれる。
 落ちるという感覚。続いてものすごい勢いにて上昇しているような感覚。かと思えば右へ飛んだり、左に転がったり。なすすべもなく何かに流されているうちに、感覚が次第に遠のいていく、それにともなって自分という存在そのものまでもが滲んで、ぼやけて、溶けていく……。

  ◇

 頬を撫でるやわらかな風。
 穏やかなさざ波の音。
 そっと目を開けたとき、俺は湖の畔に立っていた。
 腕の中にはタラリア女史もいる。
 すぐそばにはキリクとジーンの姿も。
 四人そろっており、誰一人欠けることなく無事に地下より生還?

「えーと、これって送り届けてくれたってことかな」

 俺がやや呆けていると、腕の中がもぞもぞ。タラリアが「ぐるぢい」と言ったので、あわてて彼女を開放する。

「そうみたいだな。荷物もあるから、おそらくあの魔法陣のおかげだろう。なんにしても助かった」

 深いタメ息を吐きながら、しみじみそうもらすキリク。
 そしてジーンは「ぐぬぬ」となんだか悔しそう。

「くっ、このジーン、一生の不覚。転移魔法を目の前にして、むざむざと」

 転移の魔法は存在こそは知られているものの、実現はされていない類の御業。
 魔導士ならば垂涎の知識、すぐ手の届くところにソレがあったというのにと、ジーンが地団駄を踏んでいる。
 それらを横目に俺はキョロキョロ。
 で、あることに気が付いてしまいガックシ。
 ……盾が見当たらない。
 どうやら魔法陣の外にあったみたいで、あちらに取り残されてしまったようである。
 またしても剣と盾を失くしてしまった! 
 だがしかし、今回は革鎧は無事……じゃない? 
 胸元にばっくり穴が開いていた。
 ちょうど首から下げた小袋があった付近にて、紅い閃光が発生した箇所。
 小袋はなんともないのに、鎧だけが壊れてしまっている。

「なぜに?」

 首をひねりつつ小袋を手にした俺は違和感を覚える。なにやら感触がヘンだ。だから中を調べた。そして「げっ!」と声をあげた。
 なんとウロコが増えていた。
 紅いのに重なるようにして黄色いのがもう一枚。
 怪現象を目の当たりにしたキリクとジーンもすぐさま自分の分を確認。そして「なっ!」「っ!」と驚きの声をあげた。


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