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133 先触れ
しおりを挟む浮遊島での調査を終了し、隣国からエイジス王国へと帰還。
その足で休む間もなく連行されたのは謁見の間。
手ぐすね引いて待っていたのは、ヴァルトシュタイン王をはじめとする上層部のお歴々。それと冒険者ギルド本部から派遣されたであろうフード姿の、やはりお歴々。
報告に関してはタラリア女史が中心となって行われ、パーティー「オジキ」は必要に応じて応答する形式にしてくれたので助かった。
ひと通りの報告を受けて「はぁー」と大きなタメ息をついたのはヴァルトシュタイン王。
「こんなことになるのであれば、ケチらずに大規模な調査団を送っておくべきであったか……。にしても、おまえたちは次から次へと厄介ごとを」
頭が痛いとばかりに、眉間を抑えつつそんなことを王さまに言われて、俺とキリクは肩をすぼめて恐縮するばかり。
なのにジーンときたら一切物怖じすることもなく、「そんなことを言われても困る。たまたまそういう星の巡り合わせなのだから」
のうのうと言い放つものだから、隣にいる俺たちの方が肝が冷えてしようがない。
一部えらい人たちの表情が険しくなるものの、幸いなことに王さまは寛容にてとくに気にした風でもなさそうなのがありがたい。
そして「不敬な」「これだから下賤の輩は」「野蛮な冒険者風情が」なんぞと機嫌を損ねていたえらい人たちも、実際に紅と黄の二枚のドラゴンのウロコを目にしたら、とたんに静かになった。
ついでにこの場にて王さまの口からパーティー「オジキ」と国との間で交わされた譲渡契約について聞かされ、完全に沈黙する。
まぁ、国にもたらす利益や貢献度を考えれば当然の反応。
こちらの機嫌を損ねて台無しにしたら、たぶん首が飛ぶ程度では済まされないだろうから。
「にしても黄色いドラゴンの言葉が気になるな。この世界の頂点に君臨する超生物が『備えよ』と言っている時点で、かなりの大災厄なのは間違いあるまい。ふーむ、これはついに古の魔王でも復活するのかな」
王の口より「魔王」の単語が飛び出し、ザワつく謁見の間。
二千年を超えて蘇る伝説の悪夢の再来なのだから無理からぬこと。だが、そんな空気の中でおずおずと手を挙げたのはタラリア。許可をもらい発言をするも、それがまたトンデモナイ内容であった。
「えー、その件なんですけれども……。たぶん魔王なんて目じゃないかと思われます。というか、むしろそっちは前座でこっちが大本命だった、みたいな」
俺たち以外の、この場に集っていた一同愕然っ!
えらいこっちゃと大慌て。喧々囂々にて、謁見の間が大混乱となる。
でもここから先は上の人たちのお仕事。だから報告を終えた冒険者と女学者は騒ぎに乗じて、こそっと退室。
タラリアはこの後、懇意にしている王妃さまのところに顔を出すというので、俺たちとはここでお別れ。
各々握手をして挨拶を済ませるが、その際に彼女はこんなことを言い残す。
「わたし……思ったの。たぶんあなたたちは『先触れ』なんじゃないのかと」
春の訪れを告げる優しい風のように。
夏の訪れを告げる抜けるような青空のように。
秋の訪れを告げる赤く染まる山々のように。
冬の訪れを告げる粉雪のように。
来たるべき混迷の時代。その到来を告げる者。
それを「先触れ」と昆虫人の女学者は称する。
「あらあら、これからもいろいろたいへんだとは思うけど、がんばってね」
不吉な予言とともに満面の笑みにて激励をされてしまったおっさん三人組。
遠ざかるタラリアの背を見送りながら、そろって「えーっ」と困惑気味。
「一介の冒険者にどうしろと?」俺は頭を抱えた。
「そんなのは女神さまから祝福を受けたギフト持ちにでも頼めってんだよ」キリクは不平たらたらにて「わりにあわねえ!」
「いろいろと貴重な体験ができるのはありがたいが……、さすがにこうも続くと面倒だな」とはジーン。言いながら首をゴキゴキ鳴らし、凝った肩を揉み解す。
自分たちの預かり知らぬところで、大きなうねりが起こっており、それに巻き込まれつつある。
二度あることは三度ある。
これはかつて異世界から召喚されたという勇者たちが伝えたとされる言葉。意味はそのまんまだ。
そしてドラゴンのウロコもまた二枚。
紅と黄とくれば、お次は? 青、それとも緑、はたまた金銀に白や黒もありうるか?
「この先どう転ぶのかはわからないが、とりあえず帰ろうか」
俺が提案すると二人も賛成し、パーティー「オジキ」はとっとと王都グランシャリオから辺境都市トワイエへと帰還することにした。
あー、我が家の風呂が無性に恋しい。
◇
トワイエへと帰る前に王都の冒険者ギルド本部に顔を出し、受付にて依頼が完了したことを報告。
報酬は追って口座に振り込まれるので、そのまま立ち去ろうとするもチョイチョイと手招きする人物がいた。
かつて委員会から呼び出しを喰らった際に、稽古をつけてくれた棒術の達人である老爺。
「ちょっと付き合え」と言われ、こちらの返事を聞く前に歩きだしたものだから、俺たち三人は自然と追いかける格好になる。
スタスタ前を行く老爺。ただ歩いているだけにしか見えないのに、いくら俺たちが足を速めてもちっとも距離が縮まらない。なにか特殊な歩法を用いているのだろうが、そんなシロモノを日常的に使っている時点で、立派なバケモノである。
そうして連れていかれたのは、本部の地下にある闘技場。
いつぞや、俺が老人にボッコボコにされた懐かしい場所。
そしてかつての記憶をなぞるかのようにして、俺は石舞台の上に立たされたのだが、老爺はとくに打ちかかってくることもなく、しげしげとこちらを見つめるばかり。
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